2018年04月05日

仙台オフィス市場の現況と見通し(2018年)

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

研究員 竹内 一雅

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3. 仙台オフィス市場のエリア別動向

2017年は全地区で空室率が低下した。2017年12月の空室率は、駅前地区が4.89%(前年比変化幅▲1.47%)、一番町周辺地区5.78%(同▲2.80%)、県庁・市役所周辺地区7.43%(同▲2.87%)、駅東地区8.18%(同▲2.50%)、周辺オフィス地区8.62%(同▲0.69%)となった。(図表-10左図)。

募集賃料は、駅前地区(前年比+1.4%)が上昇する一方で、それ以外の地区はほぼ横ばいで推移し、底打ち感は見られない。駅前地区とそれ以外の地区との格差が拡大している(図表-10右図)。
図表-10 仙台ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)
2017年末時点で最も賃貸可能面積が大きいエリアは、駅前地区(35.3%)で、次いで一番町周辺地区(31.9%)、駅東地区(14.2%)、県庁・市役所周辺地区(13.2%)、周辺オフィス地区(5.4%)となっている(図表-11)。
図表-11 仙台ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2017年)
2017年は駅前地区に野村不動産青葉通ビルが竣工し、賃貸可能面積は0.3万坪増加した。賃貸面積は駅前地区(+0.5万坪)と一番町周辺地区(+0.4万坪)を中心に全地区で増え、計1.3万坪増加した。その結果、空室面積は全地区で減り、計1.0万坪減少した(図表-12)。
図表-12 仙台ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2017年)

4. 仙台オフィス市場における新規供給・人口見通し

4. 仙台オフィス市場における新規供給・人口見通し

2017年は野村不動産青葉通ビルが竣工したが、今後2020年まで大規模ビルの開発計画はない6(図表-13)。

国勢調査によると、仙台市の2015年の生産年齢人口(15~64歳人口)は67.5万人と、2010年から2.9万人の減少となった。国立社会保障・人口問題研究所によれば、2025年までの10年間で生産年齢人口は5.6%減少する見込みである(図表-14)。
図表-13 仙台のオフィスビル新規供給見通し/図表-14 仙台市の年齢3区分別人口の現況と見通し
住民基本台帳人口移動報告によると、2017年の仙台市の転入超過数は+1,724人となった。2011年の東日本大震災後は転入超過数が大幅に増加したが、2012年の+9,284人をピークに減少し、過去4年は緩やかな転入超過にとどまっている(図表-15)。

転入超過数を性別・年齢別に見ると、大学や短大、専門学校への進学などのため、若年層が転入超過となっているが、若年層以外では転出超となっている年齢層も多い(図表-16)。
図表-15 主要都市の転入超過数/図表-16 仙台市の男女年齢別転入超過数(2017年、日本人)
 
6 その他の開発計画として、時期は未定だが、仙台駅東口開発計画(業務棟)などがある。

5. 仙台オフィス市場の賃料見通し

5. 仙台オフィス市場の賃料見通し

仙台における今後のオフィス供給や人口流入、経済予測などに基づくオフィス需給の見通しから、2024年までの仙台のオフィス賃料を予測した7

仙台のオフィス賃料は、オフィス需要が底堅く推移することが見込まれるため、当面、上昇が続くと予想される。標準シナリオによると、オフィス賃料は、2020年のピークまで2017年下期比+10.7%の上昇となる見込みだ。その後、賃料は下落に転じ、2024年には2017年下期比+1.6%まで下落する見込みである。楽観シナリオでは、2021年の賃料のピークまでの上昇率は同+19.7%、2024年の賃料水準は同+11.4%となった。また悲観シナリオでは、2019年の賃料のピークまでの上昇率は+2.3%、2024年の賃料水準は同▲10.5%となった(図表-17)。

仙台オフィス市場は、今後も大規模ビルの新規供給はなく、需給改善を背景に賃料は当面上昇する見込みである。2017年下期からピークまで+10.7%の賃料上昇が見込まれ、福岡(+10.9%)や大阪(+10.4%)と並んで、主要都市の中でも高い伸びが期待される。仙台のオフィス市況はこれまで足踏みを続けていたが、今後、改善が本格化することが予想される。
図表-17 仙台オフィス賃料見通し
 
7 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2017~2027年度)」(2017.10.13)、斎藤太郎「2017~2019年度経済見通し-17年7-9月期GDP2次速報後改定」(2017.12.8)などを基に設定。
 
 

(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部

佐久間 誠 (さくま まこと)

竹内 一雅

(2018年04月05日「不動産投資レポート」)

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