2018年07月04日

文在寅政府の医療政策「文在寅ケア」がスタート-財源の安定的な確保こそが成功の近道-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨
 
  • 2018年から、文在寅政府の「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる文在寅ケアが実施された。
     
  • この対策は、文在寅大統領(以下、文大統領)の選挙公約の一つで、国民の医療費負担を減らし、医療に対するセーフティネットを強化することを目的にしている。
     
  • 文在寅ケアの主な内容としては、(1)健康保険が適用されていない3大保険外診療を含めた保険外診療の段階的な保険適用、(2)脆弱階層の自己負担軽減 、低所得層の自己負担上限額の引き下げ、(3)災難的医療費支出に対する支援事業の制度化及び対象者の拡大などが挙げられる。
     
  • 人を中心とする文在寅政府の政策方向は、専門家や医療サービスの供給者中心ではなく、医療サービスを利用する需要者を中心に健康保険のガバナンスを変化させると期待されている。
     
  • 今後予想される早いスピードの高齢化や慢性疾患の増加、そして文在寅ケアによる保障性強化政策などは、健康保険の財政状況を圧迫する要因になる可能性が高い。
     
  • 保障性を高め、医療サービスの質を向上させるためには、財源の多様化による財源の確保が何よりも重要であることを忘れてはならない。

■目次

1――「文在寅ケア」がスタート
2――「文在寅ケア」の主な内容は?
3――財源の安定的な確保こそが成功の近道
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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