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財務省ホームページに「日本の財政関係資料」(平成25年10月)が掲載されている。その中に「我が国財政を家計にたとえたら」というページがあり、『我が国を、月収30万円の家計にたとえると、一か月当たり29万円の借金をして、毎月の家計を成り立たせていることになり、5,700万円強のローンを抱えていることになります』と書かれている。まさに我が家(国)の台所は火の車である。
歳出の内訳をみると、高齢化の進展に伴い「社会保障」が29.1兆円と全体の31.4%を占めている。実際の社会保障給付費は既に100兆円を超えており、社会保険料収入との差を主に国と地方自治体の税金で埋め合わせているのだ。以前は給付費の8割程度が保険料で賄われていたが、ここ10年間は給付費の増加は続いたままで保険料収入は6割以下と伸び悩んでおり、公費負担が増しているのである。
この問題解決のためには給付を抑制することと、保険料収入を増やすことが考えられるが、給付の効率化を図ったとしても一層の高齢化の進展で給付総額の抑制は難しい。従って、保険料収入を増やすことが不可欠で、そのためには高齢世代の応能負担と現役世代の負担力向上が必要だ。
従来の現役世代からの所得移転による世代間扶助には限界があるが、高齢世代には不動産や豊富な金融資産を有する人も多く、「高齢者=扶養されるべき人」とは必ずしも言えない。既に国会では高齢世代の応能負担を求めて、70~74歳の医療費窓口負担を1割から2割に、介護保険の自己負担も一定年収以上は2割に引き上げることが検討されている。また、高齢者の「持ち家率」は高く、リバース・モーゲージのような所有不動産の流動化により、高齢世代の応能負担力の増大にもつながるだろう。
一方、若年世代は非正規雇用者の増加などにより、国民年金保険料の納付率が6割を下回り、健康保険等の標準報酬月額も低下している。ただでさえ少子化で減少している若年世代だが、ひとりでも多くの若者が安定した雇用を確保し、社会保険料を納付することが必要だ。そのためには、若年世代に対する高等教育や職業教育の支援、積極的な雇用・労働政策が不可欠だ。このような若年世代への社会支出の拡充は、我が国の持続可能な社会保障制度と財政再建への将来投資なのである。
来年4月から消費税が8%に増税されることが政治的に決着した。しかし、それだけでは財政再建に十分ではない。現在、国会では「社会保障制度改革プログラム法案」が審議されているが、少子高齢化という人口構造変化の中で、持続可能な社会をつくるために高齢世代にも負担を求める意思決定ができるのかどうか、「超高齢社会で民主主義は機能するか」が問われている。
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2013年11月11日「研究員の眼」)
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