2017年09月12日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(9月号)~輸出はレバラン休暇に伴う下振れから再上昇

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

ベトナムの17年7月の輸出額は前年同月比19.0%増と、前月の同20.5%増から小幅に低下したものの、6ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は昨年後半から主力の電気・電子製品を中心に勢いを取り戻して以降、政府目標(17年は+6~7%)を上回る伸びが続いている。一方、輸入額も前年同月比20.8%増(前月:同21.8%増)と小幅に低下した結果、貿易収支は2.7億ドルの黒字となり、前月から5.5億ドル増加した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同14.6%増(前月:同21.3%増)と低下したものの、4カ月連続の二桁増を記録した(図表10)。電話・部品の好調はサムスン電子の新型スマホの発売開始(米国は4月、日本は6月)の影響と見られ、伸び率は徐々に落ち着いていくものと見られる。またコンピュータ・電子部品も同33.1%増(前月:同42.0%増)と高水準が続き、14カ月連続の二桁増となった。アパレル関連では織物・衣類が同7.1%増(前月:同6.0%増)、履物が同12.7%増(前月:同13.2%増)となり、総じて堅調な伸びを維持している。農産品ではコーヒー(同10.4%減)が落ち込む一方、好天に恵まれてコメ(同98.0%増)や野菜(同79.2%増)、ゴム(同39.9%増)などが好調に推移している。

輸出を資本別に見ると、地場企業が同21.0%増(前月:同12.7%増)と上昇した一方、全体の7割を占める外資系企業が同18.2%増(前月:同24.0%増)と低下した。
(図表9)ベトナムの貿易収支/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの17年7月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比6.9%増(前月:同6.4%増)と3ヵ月連続で上昇した。輸出は医薬品の不振が続いているものの、主力の半導体と石油化学製品を中心に概ね増加傾向にある。なお、総輸出額は前年同月比10.8%増(前月:同5.4%増)、総輸入額も同14.2%増(前月:同4.6%増)と、それぞれ大きく上昇した結果、貿易収支は43.2億ドルの黒字と、前月から0.5億ドル黒字が拡大した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同14.6%増と、前月の同3.1%増から大きく上昇した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同0.2%増)とダイオード・トランジスタ(同5.4%減)が低迷、PC(同2.7%増)も伸び悩んだものの、IC(同29.2%増)とPC部品(同8.4%増)が大きく上昇した。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学製品は同10.9%減と、前月の同7.3%増からマイナス幅が拡大した。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品が同36.3%増(前月:同11.2%増)と一段と上昇した一方、医薬品は同54.3%減(前月:同35.6%減)と下げ幅が拡大した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの17年7月の輸出額は前年同月比10.4%増と、前月の同5.8%増から上昇した。輸出は海外経済の回復を受けて電子製品を中心に概ね二桁増で推移しているが、先行きはベース効果が剥落して輸出の勢いは弱まりつつある。一方、輸入額は前年同月比3.2%減(前月:同1.3%減)と二ヵ月連続のマイナスとなった。結果、貿易収支は16.5億ドルの赤字と、前月から3.5億ドル赤字が縮小した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同11.8%増と、前月の同4.9%増から上昇した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、計測制御機器(同7.5%減)と遠距離通信機器(同47.8%減)が落ち込んだものの、半導体デバイス(同13.4%増)と電子データ処理機(同13.3%増)、家電製品(同73.5%増)が高水準となった。その他9品目については機械・輸送用機器(同63.8%増)や電子機械・部品(60.2%増)、金属部品(同21.2%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同15.4%増)、その他鉱業製品(同6.8%増)が増加した一方、ココナッツオイル(同7.8%減)や木工製品・家具(同4.9%減)、その他製造品(同3.8%減)が減少するなど、総じて増加した品目が多かった。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年09月12日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(9月号)~輸出はレバラン休暇に伴う下振れから再上昇】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(9月号)~輸出はレバラン休暇に伴う下振れから再上昇のレポート Topへ