2018年07月06日

外国人就労に変化の兆しー過去最高、それでも足りない外国人労働者

基礎研REPORT(冊子版)7月号

総合政策研究部 研究員・経済研究部兼任   鈴木 智也

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1―外国人就労の拡大が決まる

政府は人手不足が深刻な5分野(農業・建設・宿泊・介護・造船)を対象として、新たな在留資格を創設する。外国人労働者は3年から5年の技能実習を修了するか、業種ごとに導入される新たな試験に合格することで、さらに最長5年の就労が可能となる。求められる日本語能力は、日常会話を理解できる程度の水準であるため、就労のハードルは大きく下がった。政府は来年4月にも新資格を創設する方針だ。

2―外国人就労の実態

1|外国人就労者数は過去最高
厚生労働省の統計によると、2017年10月末時点における外国人労働者数は127.9万人と過去最高を記録している[図表1]。国別には、中国が全体の29.1%を占めて最大であるが、増加率ではベトナムの前年比+39.7%が最大である。産業別には、外国人労働者の約3割が製造業で働いている状況に変わりはないが、建設業・運輸業・宿泊業などで雇用の増加が著しい。雇用先となる事業所も過去最高となる19.5万事業所を記録している。規模別には、30人未満の小規模な事業所が11.2万事業所と最も多く、増加率で見ても前年比+14.2%と最大であった。また、就労属性が反映される在留資格で見ると、資格外活動や技能実習などで就労が拡大している。
[図表1]外国人労働者の推移(国別)
2|人手不足を補う外国人労働者
日銀短観の雇用面を見ると、人手不足感の強まっている業界は、建設・運輸郵基礎研レター便・宿泊飲食サービスなどである。ここで、外国人就労の拡大が続く産業と人手不足の産業とを比較すると、両者はぴったり一致しているように見える。実際これらの産業では、外国人就労の増加率で1位・2位に来るベトナム・ネパールからの労働者が流入している。厚生労働省の統計によると、ベトナム人労働者の外国人労働者に占める割合は、建設業で42.5%、宿泊業・飲食サービス業で23.5%となっており、これらの産業で主要な労働力となっていることが分かる。また、ネパール人労働者は、外国人労働者全体に占める割合こそ5.4%と少ないものの、その半分近くは卸売業・小売業または宿泊業・飲食サービス業に従事している。なお、両国の労働者は、そのほとんどが単純労働の実質的な受け皿になっていると言われる技能実習または資格外活動の資格で就労している。その割合はベトナム人労働者で86.1%、ネパール人労働者で81.6%と8割を超える。
3|在留資格で決まる就労範囲
外国人労働者が日本で働くためには、一定の条件を満たす必要がある。在留資格別の就労規制を図表2にまとめた。日本には在留資格が28種類あるが、そのうち就労目的で取得される資格(いわゆる就労ビザ)に該当するものは18種類ある。この就労ビザによる就労範囲は在留資格ごとに定められているため、それ以外の仕事に就くことはできない。就労制限を課せられていない在留資格は、永住者や日本人の配偶者などの身分に基づく在留資格だけである。また、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動(外交官等の家事使用人やワーキングホリデー等)にだけ許可を与える特定活動という在留資格もある。留学や家族滞在など5種類の在留資格には、原則就労は認められていない。ただし、資格外活動の許可を受けることによって、アルバイトやパートとして就労することが可能だ。
[図表2]在留資格の分類

3―外国人就労の「領域」を議論

外国人労働者の就労拡大を巡る議論は、高度外国人材とそれ以外の人材とで検討課題が異なる。

1|受入れ体制構築の具体化を
高度外国人材については、国内への流入が国際的に見て少ないことが課題である。2010年時点の総人口に占める外国生まれの高度人材(大学教育修了程度)の割合は、他の先進国が10%を越えるのに対して日本は1.0%に過ぎず、国際的に見ても極めて低い[図表3]。
スイスのビジネススクール国際経営開発研究所が発表した世界人材ランキングでは、世界の高度人材が魅力的と感じる国別ランキングにおいて、日本は63カ国中51位と驚くほど低い位置にあった[図表4]
また、高度外国人材の卵である留学生に関しては、日本で就職したいという彼らの要望に十分応えることができていない状況だ。

在留資格で見た日本の高度外国人材*1は様々な取り組みの結果、直近5年間で17.7倍*2と大きく増加している。しかし、その水準についてはまだ満足できる状況にはない。高度外国人材をさらに誘致していくためには、これまでの施策を強化することは勿論のこと、社会全体で彼らを受け入れる体制を整えていく必要がある。国民全体の意思形成を促し、具体的な取り組みへと昇華させることが求められている。

2|外国人就労の門戸開放を
高度外国人材以外の人材については、基本的に就労が認められていない。しかし、既に人手不足状態にある産業や中小零細企業、それらに依存する地域などでは、もはや外国人材抜きに経済活動を維持していくことは困難となっている。現実が外国人労働者を前提としているにも関わらず、この領域における就労拡大を巡る議論は進んで来なかった。今回の骨太の方針で5分野の開放が決まる以前は、介護福祉士の資格を有する高度外国人材に介護分野が開放された程度であった。外国人を必要とする領域は拡大しており、その他の分野においても門戸を開くことを検討していく必要があるだろう。

3|諸刃の剣となる理由
外国人就労の拡大は、人手不足という成長制約を打破するための手段となるだけではなく、異なる文化的背景が新たな発想を生むことで、企業の成長を加速させる原動力ともなる。

経済的な有益性が多くある一方で、一般生活や雇用に与える影響については懸念が根強い。2004年に内閣府が行った外国人労働者の受入れに関する世論調査によると、単純労働者の受入れを認めない理由として、「治安が悪化するおそれがある」との回答は74.1%、「不況時に日本人の失業が増加するなど雇用情勢に悪影響を与える」との回答は40.8%に達する。これらの懸念を解消するためには、多文化共生で一歩先を行く、独仏の経験を学ぶことが有益だろう。なお、外国人労働者への依存の高まりは、日本の経済構造の脆弱化にもつながる可能性がある。帰国が前提となる就労では、日本企業の技術や技能の伝承が危うくなるかもしれない。労働力不足は、他の先進国でも共通の課題であり、国際的な人材獲得競争は激しさを増している。依存度の高い分野で人材流出が生じれば、新たなリスクとして顕在化する可能性もある。

4―おわりに

現在人手不足が深刻化している産業では、労働を資本で代替することが相対的に難しい。今後真価を問われる女性活躍や技術革新などの取り組みは、期待通りの成果を発揮するまでに時間を要するかもしれない。外国人就労の拡大は様々な観点から議論が必要であるが、待ったなしの課題となっている人手不足への対応を疎かにすることもできない。日本経済の持続的な成長を損なわないためにも、コンティンジェンシープランとして外国人就労の拡大を検討し始めておくことは必要だろう。
 
*1高度外国人材は、「高度専門職」(1号・2号)および「特定活動」の在留者と定義している。
*2出展:未来投資会議 構造改革徹底推進会合 第2回資料
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総合政策研究部   研究員・経済研究部兼任

鈴木 智也 (すずき ともや)

研究・専門分野
日本経済・金融

(2018年07月06日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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