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2018年07月23日
欧州保険会社が2017年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-
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1―はじめに
欧州の保険会社各社が5月上旬から6月中旬にかけて公表した単体及びグループベースのSFCR(Solvency and Financial Condition Report:ソルベンシー財務状況報告書)については、前回のレポートでその具体的内容のうち、長期保証措置と移行措置の適用による影響及びSCRとMCRの計算方法の説明について報告した。
今回のレポートでは、欧州大手保険グループのSFCR(含むQRTs(定量的報告テンプレート))の内容から、内部モデルの使用状況及び使用された内部モデルの説明について報告する。
今回のレポートでは、欧州大手保険グループのSFCR(含むQRTs(定量的報告テンプレート))の内容から、内部モデルの使用状況及び使用された内部モデルの説明について報告する。
2―内部モデルの使用状況
この章では、欧州大手保険グループ6社(AXA、Allianz、Generali、Prudential、Aviva、Aegon)の内部モデルの使用状況について報告する。
1|内部モデルについて
ソルベンシーIIにおける第一の柱である「必要資本」の算出等においては、(1)技術的準備金(Technical Provision)、(2)SCR(ソルベンシー資本要件:Solvency Capital Requirement)、(3)MCR(最低資本要件:Minimum Capital Requirement)の3つが重要な構成要素となる。
このうちのSCRの算出については、標準的な算式が定められているが、保険会社のリスク管理の高度化を促すために、監督当局の承認を要件に、各保険会社・グループ独自の内部モデル(部分的な適用を含む)の使用も認められている1。
標準的方式では、SCRはモジュラー・アプローチと呼ばれる構造に基づいて算出され、保険引受けリスク、市場リスク等の各種のリスク・モジュールでの算出を行った後、各種リスク間の分散効果等を反映させる形で算出されていく。内部モデルでは、これらのそれぞれの算出等において独自のモデルやパラメータが使用されることになる。
1 MCRは、監督当局の究極的な行動発動基準であることから、簡便な計算方式で、客観性を有し、保険会社からの法的措置にも十分対抗できる基準としており、内部モデルの使用も認められていない。
ソルベンシーIIにおける第一の柱である「必要資本」の算出等においては、(1)技術的準備金(Technical Provision)、(2)SCR(ソルベンシー資本要件:Solvency Capital Requirement)、(3)MCR(最低資本要件:Minimum Capital Requirement)の3つが重要な構成要素となる。
このうちのSCRの算出については、標準的な算式が定められているが、保険会社のリスク管理の高度化を促すために、監督当局の承認を要件に、各保険会社・グループ独自の内部モデル(部分的な適用を含む)の使用も認められている1。
標準的方式では、SCRはモジュラー・アプローチと呼ばれる構造に基づいて算出され、保険引受けリスク、市場リスク等の各種のリスク・モジュールでの算出を行った後、各種リスク間の分散効果等を反映させる形で算出されていく。内部モデルでは、これらのそれぞれの算出等において独自のモデルやパラメータが使用されることになる。
1 MCRは、監督当局の究極的な行動発動基準であることから、簡便な計算方式で、客観性を有し、保険会社からの法的措置にも十分対抗できる基準としており、内部モデルの使用も認められていない。
2|内部モデルの使用状況
内部モデルのリスクカテゴリ毎の使用状況に関しては、SFCRのQRTsのS.25.02.22等に報告されている。これに基づくと各社の状況は以下の通りとなっている。
(1)AXA
AXAのグループSCRのうち、グループ全体でみると、77%が内部モデル、3%が標準式、15%が同等性、5%が銀行・資産運用会社、年金基金等の他の規制基準、の適用に基づくものとなっている。例えば、AXAの子会社のうち、米国子会社は同等性評価に基づいているが、日本子会社等は内部モデルを使用している。
なお、同等性評価等に対する部分を除いて考えれば、以下の図表の通り、SCRのうちの97.2%が内部モデルを使用して算出されている。リスクカテゴリ毎の内部モデルの使用割合をみても、どのリスクカテゴリでの使用割合も高く、殆どのケースで内部モデルを使用していることになっている。
内部モデルのリスクカテゴリ毎の使用状況に関しては、SFCRのQRTsのS.25.02.22等に報告されている。これに基づくと各社の状況は以下の通りとなっている。
(1)AXA
AXAのグループSCRのうち、グループ全体でみると、77%が内部モデル、3%が標準式、15%が同等性、5%が銀行・資産運用会社、年金基金等の他の規制基準、の適用に基づくものとなっている。例えば、AXAの子会社のうち、米国子会社は同等性評価に基づいているが、日本子会社等は内部モデルを使用している。
なお、同等性評価等に対する部分を除いて考えれば、以下の図表の通り、SCRのうちの97.2%が内部モデルを使用して算出されている。リスクカテゴリ毎の内部モデルの使用割合をみても、どのリスクカテゴリでの使用割合も高く、殆どのケースで内部モデルを使用していることになっている。
(2)Allianz
AllianzのSCRの構成は、次ページの図表の通りとなっている。
内部モデルによるものが、全体のSCRの76~80%を占めている。全ての主要な保険会社は内部モデル(ただし、米国子会社は同等性)でカバーされており、EEA(欧州経済地域)における小規模会社は標準式に基づいている。EEA域外の小規模会社は帳簿価格控除法(各会社の帳簿価格をグループの適格自己資本から控除)を適用している。
Allianzの場合、標準式と内部モデルの場合のリスクカテゴリの開示項目が異なっているので、AXAのように全てのリスクカテゴリの内部モデルの使用割合は必ずしも算出できない。ただし、例えば、引受けリスクの内部モデルの使用割合は全体平均に比べて低くなっている。
さらに、分散効果による控除率が38.4%と相対的に高い水準となっている。
AllianzのSCRの構成は、次ページの図表の通りとなっている。
内部モデルによるものが、全体のSCRの76~80%を占めている。全ての主要な保険会社は内部モデル(ただし、米国子会社は同等性)でカバーされており、EEA(欧州経済地域)における小規模会社は標準式に基づいている。EEA域外の小規模会社は帳簿価格控除法(各会社の帳簿価格をグループの適格自己資本から控除)を適用している。
Allianzの場合、標準式と内部モデルの場合のリスクカテゴリの開示項目が異なっているので、AXAのように全てのリスクカテゴリの内部モデルの使用割合は必ずしも算出できない。ただし、例えば、引受けリスクの内部モデルの使用割合は全体平均に比べて低くなっている。
さらに、分散効果による控除率が38.4%と相対的に高い水準となっている。
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