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2016年01月12日
インドの生命保険市場(5)-インドの生命保険会社のリスク管理はどのように行われているのか-
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5―リスク管理のガバナンスに関する規定
こうしたリスク管理に関しては、IRDAIが発行するコーポレート・ガバナンスに関するガイドラインにおいて、各生命保険会社において、リスク管理委員会やALM委員会の設置が求められている。なお、ALMの委託事項がリスク管理委員会の一部になっているのであれば、ALM委員会をリスク管理委員会の一部とすることも認められる。
具体的には、2009年8月の「Guidelines on Corporate Governance for the Insurance Sector」及び、2010年1月の「Corporate Governance Guidelines for Insurance Companies-Amendment No1」において、以下のように規定されている。
1|リスク管理委員会(Risk Management Committee)
他の金融機関と同様に、保険会社の健全な管理は、様々なリスクを組織全体でどのように管理するのかに依存している、ということはよく理解されている。保険会社は、強力なリスク管理制度とリスク軽減戦略の発展を追及する上で、会社のリスク管理戦略を規定するために、独立したリスク管理委員会を設定しなければならない。リスク管理機能は、会社の様々な事業ラインにわたる全てのリスクを監視し、そのヘッドが取締役会に直接アクセスできるような方式で組織化されなければならない。伝統的に、この機能は、明確に定義された役割を有するCRO(Chief Risk Officer)の全体的な指導と監督の下にある。しかしながら、保険会社は、リスク管理機能のヘッドの適切な独立性の必要性を考慮して、その事業の規模、性格、複雑性に対して適切な機能を組織化することができる。
概ね、リスク管理委員会は、以下のことを行わなければならない。
ALMは、会社の所与のリスク選好度やリスク許容度、事業プロフィールの下で、会社の財務上の目標を達成するために、資産と負債に関連した戦略を作成、実行、監視、修正を行う継続的なプロセスである。ALMの必要性については、保険会社が、将来において、そのキャッシュ・フローのニーズや資本要件を満たすことを可能にするような方法で、投資することを確実にするためのフレームワークを規定することにあるので、強調しすぎるということはない。
ALM委員会の責任は、以下の項目を含まなければならない。
具体的には、2009年8月の「Guidelines on Corporate Governance for the Insurance Sector」及び、2010年1月の「Corporate Governance Guidelines for Insurance Companies-Amendment No1」において、以下のように規定されている。
1|リスク管理委員会(Risk Management Committee)
他の金融機関と同様に、保険会社の健全な管理は、様々なリスクを組織全体でどのように管理するのかに依存している、ということはよく理解されている。保険会社は、強力なリスク管理制度とリスク軽減戦略の発展を追及する上で、会社のリスク管理戦略を規定するために、独立したリスク管理委員会を設定しなければならない。リスク管理機能は、会社の様々な事業ラインにわたる全てのリスクを監視し、そのヘッドが取締役会に直接アクセスできるような方式で組織化されなければならない。伝統的に、この機能は、明確に定義された役割を有するCRO(Chief Risk Officer)の全体的な指導と監督の下にある。しかしながら、保険会社は、リスク管理機能のヘッドの適切な独立性の必要性を考慮して、その事業の規模、性格、複雑性に対して適切な機能を組織化することができる。
概ね、リスク管理委員会は、以下のことを行わなければならない。
・専門的な分析と質のレビューを行うことにより、リスク管理制度の効果的な運営において、取締役をアシストする。
・保険会社のリスク・プロファイルに関して、単体あるいは個々のリスク・プロファイルに加えて、グループでの全体的な観点を維持する。
・リスク・エクスポジャーとそれを管理するために取られる行動に関する詳細を、取締役会に報告する。
・会社の戦略、合併・買収及び(それらに)関連する事項のような戦略的機能的な事項に関係するリスク管理決定に関して、取締役会にアドバイスする。
2|ALM委員会(Asset Liability Management Committee) ALMは、会社の所与のリスク選好度やリスク許容度、事業プロフィールの下で、会社の財務上の目標を達成するために、資産と負債に関連した戦略を作成、実行、監視、修正を行う継続的なプロセスである。ALMの必要性については、保険会社が、将来において、そのキャッシュ・フローのニーズや資本要件を満たすことを可能にするような方法で、投資することを確実にするためのフレームワークを規定することにあるので、強調しすぎるということはない。
ALM委員会の責任は、以下の項目を含まなければならない。
・保険会社のリスク/報酬の目標を設定し、保険契約者の期待を評価する。
・リスク・エクスポジャーの水準を定量化し、リスク・エクスポジャーと結び付いた期待報酬とコストを評価する。
・最適ALM戦略を作成、実行し、リスク/報酬の目標を満たす。戦略は、商品レベルと会社レベルの両方において、規定されなければならない。
・リスク許容度の限度を規定する。
・定期的な間隔でリスク・エクスポジャーを監視し、必要に応じてALM戦略を改訂する。
・定期的な間隔で、取締役会にALMの情報を提出する。
以上のように、リスク管理は、経営にとって、極めて重要な事項として、位置付けられ、そのガバナンスが問題なく機能するような仕組み作りを求められている。
6―まとめ
インドにおいても、ALMやストレス・テストが、リスク管理において重要な意味を有するものとして位置付けられている。その中で、これらのリスク管理が問題なく機能するようなガバナンスに関する規制も行われている。さらには、エコノミック・キャピタルの算出等を含む各種のリスク管理の実施やそれらの監督官庁等への報告においては、アポインテッド・アクチュアリーが重要な役割を果たしている状況にある。
以上、これまでの5回のレターで、インドの生命保険市場の業界全体の状況、財務を中心とする保険監督規制の現状及びさらなる保険監督規制改正の動向等について報告してきた。次回のレターでは、こうした規制改正等を巡る動きの激しい環境下での、実際の生命保険会社の経営効率や収益性・健全性等の状況について、報告する。
以上、これまでの5回のレターで、インドの生命保険市場の業界全体の状況、財務を中心とする保険監督規制の現状及びさらなる保険監督規制改正の動向等について報告してきた。次回のレターでは、こうした規制改正等を巡る動きの激しい環境下での、実際の生命保険会社の経営効率や収益性・健全性等の状況について、報告する。
(2016年01月12日「基礎研レター」)
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