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シドニーのオフィス市場~海外資金による取得は高水準、日本の投資家にとっても魅力的~

増宮 守
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4.シドニーのオフィスエリア
各オフィスエリアは、鉄道路線および都心部の地下鉄で繋がれ(図表-5)、国内線および国際線の空港もCBDから容易に鉄道でアクセスできるなど、利便性の高い都市交通網が整備されている。
各オフィスエリアの規模11は、CBDの賃貸オフィスストックが約500万㎡と圧倒的に大きく、他のエリアを合計してCBDの半分程度となっている。テナント構成もCBDと他で異なっており、CBDの大半を金融テナントが占めている一方、他のエリアでは金融テナントは特に目立たず、各種サービス業およびIT、政府系団体や学校などの多様なテナントの比率が高くなっている。
11 英サビルズによると、シドニーの賃貸オフィスストックはCBDで507万㎡、ノースシドニーで82万㎡、クロウネスツ・レオナルドで34万㎡、チャッツウッドで28万㎡、ノースライド・マッコーリーパークで88万㎡、パラマタで68万㎡(2016年1Q時点)。
5.シドニーCBDの変遷
マーティンプレイスの南側は、商業施設が集積するエリアとなっており、特に南北に走るピットストリートは、シドニーで最も高い店舗賃料を得るプライム商業ストリートである。商業モールの上層階部分を賃貸オフィスとしているビルも多く、オフィス集積も進んでいる。
南側のシドニーセントラル駅まで広がるCBDサウスは、元来、チャイナタウンなどを含む下町エリアで、大規模なオフィスビルは少なかった。リーマンショック前には、超高層オフィスビルを含む大規模複合施設のワールドスクウェアが建設されるなど、一時、新たな金融センターとして再開発が続く期待もあった。しかし、リーマンショック以降の景気鈍化に伴い、オフィスエリアとしての発展は止まり、最近ではホテルやコンドミニアムの開発が活発なエリアとなっている12。
その他、大規模開発によって最近注目を集めているのがCBDウェストにあたるバランガルーエリアである。ダーリングハーバーに面した広大な港湾施設跡地に、超高層ホテルを含む大規模複合施設の開発が進んでおり、その中に3棟の超高層オフィスビルから成るインターナショナルタワーズが含まれている。依然として、商業施設の集積が乏しくアメニティー面で劣るなど、オフィスエリアとしては成熟を待つ必要があるものの、ウィンヤード駅からの連絡通路の整備によりアクセスの利便性が確保されている。シドニーの都市形態は概して欧米型で、アジアの主要都市に比べて古風な印象だが、バランガルーの大規模開発は都市としての新陳代謝を進め、シドニーCBDの新たな魅力として国際競争力の向上に寄与するものとみられる。
12 日本企業によるコンドミニアム開発事業もみられ、積水ハウスがシンガポールのフレイザーズ・センターポイントと共に商業複合高層コンドミニアムの「セントラルパーク」を開発。
6.賃貸オフィス市場の特徴
また、賃貸契約交渉に際して、インセンティブの付与条件が額面賃料以上に大きな変動要因となっている。テナントへのインセンティブの付与形態は多様で、フリーレントの他、転居費用や内装工事費用のキャッシュバック、送迎バスサービスの付帯などがあり、付与するタイミング14も契約毎に異なっている。現在、インセンティブは額面賃料の3割前後で推移しており、リーマンショック以降にみられた4割前後から徐々に改善が進んでいる。一見、インセンティブは複雑にみえるものの、契約期間が長期で定まっていることから、インセンティブ金額を期間で割り、実質賃料(月額)を把握することができる。
13 インフレに応じて賃料の上乗せがなされるステップアップ条項の付帯が一般的であり、正確には、確定しておらずアップサイドがあるといえる。
14 概して、市況悪化時にはインセンティブの付与タイミングが前倒しされ、契約期間を通じた賃料の割引よりも、フリーレントや一時金のキャッシュバックが増加する傾向がある。
(2016年05月25日「不動産投資レポート」)
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