2017年02月24日

中国経済見通し~成長率は6.5%前後へ減速と予想、リスクは“住宅バブル崩壊” と“トランプシフト”

三尾 幸吉郎

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1.経済成長とインフレ

(図表-1)中国の実質成長率(前年同期比) 中国経済の成長率は上向いた。1月20日に中国国家統計局が公表した10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比6.8%増となり、2年ぶりに前四半期の伸びを上回った(図表-1)。内訳を見ると、第1次産業は前年同期比2.9%増、第2次産業は同6.1%増、第3次産業は同8.3%増だった。第3次産業が引き続き高い伸びを示し経済を牽引するとともに、ここもと経済成長の足枷となっていた第2次産業も、1-3月期の伸び(同5.9%増)をボトムに4-6月期は同6.3%増、7-9月期は同6.1%増、10-12月期は同6.1%増と、低水準ながらも底割れを回避した。なお、2016年の実質成長率は前年比6.7%増となり、政府目標の“6.5-7.0%”の範囲内に納まった。
(図表-2)中国の実質成長率(前期比年率、概算) また、同時に公表された前期比の伸びを見ると、10-12月期は前期比1.7%増と年率換算すれば7%前後の伸びを示した。4-6月期の同1.9%増(年率換算7.8%前後)をピークに2四半期連続の伸び鈍化となったものの、1-3月期の同1.3%増(改定後、年率換算5.3%前後)を上回る伸びを維持している(図表-2)。
(図表-3)インフレ率の推移 一方、インフレ率は原油高、人民元安、住宅価格上昇などを受けてやや上昇した。2016年の消費者物価は前年比2.0%上昇と2015年の同1.4%上昇を上回った。また、工業生産者出荷価格は同1.4%低下と2015年の同5.2%低下から下落ペースが鈍化した。これを受けて名目成長率が実質成長率を下回る“名実逆転”は解消、2016年の名目成長率は前年同期比8.0%増と、実質成長率(同6.7%増)を1.3ポイント上回った。過剰生産能力を背景としたデフレ懸念は依然として根強いものの、供給面では鉄鋼の大型合併など構造改革に対する期待が高まっており、需要面でもインフラ整備の加速に伴い需要が増えたことから、需給バランスが改善してデフレ圧力は緩和した。なお、工業生産者出荷価格は消費者物価の先行指標でもあることから、今後は消費者物価へ波及していく可能性がある(図表-3)。国産スマホの値上げが相次ぐなど、既にその兆候は見え始めている。
 

2.需要面の動き

2.需要面の動き

1|消費
消費は比較的高い伸びを維持している。消費の代表指標である小売売上高の動きを見ると、2016年は前年比10.4%増と、2015年の同10.7%増を0.3ポイント下回った。また、インフレ率が上昇したことを受けて、価格要因を除いた実質では前年比9.6%増と2015年の同10.6%増を1.0ポイント下回っており、名目で見た以上に伸びが鈍化している(図表-4)。内訳を見ると、自動車は小型車減税(排気量1.6L以下)の効果などで前年比10.1%増と伸びを回復したものの、その他については概ね伸びが鈍化しており、特に衣類等、家電類、家具類の伸び鈍化が目立つ(図表-5)。
(図表-4)小売売上高の推移/(図表-5)業種別に見た小売売上高(限額以上企業)の動き
2017年以降の個人消費は堅調ながらもやや減速すると予想している。(1)中間所得層の増加で高品質品や文化関連サービスに対するニーズが増えており、(2)雇用情勢の安定(図表-6)、(3)企業利益の底打ちも、プラス要因として働くと見られる。但し、(1)賃金上昇率の鈍化(図表-7)、(2)インフレによる所得の目減り、(3)小型車減税縮小に伴う自動車販売の反動減、(4)規制強化に伴う住宅販売の鈍化といったマイナス要因も目立つため、全体としては堅調ながらも小幅な減速と予想する。
(図表-6)失業率と求人倍率/(図表-7)経済成長率と一人あたりの可処分所得の伸び
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三尾 幸吉郎

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