2018年07月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(7月号)~輸出は増勢鈍化後も高水準を維持

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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18年5月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比11.9%増(前月:同13.3%増)と小幅に低下したものの、3ヵ月連続の二桁増となった(図表1)。輸出は足元ではスマートフォン需要の減速など増勢が鈍化しつつあるものの、昨年から続く海外経済の回復や一次産品の価格上昇が全体を押し上げるなど総じて好調を維持している。

ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、5月はEU向け(同18.7%増)と北米向け(同16.0増)がそれぞれ好調だったほか、中華圏の旧正月の影響で2-3月に下振れた東アジア向け(同10.7%増)、東南アジア向け(同11.0%増)が二桁増を維持した(図表2)。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN5ヵ国仕向け地別の輸出動向
タイの18年5月の輸出額は前年同月比11.4%増(前月:同12.4%増)と好調を維持し、2ヵ月連続の二桁増となった。輸出の基調は、海外経済の回復を背景に需要が拡大した自動車・部品や電子機器、価格が上昇した石油製品を中心に好調に推移している。一方、輸入額が前年同月比11.7%増(前月:同21.3%増)と低下した結果、貿易収支は12.0億ドルの黒字となり、前月から24.9億ドル改善した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同12.6%増(前月:同12.2%増)と小幅に上昇した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、自動車・部品(同19.6%増)と石油化学製品(同25.6%増)が好調だったほか、主力の電子機器(同6.4%増)と機械・装置(同5.6%増)も底堅い伸びを維持した。また鉱業・燃料は同34.9%増(前月:同29.1%増)と、石油製品を中心に10ヵ月連続の二桁増となった。農産品・加工品は同1.5%増(前月:同9.9%増)と伸び悩んだ。ゴム製品(同13.2%増)とコメ(同21.1%増)が好調に推移したものの、天然ゴム(同17.5%減)と加工食品(同2.8%増)が低調だった。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
ベトナムの18年5月の輸出額は前年同月比11.3%増と、前月の同4.5%増から上昇した。輸出の伸び率は5月こそ二桁増まで上昇したものの、昨年好調に推移していた主力の電気・電子製品がピークアウトするなか、全体として緩やかな伸びにシフトしてきている。一方、輸入額も前年同月比12.1%増(前月:同1.1%減)と大きく上昇した。結果として、貿易収支は前月の8.1億ドルの赤字となり、前月から19.8億ドル悪化した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同21.9%減(前月:同20.3%減)と、2カ月連続で大幅マイナスとなった。一方、コンピュータ・電子部品は同23.2%増(前月:同9.2%増)と大きく上昇した。アパレル関連では、織物・衣類が同22.8%増(前月:同13.3%増)、履物が同11.6%増(前月:同8.7%増)とそれぞれ二桁増を記録した。農産品では、コメ(同57.3%増)とゴム(同56.1%増)、水産物(同9.4%増)が好調だった一方、野菜(同6.7%減)やコーヒー(同2.5%増)が低調に推移するなど、品目毎のバラツキが目立つ。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同8.0%増(前月:同0.3%増)、地場企業が同19.5%増(前月:同15.3%増)と、それぞれ上昇した。
(図表5)ベトナムの貿易収支/(図表6)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの18年5月の輸出額は前年同月比12.7%増と、前月の同29.2%増から低下したものの、11ヵ月連続の二桁増となった。輸出の伸び率は、電気・電子製品の需要拡大や燃料価格上昇の影響で好調に推移している。一方、輸入額も前年同月比9.2%増と、前月の同23.8%増から低下した結果、貿易収支は20.5億ドルの黒字と、前月から13.0億ドル縮小した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同8.9%増(前月:同38.9%増)と低下しつつも、主力の電気・電子製品(同11.4%増)を中心に堅調な伸びを維持した(図表8)。また化学製品が同20.9%増(前月:同28.5%増)が好調に推移する一方、動植物性油脂が同17.3%減(前月:同12.9%増)が大幅に低下した。さらに鉱物性燃料については同30.4%増(前月:同22.1%増)と一段と上昇した。天然ガス(75.5%増)と原油(同59.0%増)と石油製品(同20.0%増)がそれぞれ高水準を記録した。
(図表7)マレーシア貿易収支/(図表8)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの18年5月の輸出額は前年同月比12.5%増(前月:同9.6%増)と上昇した。輸出の伸び率は主力の輸出品であるパーム油やゴム製品が落ち込むなど昨年対比で増勢こそ鈍化したが、足元ではコモディティの価格上昇を背景に持ち直して高い伸びを維持している。一方、輸入額は前年同月比28.1%増(前月:同35.2%増)と高水準を維持しつつも低下した結果、貿易収支は15.2億ドルの赤字と、前月から1.0億ドル縮小した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、全体の9割を占める非石油ガスが同11.6%増(前月:同8.9%増)、石油ガスが同21.5%増(前月:同17.8%増)と、それぞれ上昇した。非石油ガスの内訳を見ると、まず輸出全体の7割を占める製造品が同9.3%増(前月:同7.5%増)と小幅に上昇した。製造品では、主力の動植物性油脂(同15.4%減)とゴム製品(同18.8%減)、機械類(同7.7%減)が落ち込んだものの、電気機械(同4.6%増)や自動車(同5.5%増)が底堅い伸びを維持した。また農産品が同1.8%減(前月:同8.2%増)と低下してマイナスに転じたほか、鉱業品が同28.1%増(前月:同12.9%増)と鉱石、スラグ及び灰を中心に高水準を維持した。
(図表9)インドネシアの貿易収支/(図表10)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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