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- 景気ウォッチャー調査(16年1月)~中国の景気減速懸念が再浮上、株安・円高で一段と悪化
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1.景気の現状判断DI:停滞感が一段と強まる
景況感は2015年8月以降節目の50を下回っており、依然停滞局面を脱していない。訪日外国人旅行客による観光需要が景況感の改善要因となるものの、中国の景気減速懸念に端を発した株安・円高などによって景況感が押し下げられた格好だ。ボーナス・クリスマス商戦などが下支えとなっていた家計動向関連が、需要の反動減や暖冬による冬物商材の不振などから悪化に転じたほか、企業動向関連は中国など海外景気減速が響いたようだ。
コメントをみると、中国の景気減速関連や株安関連のものをはじめ、景況感の下押し材料が多く存在している(最終頁の図参照)。訪日外国人旅行客による観光需要が景況感の支えとなるものの、海外情勢の悪化など懸念材料が顕在化していることが、景況感の停滞感を一段と強めている。
2.中国の景気減速懸念が再浮上、株安・円高で一段と悪化

コメントをみると、飲食関連では「正月に散財したのかまるっきり駄目な状態であり、年が明けてからは販売量もそうだが人の動きが確実に落ち込んでいる」(東北・一般レストラン)や「クリスマスや年末年始のシーズンが終わり、客足が少なくなっている」(近畿・高級レストラン)といったように、年末年始商戦の反動の影響を悪化要因に挙げるコメントが多く寄せられた。
小売関連については「外国人旅行者の売上は依然として堅調であるものの、クリアランス時期になっても、冬物衣料の売上不振は続いている」や「円高、株安の影響が相当に出てきている」(南関東・百貨店)とのコメントのように、暖冬による冬物商材の不振や円高・株安を懸念するコメントが散見された。
これまで個人消費の下支えとなっているプレミアム付商品券に関するコメントについては、「12月はプレミアム付商品券の駆け込み需要等があった。1月になって天候の影響もあり落ち込んできて、悪くなっている状況である」(九州・商店街)など、プレミアム付商品券による消費押し上げ効果が薄らいでいる点を指摘するコメントもみられた。
雇用関連は3ヵ月ぶりの悪化となったが、DIは高水準を維持しており引き続き雇用情勢は改善基調にあると判断される。「年末の繁忙期が終わり、求人依頼数が減少している」(南関東・人材派遣会社)など年末需要期の反動の影響をあげるコメントのほか、「求人数が減少している。景気の動向を見定めるため、企業が採用を先送りしている」(九州・人材派遣会社)など景気の先行き不安がやや高まっていることも押し下げ要因となった。ただし、「人手不足であり、求人の高止まりの状況に変化はない」(東北・職業安定所)といったコメントのように、労働需給の逼迫した状況に変わりはないといえる。
3.先行きは3ヵ月ぶりの改善も、停滞局面が続く

家計動向関連は、「季節の変わり目になり、暖かくなると人の動きがまた出てくる」(北関東・衣料品専門店)など、春物商材の需要増を期待するコメントが散見された。一方、「中国経済の不調、世界的な株安、ガソリンの値下げなどにより円高、株安基調が続くとみられるなかで、食品に対する支出は控えられるのではないか」(東北・スーパー)や「原油安、株安の状況が続けば、高額品の売上に影響が出ると予想される」(近畿・百貨店)などのコメントのように、株安・円高によって消費が押し下げられるとの懸念が高まっている。
また、足元では人民元安・円高の進行もあって「中国人客の売上の伸びは前年比で依然としてプラスであるものの、景気減速を背景として、増加率が鈍化してきている」(近畿・百貨店)といったように、訪日外国人旅行客の購買力低下を不安視するコメントもみられた。
企業動向関連は、「中国経済が不安定であり、また、原油安のため景況感は改善しない」(北関東・金融業)や「中国の景気後退とエネルギー価格の低迷から、景気は低迷している」(南関東・金属製品製造業)といったコメントからも、企業は海外景気や原油安への警戒感を強めていることが窺える。
雇用関連は、「景気の先行きが不透明なため、企業が人材の採用に慎重にならざるを得ない状況にある」(北海道・求人情報誌製作会社)や「今月の株価の影響や中国経済を含む世界の状況により、少し不安材料が出てきている」(中国・学校)など、景気の先行き不安から雇用環境が厳しくなるとの懸念も高まっているようだ。
個人消費の低迷が続くなか、訪日外国人旅行客による観光需要などが景況感の下支えとなっているものの、中国経済の動向など海外情勢の不透明感もあり、景況感は足踏み状態が続いている。また、個人消費は名目賃金の持ち直し、物価上昇率の低下による実質所得の押し上げなどから回復しているものの、そのペースは緩やかに留まっており、景況感を押し上げるまでには至っていない。
2016年に入ってから中国の景気減速に対する懸念が再浮上して以降、株安・円高の進行に歯止めがかかっておらず、こうした状況が続くようであれば企業や消費者心理のマインドを一段と冷やしかねない。新たな押し上げ材料が不在のなか、相次ぐ懸念材料が下押し要因となることから、景況感は当面停滞局面が続く公算が大きい。(2016年02月09日「経済・金融フラッシュ」)
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