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- 東京のマンション、実はそこまで高くない!?~修正年収倍率による東京マンション市場の分析~
2016年05月26日
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3|東京都下の年収倍率と修正年収倍率の推移
最後に東京都下の年収倍率と修正年収倍率を確認する。2015年の年収倍率は6.8倍である(図表―11)。前年比2.3%低下したが、ミニバブル期のピークである2008年の6.7倍を上回る水準だ。東京都区部ほどではないが、東京都下についても高値水準にある。
年収倍率からは過熱感がうかがえるものの、住宅ローンを考慮すると、異なる様相を呈する。2015年の修正年収倍率は、8.4倍と前年比4.7%低下した。ミニバブル期のピークである9.9倍を明らかに下回る水準だ。また2010年以降の平均倍率は8.5倍であり、2015年は平均水準であることがわかる。東京都下のマンションは、修正年収倍率の水準からもモメンタムからも、概ねファンダメンタルズに沿って、安定的に推移していると言える。
最後に東京都下の年収倍率と修正年収倍率を確認する。2015年の年収倍率は6.8倍である(図表―11)。前年比2.3%低下したが、ミニバブル期のピークである2008年の6.7倍を上回る水準だ。東京都区部ほどではないが、東京都下についても高値水準にある。
年収倍率からは過熱感がうかがえるものの、住宅ローンを考慮すると、異なる様相を呈する。2015年の修正年収倍率は、8.4倍と前年比4.7%低下した。ミニバブル期のピークである9.9倍を明らかに下回る水準だ。また2010年以降の平均倍率は8.5倍であり、2015年は平均水準であることがわかる。東京都下のマンションは、修正年収倍率の水準からもモメンタムからも、概ねファンダメンタルズに沿って、安定的に推移していると言える。
東京都下の年収倍率はミニバブル期を上回っていることから、一見すると不動産バブルの懸念が強まっているようにも見える。一方、修正年収倍率を見ると、東京都下のマンション市場はファンダメンタルズに沿って、安定的に推移していることがわかる。マンション価格は上昇しているものの、住宅ローン金利低下が、それ以上に住宅取得者の購買力を押し上げた。
4――おわりに
本稿では、年収倍率に住宅ローンの変数を考慮した修正年収倍率を通して、東京のマンション市場を分析した(図表―15)。まず、年収倍率を見ると、東京のマンション市場は、地域を問わず過熱感が強い状況であることがわかる。一方、修正年収倍率からは、そこまでの過熱感はうかがえない。住宅ローン金利低下がもたらした実質的な値下げ効果の影響が大きいからだ。東京都全体で見た場合や、その中でも東京都区部を見た場合、市場で懸念されているほどの過熱感は見受けられず、一概にバブルと判断できるほどの動きではない。但し、注意すべき水準であることは確かだ。また東京都下の場合は、ファンダメンタルズに沿った動きを示しており、過熱感はない。
住宅取得者の購買力は改善しているが、留意すべき点もある。購買力改善の要因が、住宅取得者の所得向上ではなく、住宅ローン金利低下によるものだということである。住宅ローン金利は、既に下限近くに達しており、低下余地は限られる。金融面からのマンション価格押し上げは今後期待しづらい。今後、購買力改善の牽引役を、住宅ローン金利低下から所得向上に引き継ぐことができるかが、今後の東京のマンション市場の先行きを占う上で重要になるだろう。
住宅取得者の購買力は改善しているが、留意すべき点もある。購買力改善の要因が、住宅取得者の所得向上ではなく、住宅ローン金利低下によるものだということである。住宅ローン金利は、既に下限近くに達しており、低下余地は限られる。金融面からのマンション価格押し上げは今後期待しづらい。今後、購買力改善の牽引役を、住宅ローン金利低下から所得向上に引き継ぐことができるかが、今後の東京のマンション市場の先行きを占う上で重要になるだろう。
(2016年05月26日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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