2018年09月21日

【アジア・新興国】東南アジアの経済見通し~貿易摩擦の過熱で下振れリスクが強まるも、底堅い成長を維持

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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■要旨
  1. 東南アジア経済は、内需を中心とする堅調な景気が続いている。民間消費は雇用・所得環境の改善と物価の安定を背景に更に加速し、投資は企業業績の改善や設備稼働率の上昇、政府主導のインフラプロジェクトの進展などから回復傾向が続いている。一方、海外経済の回復とITサイクルの改善を受けて好調が続いた輸出は年明け以降増勢が鈍化してきている。また内需拡大で輸入は依然として旺盛であり、外需は悪化傾向にある。
     
  2. 消費者物価上昇率は、短期的には原油高、通貨安による輸入インフレが加わって上昇するだろうが、年内にはエネルギー価格の上昇一服で頭打ちし、来年は景気の伸び悩みを背景に安定して推移すると予想する。
     
  3. 金融政策は、当面は引締め気味の政策スタンスが続く。インフレ警戒感の高まるフィリピンやベトナム、アジアの中でも通貨の下落圧力が強いインドネシアでは利上げが実施されると予想する。
     
  4. 経済の先行きは、米国発の貿易摩擦の過熱により外需が悪化する恐れがあるものの、内需中心の底堅い成長を維持すると予想する。国別に成長率予想を比較すると、18年は昨年好調だったマレーシアとインフレ高進に苦しむフィリピンが減速するものの、その他の3カ国は内需拡大を背景に前年を上回るか、同水準の成長を予想する。19年は内需が旺盛なインドネシアを除く4カ国では輸出減速によって成長率が低下するだろう。
東南アジア5 カ国の成長率とインフレ率の見通し
■目次

1.東南アジア経済の概況と見通し
  ・経済概況:内需を中心に堅調に拡大
  ・物価:先行き上昇一服へ
  ・金融政策:引き締め気味の政策は当面続く
  ・経済見通し:景気下振れリスクを抱えるも底堅く成長
2.各国経済の見通し
  2-1.マレーシア
  2-2.タイ
  2-3.インドネシア
  2-4.フィリピン
  2-5.ベトナム
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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