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- 中国の公的医療保険制度について(2018)-老いる中国、14億人の医療保険制度はどうなっているのか。
2018年01月15日
2|保険料負担
都市・農村住民基本医療保険の保険料は、地方政府がそれぞれ年齢等に基準に応じて決定している。被保険者は1年間に1回、決められた期間中に年額の保険料を納付する。また、市・区の財政から一定額の補助が拠出される。保険料と財政補助は、都市・農村住民への給付を目的とした基金(都市農村住民基本医療保険基金)に積み立てられ、都市職工基本医療保険の基金とは分離されている。
大病医療保険の保険料は、地方政府と民間保険会社が定め、都市・農村住民基本医療保険基金から一定額を転用して給付される。都市職工基本医療保険とは異なり、保険料は別途徴収していない。
北京市の場合、保険料は年齢によって設定されている。2018年の年間保険料は学生・児童、高齢者が180元、非就労者(労働年齢内)は300元となっている。また、市の財政からは1人あたり485元、区の財政からは945元が拠出され、保険料と合わせて基金に積み立てられる(図表7)。
保険料は労働年齢内の対象者は高くなっており、高齢者や学生児童は相対的に低く設定されている。都市職工基本医療保険では、所得に応じて保険料を課しているため、所得の格差を是正する再分配機能の役割は一定程度果たされている。しかし、都市・農村住民基本医療保険では、年齢に応じて一律の保険料となっており、必ずしも同様の機能を果たしてはいない。
都市・農村住民基本医療保険の保険料は、地方政府がそれぞれ年齢等に基準に応じて決定している。被保険者は1年間に1回、決められた期間中に年額の保険料を納付する。また、市・区の財政から一定額の補助が拠出される。保険料と財政補助は、都市・農村住民への給付を目的とした基金(都市農村住民基本医療保険基金)に積み立てられ、都市職工基本医療保険の基金とは分離されている。
大病医療保険の保険料は、地方政府と民間保険会社が定め、都市・農村住民基本医療保険基金から一定額を転用して給付される。都市職工基本医療保険とは異なり、保険料は別途徴収していない。
北京市の場合、保険料は年齢によって設定されている。2018年の年間保険料は学生・児童、高齢者が180元、非就労者(労働年齢内)は300元となっている。また、市の財政からは1人あたり485元、区の財政からは945元が拠出され、保険料と合わせて基金に積み立てられる(図表7)。
保険料は労働年齢内の対象者は高くなっており、高齢者や学生児童は相対的に低く設定されている。都市職工基本医療保険では、所得に応じて保険料を課しているため、所得の格差を是正する再分配機能の役割は一定程度果たされている。しかし、都市・農村住民基本医療保険では、年齢に応じて一律の保険料となっており、必ずしも同様の機能を果たしてはいない。
大病医療保険については、保険料としての徴収はしていない。北京市では、基金の積立金から一定額が転用されている。2017年までは、都市住民基本医療保険基金から当年の保険料徴収基準の5%分、新型農村合作医療保険基金から残高の5%分が転用され、給付に充てられている。
3|入院・通院給付
給付は、都市職工基本医療保険と同様、入院、通院(一般外来、特殊疾病、慢性病)を対象としている。
自己負担割合は受診した医療機関の規模やランクなどに基づいて各地域が設定している。なお、都市職工基本医療保険に見られるような、医療専用の個人口座は設けられていない。
北京市の入院給付をみると、まず、受診した医療機関のランク1~3級病院に応じて、免責額300元、800元、1,300元を支払う必要がある(図表8)。この免責額を超えてから20万元までが給付対象となる。自己負担割合は、3級病院に入院した場合、医療費1,300元超から20万元の部分については25%となっている。病院ランクが下がる毎に自己負担割合は22%、20%と軽減されている。自己負担割合は、都市職工基本医療保険とは異なり、給付限度額まで一律で、総じて高く設定されている。
通院(一般外来)給付は、入院給付と同様、免責額が設定されている。受診病院が1級病院の場合は100元、2級・3級病院の場合は550元である。通院給付はこの免責額を超えてから適用され、3,000元を限度額に、1級病院の場合は45%、2級・3級病院の場合は50%が自己負担となっている(図表9)。都市職工基本医療保険とは異なり、受診病院のランク毎に免責額を設定し、自己負担割合もそれに応じて設定している。
給付は、都市職工基本医療保険と同様、入院、通院(一般外来、特殊疾病、慢性病)を対象としている。
自己負担割合は受診した医療機関の規模やランクなどに基づいて各地域が設定している。なお、都市職工基本医療保険に見られるような、医療専用の個人口座は設けられていない。
北京市の入院給付をみると、まず、受診した医療機関のランク1~3級病院に応じて、免責額300元、800元、1,300元を支払う必要がある(図表8)。この免責額を超えてから20万元までが給付対象となる。自己負担割合は、3級病院に入院した場合、医療費1,300元超から20万元の部分については25%となっている。病院ランクが下がる毎に自己負担割合は22%、20%と軽減されている。自己負担割合は、都市職工基本医療保険とは異なり、給付限度額まで一律で、総じて高く設定されている。
通院(一般外来)給付は、入院給付と同様、免責額が設定されている。受診病院が1級病院の場合は100元、2級・3級病院の場合は550元である。通院給付はこの免責額を超えてから適用され、3,000元を限度額に、1級病院の場合は45%、2級・3級病院の場合は50%が自己負担となっている(図表9)。都市職工基本医療保険とは異なり、受診病院のランク毎に免責額を設定し、自己負担割合もそれに応じて設定している。
