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財政健全化への道 -「自立生活」支援する「シニア市場」の活性化を!
土堤内 昭雄
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政府は2月28日、平成25年度予算案を国会に提出した。一般会計は92.6兆円、歳出は政策経費70.4兆円、国債費22.2兆円で、国債費が全体の約4分の一を占める。一方、歳入は税収43.1兆円、公債金42.9兆円と、4年ぶりに税収が国債発行額を上回ることになる。しかし、基礎的財政収支(プライマリーバランス*)の赤字はなお深刻な状況にあり、国際公約の2020年度までの黒字化は容易ではない。また、平成25年度末で国と地方の長期債務残高合計は977兆円程度、対GDP比は約200%となる模様だ。では、どのようにして財政の健全化を図って行けばよいのだろう。
まずは歳出のなかで最も大きな比率を占め、増加率の大きい社会保障関係費の抑制が考えられる。平成25年度予算案では、社会保障関係費は政策経費の41.4%の29.1兆円が計上されており、歳出に占める割合は31.4%と2000年度の19.7%から大幅に増加している。しかし、わが国の人口構造変化をみると、昨年から団塊世代が高齢者に参入し始めており、既に社会保障給付費は100兆円を超えて、2012年度予算ベースでは109.5兆円になっているのだ。さらに10年後には彼らが後期高齢者になり、“大介護時代”**を迎えることから膨大な介護費用の発生が見込まれる。今後、社会保障関係費の効率化のためには、介護予防をはじめとした高齢者の「自立生活」支援が極めて重要になる。
一方、歳入増加を実現するためには、高齢者の生活の質(QOL)を向上させる商品やサービスの充実により、シニア市場を活かした内需の拡大が必要だ。最近では一人暮らし高齢者に便利なカット野菜が普及するなど世帯縮小への対応が進んでいるが、現在のシニア市場は、まだまだ高齢者ニーズや世帯属性に応え切れていない。また、高齢者の視力・聴力・筋力の低下などの身体特性に配慮した商品開発は不十分で、相変わらず非力な高齢者がペットボトル飲料のふたを開けることは難しい。大音量にしなくても聞き取り易いスピーカー付きテレビや、少量の洗濯物を手軽に洗う超小型洗濯機など、一人暮らし高齢者の「自立生活」を支援する、高齢者自身が使いやすい家電製品の需要は大きい。
高齢者には様々な日常生活動作(ADL)の人がいる。そこにきめ細かく対応する高齢化対応商品やサービスの充実は、高齢者の生活の質の向上と消費の拡大、関連産業の成長をもたらすとともに、社会保障支出の抑制に資する。歳出増大の最大要因が高齢化による社会保障支出とすれば、歳入増加もシニア市場の活用に求めることが、財政再建への道として有効な処方箋になるのではないだろうか。一層の高齢者の「自立生活」“Independent Living”を支援する「シニア市場」の活性化が待たれる。
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(2013年04月01日「研究員の眼」)
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