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「縮みながらも豊かに暮らす」社会への転換(2)-SDGs未来都市計画から読み解く「地域課題」と「挑戦」の軌跡

生活研究部 准主任研究員 小口 裕
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3――「SDGs未来都市」選定計画の概観(2)――取り組みは「関係人口」「生活基盤サービス」が上位
生活基盤サービスでは、医療・交通・買い物など日常機能の再構築が焦点となり、遠隔医療やスマートストア、ドローン配送といったDX施策と組み合わせて、人口減少下でも生活インフラを維持する「社会適応型のスマート化」を軸に計画が検討されている様子が伺える。
GX分野では、再生可能エネルギーの導入やゼロカーボン宣言など、環境施策を新たな地域産業と結びつける動きが広がっている。
さらに「観光・交流」(同92件)や「農林水産・6次化」(同87件)に取り組む計画も多く見られており、体験型ツーリズムや地域ブランド化を通じて域外からの需要を取り込み、地域経済に波及させる多層的な取り組みが展開されている。いずれの計画も単独分野にとどまらず、観光と人材、農業とGXといった複数分野の交点で新たな価値を創出する姿勢が顕著である。
一方、「スタートアップ・イノベーション」(同25件)や「財政・行政効率」(同48件)は比較的少なく、地方創生2.0が掲げる「高付加価値型自立経済」や行政の持続可能性といったテーマへの取り組みが今後の強化ポイントであることが伺える。
4――まとめ――多様化する地方創生の兆しと、地方創生2.0の接続に向けた課題
また、実態分析の結果、従来の「観光偏重」や「雇用創出一辺倒」といった単一的なアプローチでは捉えきれない、多層的な課題認識と、その対処方法の多様化が明らかとなった。
GX(グリーントランスフォーメーション)や関係人口の創出といった領域が横断的に重要性を増す一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション)や財政効率化への取り組みには温度差が見られる。こうした分野別の傾向が、今後、地方創生2.0の指針とどのように接続されていくのかは、注視すべきポイントであると言えるだろう
そのような点を踏まえて、次回(最終回)は、自治体別・年度別・地域別の分布とその変遷に着目し、地方創生の構造的な変化の兆しと、地方創生2.0への接続について具体的に考えていきたい。
(2025年07月24日「基礎研レター」)

03-3512-1813
- 【経歴】
1997年~ 商社・電機・コンサルティング会社において電力・エネルギー事業、地方自治体の中心市街地活性化・商業まちづくり・観光振興事業に従事
2008年 株式会社日本リサーチセンター
2019年 株式会社プラグ
2024年7月~現在 ニッセイ基礎研究所
2022年~現在 多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)
2021年~2024年 日経クロストレンド/日経デザイン アドバイザリーボード
2007年~2008年(一社)中小企業診断協会 東京支部三多摩支会理事
2007年~2008年 経済産業省 中心市街地活性化委員会 専門委員
【加入団体等】
・日本行動計量学会 会員
・日本マーケティング学会 会員
・生活経済学会 准会員
【学術研究実績】
「新しい社会サービスシステムの社会受容性評価手法の提案」(2024年 日本行動計量学会*)
「何がAIの社会受容性を決めるのか」(2023年 人工知能学会*)
「日本・米・欧州・中国のデータ市場ビジネスの動向」(2018年 電子情報通信学会*)
「企業間でのマーケティングデータによる共創的価値創出に向けた課題分析」(2018年 人工知能学会*)
「Webコミュニケーションによる消費者⾏動の理解」(2017年 日本マーケティング・サイエンス学会*)
「企業の社会貢献に対する消費者の認知構造に関する研究 」(2006年 日本消費者行動研究学会*)
*共同研究者・共同研究機関との共著
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