2012年02月24日

消費税増税に伴う住宅への課税方式について~欧米諸国にみられる様々な配慮~

社会研究部 土地・住宅政策室長 篠原 二三夫

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■見出し

1――はじめに
2――消費税の増税と住宅市場への影響
  1|低下する税収への寄与
  2|消費税増税が住宅需要に与える影響
3――欧米主要国における住宅に対する消費課税(付加価値税等)の状況
  1|EUにおける付加価値税の導入とその後の増税パターン
  2|欧米主要国における住宅に対する付加価値税等の状況
  (1)アメリカ(ニューヨーク)の場合
  (2)イギリスの場合
  (3)フランスの場合
  (4)ドイツの場合
  (5)カナダ(オンタリオ州)の場合
4――むすびにかえて

■introduction

社会保障・税一体改革素案が提示され、増税による駆け込み需要とその反動等による影響を踏まえ、税負担の増加を平準化及び緩和する観点から住宅取得に係る必要な措置を検討するという画期的なステートメントが明らかになった。素案にある必要な措置を検討してもらうにあたっては、欧米主要国における住宅を巡る付加価値税の取り扱いが参考になるだろう。
英米独仏加各国にはそれぞれ、参考となる制度事例があり、住宅資産に対する付加価値税等の課税や増税に際し、非常に慎重な対応をとっていることが分かる。
特に1991年に導入されたカナダの統合売上税(HST)に設けられている新築住宅税額還付制度(New Housing Rebate)が注目される。HST導入前は新築住宅取引や建設工事には課税されていなかったが、導入後は新たに連邦税5%と州税8%、計13%(オンタリオ州)が課税されるようになった。そこで、HST導入による実質負担分を住宅購入者に還付し、住宅市場の需給を乱すことなく、着実な成長を促す仕組みである。
具体的には、住宅価格が45万カナダ$未満の住宅を主たる住宅として購入する場合には、連邦分5%の36%(最高6,300$)、オンタリオ州分8%の75%(最高24,000$)が戻る。住宅価格が35万$の場合に、還付額は連邦と州合計で最高の27,300$(約230万円、CA$1=84円)となり、この時の実効税率は5.2%となる。住宅価格が45万$を超えると連邦からの還付はなくなり、州分の最高額24,000$だけが還付される。
このような税額還付制度を導入すれば軽減税率を導入する必要はない。還付の実務は住宅販売事業者や建設業者が消費者に替わって代行できる。このため、日本の消費税増税時における住宅市場対策として、最も参考になる制度事例と考えられる。

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社会研究部   土地・住宅政策室長

篠原 二三夫 (しのはら ふみお)

研究・専門分野
土地・住宅政策、都市・地域計画、不動産市場

経歴
  • 【職歴】
     1975年 丸紅(株)入社
     1990年 (株)ニッセイ基礎研究所入社 都市開発部(99年より社会研究部門)
     2001年より現職

    【加入団体等】
     ・日本都市計画学会(1991年‐)           ・武蔵野NPOネットワーク役員
     ・日本不動産学会(1996年‐)            ・首都圏定期借地借家件推進機構会員
     ・日本テレワーク学会 顧問(2001年‐)
     ・市民まちづくり会議・むさしの 理事長(2005年4月‐)
     ・日米Urban Land Institute 国際会員(1999年‐)
     ・米国American Real Estate Finance and Economics Association国際会員(2000年‐)
     ・米国National Association of Real Estate Investment Trust国際会員(1999年‐)
     ・英国Association of Mortgage Intermediaries準国際会員待遇(2004年‐)
     ・米国American Planning Association国際会員(2004年‐)
     ・米国Pension Real Estate Association正会員(2005年‐)

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