また、特殊疾病の通院治療の対象は都市職工基本医療保険と同様の7種を指定している。これらの治療は入院の自己負担割合が適用されるが、特殊疾病の給付を受けるには申請が必要である。
受診機関は予め3ヵ所の病院と1ヵ所の社区衛生サービスセンターを指定し、その医療機関で受診する。A類病院、漢方専門病院、専門病院については、指定をしなくても利用が可能である。特に、高齢者と非就労者(労働年齢内)の通院(一般外来)については、まず社区衛生サービスセンター(または1級以下の医療機関)で受診するよう定められている。初診でそれ以外の規模の大きい病院で受診した場合、保険給付の対象外としている(救急を除く)。
なお、2015年の平均入院費を地域別でみると、北京市は首位の20,149元であった。これは全国平均である8,268元の2.4倍と高い。また、平均入院費は、同年の北京市の在職者の平均月給(7,086元)の2.8ヶ月分にあたり、一旦入院となった場合、その負担は重いといえるであろう。
受診機関は予め3ヵ所の病院と1ヵ所の社区衛生サービスセンターを指定し、その医療機関で受診する。A類病院、漢方専門病院、専門病院については、指定をしなくても利用が可能である。特に、高齢者と非就労者(労働年齢内)の通院(一般外来)については、まず社区衛生サービスセンター(または1級以下の医療機関)で受診するよう定められている。初診でそれ以外の規模の大きい病院で受診した場合、保険給付の対象外としている(救急を除く)。
なお、2015年の平均入院費を地域別でみると、北京市は首位の20,149元であった。これは全国平均である8,268元の2.4倍と高い。また、平均入院費は、同年の北京市の在職者の平均月給(7,086元)の2.8ヶ月分にあたり、一旦入院となった場合、その負担は重いといえるであろう。
4――2つの医療保険制度間の受給格差-北京市で肺がんの手術をした場合の例
上掲のとおり、中国においては、本人の戸籍、就業の有無によって加入する制度が異なり、受診可能な医療機関、自己負担割合、給付限度額も異なる。つまり、被保険者は、同一の医療機関、同一の疾病で、同一の診療を受けたとしても、最終的な自己負担額は異なることになる。
例えば、北京市で、肺がんの手術で2級病院に入院した場合の自己負担額を算出してみる。かかった医療費は、2015年の同疾患の入院時の平均医療費である16,723元(約28万円)とする6。北京市の入院給付に基づくと、都市の就労者の場合、自己負担額の合計は3,305元となり、かかった医療費に対する自己負担割合は19.8%となる(図表10)。一方、非就労者・農村住民の場合、自己負担額の合計は4,303元となり、自己負担割合は25.7%となる。
かかった医療費に対する自己負担割合は相対的に高くないが、北京市の都市職工基本医療保険の場合、自己負担額は北京市平均月給の46.6%にあたり、退院後の継続的な通院治療等も考えると、実際にはより多くの負担を想定する必要がある。
また、就労収入の少ない非就労者・農村住民の自己負担額及び負担割合は、就労収入のある都市の就労者よりも高くなっている。非就労者・農村住民の場合、医療費が高額となった場合、1年分の可処分所得の相当額までを自己負担すればそれ以上の医療費の給付限度額は設けられていないという救済措置がある。しかし、農村住民にとっては、そもそも1年分の可処分所得という負担額が高額であるのに加えて、更に自己負担も発生するとなると、その負担の重さから、更なる治療には二の足を踏む可能性は高いであろう。
例えば、北京市で、肺がんの手術で2級病院に入院した場合の自己負担額を算出してみる。かかった医療費は、2015年の同疾患の入院時の平均医療費である16,723元(約28万円)とする6。北京市の入院給付に基づくと、都市の就労者の場合、自己負担額の合計は3,305元となり、かかった医療費に対する自己負担割合は19.8%となる(図表10)。一方、非就労者・農村住民の場合、自己負担額の合計は4,303元となり、自己負担割合は25.7%となる。
かかった医療費に対する自己負担割合は相対的に高くないが、北京市の都市職工基本医療保険の場合、自己負担額は北京市平均月給の46.6%にあたり、退院後の継続的な通院治療等も考えると、実際にはより多くの負担を想定する必要がある。
また、就労収入の少ない非就労者・農村住民の自己負担額及び負担割合は、就労収入のある都市の就労者よりも高くなっている。非就労者・農村住民の場合、医療費が高額となった場合、1年分の可処分所得の相当額までを自己負担すればそれ以上の医療費の給付限度額は設けられていないという救済措置がある。しかし、農村住民にとっては、そもそも1年分の可処分所得という負担額が高額であるのに加えて、更に自己負担も発生するとなると、その負担の重さから、更なる治療には二の足を踏む可能性は高いであろう。
6 出典は中国衛生・計画生育統計年鑑(2016)、 1元=16.8円で換算
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019年度・2020年度・2023年度)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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【中国の公的医療保険制度について(2018)-老いる中国、14億人の医療保険制度はどうなっているのか。】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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