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介護施設の拡充は進むか-待機高齢者を減らすには、何が有効か?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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介護保険制度スタート前、高齢者の介護は家族が行うことが前提となっていた。家族では対応しきれない場合に、行政より所得等の調査を受けた上で、市町村長の「措置」により、介護サービスが始まる仕組みであった。これが、制度開始後は、「契約」に基づくサービスとなった。しかし、介護には、いまも、高齢者福祉の一環として、高額の報酬や賃金をつけるものではないという考え方が、社会に残っているのではないだろうか。即ち、介護は、その重要性が理解されていないものと考えられる。
介護職員は、重労働にもかかわらず、サービス時に感謝の言葉をかけてもらうことで納得するケースが多いという。賃金問題で、雇用者と労働闘争などに至るケースは少ない。例えば、労働組合の業種別の組織率を見ると、介護職員の属する社会保険・社会福祉・介護事業は4%であり、10%の医療業や、17.4%の全産業よりも低い。このようなことも、低賃金問題の背景にあるものと考えられる。
4――政府の介護施設整備目標
7この基金は、診療報酬・介護報酬とは別に、医療・介護政策の実現手段の1つとして、2014年度より、消費税増税分を活用して、各都道府県に設置されたもの。地域医療構想の一環として作成される、都道府県計画の財政的裏付けとなっている。医療関連の事業に加え、2015年度からは、介護関連の事業 (地域密着型サービス等の介護施設等の整備に関する事業、介護従事者の確保に関する事業) も、対象となっている。
5――おわりに (私見)
(2)軽度の要介護者等に向けて、特養だけではなく、高齢者住居の多様化を進める特養の定員数がなかなか伸びない現状では、軽度の要介護者や、家族の在宅ケアが可能な高齢者は、現在の待機状態が続くものと考えられる。そこで、特養の代替として、入居費用が手頃な、サ高住、認知症高齢者グループホーム、軽費老人ホーム等、多様な高齢者住居の整備が求められる。
(3)介護職員の更なる待遇改善を進め、人材の雇用・育成を促進する介護職員の需給見通しを見る限り、いくら介護施設を整備しても、それだけでは、そこでサービスを行う介護職員が不足してしまうことは明らかである。施設整備に並行して、介護職に関する理解を高め、介護職員の待遇を改善して、人材の雇用・育成を進めることが不可欠である。
これらを通じて、「新三本の矢」の「介護離職ゼロ」を目指すべきではないだろうか。引き続き、介護施設整備や、介護職員の待遇改善の進捗に、注目していく必要があるものと思われる。
(2015年12月21日「基礎研レター」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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