2008年12月26日

制度の発展過程から見た日本と韓国の医療保険制度

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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日本と韓国の医療保険制度は、社会保険方式という同じ母体から出発しているものの、両国の経済・政治・社会的な特徴等によって、異なる形態で発展してきた。特に、両国における高齢化率の進展率の差異は制度改革の優先順位を変える原因になっており、韓国よりも人口の高齢化が速く進んだ日本では、高齢化社会を迎えた1970年以降多くの高齢者関連政策が実施された。
両国では国民皆保険制度の導入以前までは適用対象者の拡大と給付範囲の拡大政策がとられた。しかし、国民階保険制度実施以降の両国の医療保険政策は日本が高齢者向け医療政策を中心としたことに比べて、韓国は制度の改革を中心として政策を展開した。
特に2000年に実施された韓国の医療保険組合の統合と強制的な医薬分業の実施はその以前までほぼ同一なシステムとして考えられた日本と韓国の医療保険制度に線を引く重要な転換点の役割をした。
現在、韓国の急速な少子高齢化は日本を上回る早いスピードで進んでおり、韓国政府は医療を含む社会保障各分野における改革とさらに高齢化が進展した社会を見据えた対策を講じようとしている。従って、今後制度的、文化的類似性が高い日本と韓国がお互いの制度や対策を参考しながら共同に対処することは両国における経済的、時間的損失を最小化するのに役立つだろう。

(2008年12月26日「基礎研マンスリー」)

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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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