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- 中古マンション価格が上昇 !!~ 期待される不動産価格指数の一層の整備 ~
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中古住宅に係る価格情報は、不動産業界の業務用データベースによるものか、業者によるボランタリーな取引報告に基づいて東日本不動産流通機構(REINS)などが集計し、利用制限を設けて一般に公表しているものに限られている。それでもREINSによる中古住宅市場価格の開示と公表は画期的であったが、届け出ベースのため、データが市場の状況を適切に反映しているかという課題は残っている。加えて、様々な物件の立地や属性を考慮し、一般消費者がデータを適切に読み解き、中古住宅の価格推移や相場観を得ることは大変難しい状況にあった。
しかし、国土交通省はこのような課題解決を含めた不動産市場の整備を進めるために、不動産取引を行った当事者を登記情報から抽出し、アンケートや物件の実地調査などにより、物件毎の属性に応じた実際の取引価格のデータベースの整備と拡充を進めていた。2008年4月からは、学識経験者や不動産鑑定士などの専門家による、建物の規模や専有面積、築年、立地、質的要件等を考慮し、国際標準を満たす新しい不動産価格指数を公表し始めた。
この内、住宅の価格指数によると、中古マンション価格は、2011年末頃から横ばい傾向にあるものの、2009年以降、デフレ経済の中で、更地・建物付住宅(戸建て等)(注)よりも総じて高めに上昇している。一方、戸建て等は2010年頃からやや上昇気味であったが、その後は2011年秋口から再び低迷している。
中古マンションの場合、直接的には建設費上昇の影響は受けにくいが、比較的新しいマンションが流通市場に出ており、価格が従来ほど下がらずに取引されている可能性がある。都市部では超高層マンションなど、建設費単価が高めとなるマンションが増えており、その流通によって戸建て等の価格よりも中古マンション価格が高めに推移していることもうかがえる。
マンション需要が高まった背景には、マンション立地の利便性の高さや居住性の向上、耐震性能への評価などにより、住み替え需要が高まっていることが推察され、特に高齢世帯の住み替えが注目される。マンションでは立地以上に居住性や安全・安心といった点から建物部分の付加価値が高まり、土地に左右されやすい戸建て等とは異なるマンション価格が人々に認知されるようになってきたのかもしれない。
不動産指数の登場により、今後は消費者を含む一般的な市場関係者が、中古住宅の価格形成の背景にある複雑な諸条件に迷うことなく、不動産市場における流通価格の動向をかなり正確に判断できるようになる。研究者にとっても、新築と中古市場の比較分析や、公示や市街地価格指数による地価データだけではなく、信頼できる住宅価格のデータが整備されることによって、これまではできなかった中古市場を含めた住宅市場全体の需給メカニズムを適切に分析できる可能性が開ける。
不動産価格指数は当面試用段階にあるが、その役割は非常に重要である。様々な課題はあろうが、今後も一層の整備と情報開示が行われるように期待したい。
(資料) 国土交通省「不動産価格指数(住宅)より作成(速報)。http://tochi.mlit.go.jp/secondpage/7368
(2013年02月14日「研究員の眼」)
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03-3512-1791
- 【職歴】
1975年 丸紅(株)入社
1990年 (株)ニッセイ基礎研究所入社 都市開発部(99年より社会研究部門)
2001年より現職
【加入団体等】
・日本都市計画学会(1991年‐) ・武蔵野NPOネットワーク役員
・日本不動産学会(1996年‐) ・首都圏定期借地借家件推進機構会員
・日本テレワーク学会 顧問(2001年‐)
・市民まちづくり会議・むさしの 理事長(2005年4月‐)
・日米Urban Land Institute 国際会員(1999年‐)
・米国American Real Estate Finance and Economics Association国際会員(2000年‐)
・米国National Association of Real Estate Investment Trust国際会員(1999年‐)
・英国Association of Mortgage Intermediaries準国際会員待遇(2004年‐)
・米国American Planning Association国際会員(2004年‐)
・米国Pension Real Estate Association正会員(2005年‐)
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