2015年02月12日

1月マネー統計~マネーの伸びは鈍化したが、投信は堅調をキープ

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 貸出の伸びは鈍化
・主要銀行貸出動向アンケート調査: 個人向け貸出の持ち直しが継続
・マネタリーベース: 増勢は鈍化したが問題なし
・マネーストック: 投資信託は堅調をキープ

■要旨

1月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.6%と前月からやや縮小した。12月の一時的な賞与支払い用資金などが返済された影響が出たほか、1月の為替がやや円高ドル安に振れたことで前年比での円安ペースが鈍化し、外貨建て貸出の円換算残高が減少したことも貸出の伸び率縮小に作用したようだ。

主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2014年10-12月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は、小幅ながら4四半期ぶりに改善した。また、個人向けD.I.も2期連続となる改善を示した。消費税率引き上げに伴って一旦大きく落ち込んだ個人の資金需要だが、その後は住宅ローンを中心に持ち直しが続いている。

日銀による資金供給量を示すマネタリーベースの1月平均残高の前年比伸び率は37.4%と、前月からやや縮小した。日銀当座預金の伸び率が縮小したためである。また、金融政策運営との関係で注目度の高い末残の前月末からの増加額も2.7兆円に留まった。ただし、1月は季節柄マネタリーベースの増加要因である国債償還が少なく、マネタリーベースが減少しやすいことが影響したとみられ、今のところは特段問題ない状況と考えられる。

1月のマネーストック統計によると、市中通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.4%、M3は同2.8%と、それぞれ前月からやや伸びが縮小した。貸出の伸び率鈍化が影響したとみられる。また、M3にリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率も縮小したが、こうした中でも投資信託は堅調を維持。1月の伸び率は拡大したうえ、残高(元本ベース)も88.1兆円と過去最高を更新している。13年半ば以降の投資信託の増勢は06年から07年にかけての急増に次ぐ勢いをキープしている。NISAの普及もあり、家計のリスク性資産投資の受け皿として選好されているようだ。

(2015年02月12日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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