2017年03月01日

法人企業統計16年10-12月期~企業収益の急回復を受けて設備投資も持ち直し、10-12月期の成長率は上方修正へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.経常利益が大幅改善

財務省が3月1日に公表した法人企業統計によると、16年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比16.9%と2四半期連続の増加となり、7-9月期の同11.5%から伸びを高めた。非製造業が前年比12.5%(7-9月期:同24.5%)と2四半期連続で増加したことに加え、製造業が前年比25.4%(7-9月期:同▲12.2%)と6四半期ぶりの増加となった。
経常利益の推移 経常利益は2四半期連続で二桁の伸びとなったが、7-9月期の経常利益は、純粋持株会社が子会社からの受取配当の急増という特殊要因で前年比858.9%となったことにより大きく押し上げられていた。純粋持株会社を除いた経常利益は7-9月期が前年比▲5.3%(非製造業は同▲1.4%)、10-12月期が同14.8%(非製造業は同9.0%)となる。10-12月期の経常利益は実態としては表面的な数字以上に急回復したとみることができる。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)
製造業は世界経済の回復を背景とした輸出数量の持ち直し、円高一巡に伴う輸出価格の低下幅縮小から、売上高が減少(7-9月期:前年比▲3.4%→10-12月期:同▲0.1%)する中、売上高経常利益率が15年10-12月期の6.1%から7.6%へと大きく改善したことが経常利益を押し上げた。変動費の減少が続く中で売上高の減少幅が大きく縮小したため、変動費要因が利益率改善の主因となった。

非製造業は売上高が前年比2.8%(7-9月期:同▲0.7%)と5四半期ぶりの増加となったことに加え、売上高経常利益率が5.5%と15年10-12月期の5.1%から改善した。原油価格の上昇などに伴い変動費は前年比2.4%と7四半期ぶりに増加したが、売上高の伸びがそれを上回ったため、非製造業も変動費要因が利益率の改善要因となった。

2.経常利益(季節調整値)は過去最高水準に

経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業では、はん用機械(前年比▲30.0%)は4四半期連続の減益となったが、情報通信機械(同123.2%)が前年から倍増したほか、鉄鋼(同35.5%)、生産用機械(同22.8%)、業務用機械(同18.1%)、電気機械(同16.9%)などが軒並み二桁増益となった。

非製造業では、情報通信(前年比▲3.3%)、電気(同▲25.9%)は減益となったが、サービス(前年比19.2%)が3四半期連続の増益と好調を維持したほか、インバウンド需要の持ち直しなどから卸売・小売が前年比24.1%と4四半期ぶりの増益となった。
経常利益(季節調整値)の推移 季節調整済の経常利益は前期比5.2%(7-9月期:同9.4%)と3四半期連続で増加した。非製造業は前期比0.1%(7-9月期:同9.4%)とほぼ横ばいだったが、製造業(7-9月期:前期比9.4%→10-12月期:同17.0%)の伸びが大きく加速した。

この結果、16年10-12月期の経常利益(季節調整値)は19.8兆円となり、過去最高だった15年4-6月期の19.3兆円を上回った。製造業はリーマン・ショック前のピーク時(07年4-6月期)の水準をやや下回っているが、非製造業は16年7-9月期に続き過去最高水準を更新した。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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