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- 【タイGDP】4-6月期は前年同期比+4.6%増~観光業鈍化で景気減速も高成長を維持
2018年08月20日
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2018年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比4.6%増1と、前期の同4.9%増から小幅に低下したものの、Bloomberg調査の市場予想(同4.4%増)を上回る結果となった(図表1)。
4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、サービス輸出の鈍化や在庫の圧縮が成長率低下に繋がった。
民間消費は前年同期比4.5%増と、前期の同3.7%増から小幅に上昇した。財別に見ると、半耐久財(3.8%増)と非耐久財(1.5%増)が伸び悩む一方、耐久財(14.2%増)とサービス(5.7%増)が堅調に拡大した。
政府消費は同1.4%増(前期:同1.9%増)と、現物社会給付や公務員給与を中心に低下した。
投資は同3.6%増と、前期の同3.4%増から小幅に上昇した。投資の内訳を見ると、まず公共投資は同4.9%増(前期:同4.0%増)と上昇した。公共建設投資(同1.5%増)が伸び悩む一方、公共設備投資(同13.6%増)が好調だった。また民間投資は同3.2%増(前期:同3.1%増)と若干上昇した。民間設備投資(同3.2%増)と民間建設投資(同2.8%増)がそれぞれ底堅く推移した。
在庫変動の成長率寄与度が+1.3%ポイントと、前期の+2.8%ポイントから縮小した。
純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲0.2%ポイントと、前期の▲0.9%ポイントから改善した。まず輸出は同6.4%増(前期:同6.0%増)と堅調な伸びを維持した。うち財貨輸出が同7.4%増(前期:同4.7%増)と上昇する一方、サービス輸出が同3.1%増(前期:同9.5%増)と低下した。また輸入は同7.5%増(前期:同8.7%増)と低下した。うち財貨輸入が同7.2%増(前期:同9.3%増)と低下する一方で、サービス輸入が同8.9%増(前期:同6.2%増)と上昇した。
供給項目別に見ると、主に製造業とサービス業の鈍化が成長率低下に繋がった(図表2)。
農林水産業は前年同期比10.4%増と、前期の同6.5%増から更に上昇した。農業・林業(11.6%増)は好天に恵まれてコメやパーム油、砂糖、果物、ゴムなどの主要農産品を中心に拡大し、2期連続のプラスとなった。一方、漁業(同2.8%減)はエビの生産鈍化によりマイナスとなった。
非農業部門では、まず製造業が同3.1%増(前期:同3.8%増)と内外需要の鈍化を背景に低下した。製造業では、自動車やコンピューター・部品などの資本・技術関連産業(同6.5%増)、化学・同製品やゴム・プラスチック製品などの素材関連(同3.8%増)と堅調に推移する一方、食料・飲料や宝飾品などの軽工業(同0.9%減)がたばこの物品税増税によって3期連続のマイナスとなった。また電気・ガス・水供給業は同1.8%増(前期:2.1%増)と低下した。一方、建設業は同2.0%増(前期:同1.2%増)と低迷していた公共部門を中心に拡大して2期連続のプラスとなった。
全体の6割弱を占めるサービス業は引き続き景気の牽引役となっているが、前期から伸び率の低下した業種が多かった。卸売・小売業は同7.2%増(前期:同7.0%増)、金融業が同5.5%増(前期:同3.6%増)と上昇したが、ホテル・レストラン業が同9.4%増(前期:同12.8%増)、運輸・通信業が同7.0%増(前期:同7.5%増)、不動産業が同3.2%増(前期:同4.9%増)と、それぞれ低下した。
1 8月20日、タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は2018年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。なお、前期比(季節調整値)の実質GDP成長率は1.0%増と前期の同2.1%増から低下した。
農林水産業は前年同期比10.4%増と、前期の同6.5%増から更に上昇した。農業・林業(11.6%増)は好天に恵まれてコメやパーム油、砂糖、果物、ゴムなどの主要農産品を中心に拡大し、2期連続のプラスとなった。一方、漁業(同2.8%減)はエビの生産鈍化によりマイナスとなった。
非農業部門では、まず製造業が同3.1%増(前期:同3.8%増)と内外需要の鈍化を背景に低下した。製造業では、自動車やコンピューター・部品などの資本・技術関連産業(同6.5%増)、化学・同製品やゴム・プラスチック製品などの素材関連(同3.8%増)と堅調に推移する一方、食料・飲料や宝飾品などの軽工業(同0.9%減)がたばこの物品税増税によって3期連続のマイナスとなった。また電気・ガス・水供給業は同1.8%増(前期:2.1%増)と低下した。一方、建設業は同2.0%増(前期:同1.2%増)と低迷していた公共部門を中心に拡大して2期連続のプラスとなった。
