2024年03月19日

東南アジア経済の見通し~輸出底打ちで再び緩やかな回復軌道に復帰

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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■要旨
 
  1. 東南アジア5カ国は景気回復力が弱く、概ね内需の強さを反映した成長ペースとなっている。2023年10-12月期の成長率はインドネシア(前年同期比+5.0%)とフィリピン(同+5.6%)が内需が強く堅調に推移したが、輸出主導経済であるタイ(同+1.7%)とマレーシア(同+3.0%)が輸出停滞に苦しんでいる。ベトナム(同+6.7%)は米国向け輸出が拡大して製造業が回復、景気に明るさが見えてきている。
     
  2. 消費者物価上昇率は昨年末までにインフレが沈静化したが、先行きはベース効果の剥落により下げ止まり、輸出の底打ちによる景気回復軌道に入るなかで徐々に上向くだろう。もっとも、これまでの利上げの累積効果により緩やかな物価上昇にとどまり、各国中銀のインフレ目標圏内で推移するだろう。
     
  3. 金融政策は今後利下げ局面に入る国が増えるだろう。今年半ばからインドネシアとフィリピンが米国に追随する形で金融緩和に踏み切り、タイは足元の景気回復の遅れを考慮して4月から調整的な利下げを実施すると予想する。
     
  4. 2024年の東南アジア経済は、輸出と製造業が持ち直して景気回復局面が続くものの、ペントアップ需要のやこれまでの利上げの累積効果によりサービス業の増勢が鈍化して盛り上がりに欠ける展開となるだろう。2024年の成長率の上昇幅は輸出主導経済のベトナムとマレーシア、タイで高くなる。内需主導経済のインドネシアとフィリピンは概ね横ばいの成長となるだろう。

 
東南アジア5 カ国の成長率とインフレ率の見通し
■目次

1.東南アジア経済の概況と見通し
  ・経済概況:内需の強さを反映した成長ペースに
  ・物価:徐々に上向くが、利上げの累積効果により緩やかな上昇にとどまる
  ・金融政策:今年半ばから利下げ局面に
  ・経済見通し:輸出底打ちで緩やかな景気回復軌道に復帰
2.各国経済の見通し
  2-1.マレーシア
  2-2.タイ
  2-3.インドネシア
  2-4.フィリピン
  2-5.ベトナム
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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