全体の6割弱を占めるサービス業は引き続き景気の牽引役となっているが、前期から伸び率の低下した業種が多かった。卸売・小売業は同7.2%増(前期:同7.0%増)、金融業が同5.5%増(前期:同3.6%増)と上昇したが、ホテル・レストラン業が同9.4%増(前期:同12.8%増)、運輸・通信業が同7.0%増(前期:同7.5%増)、不動産業が同3.2%増(前期:同4.9%増)と、それぞれ低下した。
1 8月20日、タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は2018年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。なお、前期比(季節調整値)の実質GDP成長率は1.0%増と前期の同2.1%増から低下した。
4-6月期GDPの評価と先行きのポイント
4-6月期は成長率が小幅に低下したものの、4%台後半の高成長を維持した。タイ経済は輸出の拡大を通じて民間消費が持ち直し、また回復が遅れていた投資も上向いてきており、景気は堅調に拡大している。
4-6月期の成長鈍化は訪タイ観光客数の減少による影響が大きい。4-6月期はサッカーロシアワールドカップの開催によりEUからの観光客が減少し、訪タイ観光客数が3四半期ぶりに一桁成長(前年比+9.1%増)に止まった(図表3)。過去2四半期の訪タイ観光客数が前年同期に実施した違法ツアーの摘発強化の反動によって大幅増加となったことも一因とみられる。このことがサービス輸出の鈍化に繋がり、また民間消費の下押し要因となった。
成長ドライバーの財貨輸出は堅調に推移している。財貨輸出を品目別に見ると、ハードディスクなど世界的に需要が拡大している電子部品、国内の自動車生産を終了したオーストラリア向けの自動車、金属製品、化学、石油化学製品など主力の製造品が輸出全体を押し上げている。
緩やかな回復が続く民間消費は拡大ペースが加速した。農業生産の拡大や観光業の好調により農業部門と非農業部門の所得が増加したほか、低インフレ環境も継続しており、消費者信頼感指数は上昇基調にある。また5年間の保有が条件とされたファーストカー政策の影響がなくなり、買い替え需要が旺盛な自動車の販売が好調に推移しているほか、福祉カードのような政府の低所得者支援策も家計の購買力向上に寄与している。
漸く上向き始めた投資も引き続き回復した。輸出拡大や自動車販売の増加を背景に製造業の設備稼働率が上向くなか(図表4)、企業信頼感指数も上昇傾向が続いており、民間投資は緩やかに回復した。公共投資も東部経済回廊(EEC)を中心とした政府のインフラ開発を背景に設備投資が増加した。
4-6月期の成長鈍化は訪タイ観光客数の減少による影響が大きい。4-6月期はサッカーロシアワールドカップの開催によりEUからの観光客が減少し、訪タイ観光客数が3四半期ぶりに一桁成長(前年比+9.1%増)に止まった(図表3)。過去2四半期の訪タイ観光客数が前年同期に実施した違法ツアーの摘発強化の反動によって大幅増加となったことも一因とみられる。このことがサービス輸出の鈍化に繋がり、また民間消費の下押し要因となった。
成長ドライバーの財貨輸出は堅調に推移している。財貨輸出を品目別に見ると、ハードディスクなど世界的に需要が拡大している電子部品、国内の自動車生産を終了したオーストラリア向けの自動車、金属製品、化学、石油化学製品など主力の製造品が輸出全体を押し上げている。
緩やかな回復が続く民間消費は拡大ペースが加速した。農業生産の拡大や観光業の好調により農業部門と非農業部門の所得が増加したほか、低インフレ環境も継続しており、消費者信頼感指数は上昇基調にある。また5年間の保有が条件とされたファーストカー政策の影響がなくなり、買い替え需要が旺盛な自動車の販売が好調に推移しているほか、福祉カードのような政府の低所得者支援策も家計の購買力向上に寄与している。
漸く上向き始めた投資も引き続き回復した。輸出拡大や自動車販売の増加を背景に製造業の設備稼働率が上向くなか(図表4)、企業信頼感指数も上昇傾向が続いており、民間投資は緩やかに回復した。公共投資も東部経済回廊(EEC)を中心とした政府のインフラ開発を背景に設備投資が増加した。
先行きのタイ経済は、高成長を記録した1-3月期(+4.9%成長)をピークに鈍化傾向が続きそうではあるが、大幅に景気減速する可能性は低く、4%前後の堅調な伸びを維持しそうだ。海外経済の持続的に拡大により財・サービス輸出が堅調に推移するなか、雇用・所得環境が改善して民間消費も回復基調を続けそうだ。また投資も輸出型製造業の設備投資や東部経済回廊などの開発プロジェクトの進展などから民間部門と公共部門がそれぞれ底堅い伸びを維持するだろう。もっとも4-6月期の成長率を押し上げた農業生産は洪水の影響で鈍化する可能性があるほか、米中貿易戦争の過熱や欧米の金融政策の引き締めなどから景気の先行き不透明感が高まる可能性もあるだろう。タイは比較的外部環境に左右されやすい国であるだけに、足もとの順調な経済に水を差す流れとならないか、注意深く見守る必要がある。
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(2018年08月20日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
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