2016年12月26日

【11月米個人所得・消費支出】所得は予想外に軟調な結果。消費も予想を下回る。

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、消費ともに予想を下回る

12月22日、米商務省の経済分析局(BEA)は11月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.0%(前月改定値:+0.5%)となり、+0.6%から下方修正された前月から伸びが大幅に鈍化、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%も下回った。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.2%(前月改定値:+0.4%)と、+0.3%から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想(+0.3%)も下回った(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.1%(前月値:+0.1%)とこちらは前月、市場予想(+0.1%)に一致した(図表5)。貯蓄率 は5.5%(前月:5.7%)と前月から低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.0%(前月改定値:+0.3%)と前月、市場予想(+0.2%)を下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.0%(前月値:+0.1%)と、こちらも前月、市場予想(+0.1%)を下回った(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.4%(前月:+1.4%)、コア指数が+1.6%(前月改定値:+1.8%)となり、総合指数は前月に一致したものの、コア指数は前月を下回った(図表7)。

2.結果の評価:個人所得の伸び鈍化を反映し、消費も軟調

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 名目個人消費(前月比)は、9月の+0.7%から2ヵ月連続で伸びが鈍化した(図表1)。もっとも、所得対比でみると前月が所得の伸びに比べて消費が抑制されていた一方、11月は貯蓄率が15年3月(5.3%)に次ぐ水準に低下するなど、所得の伸びに比べて消費が活発であったことが分かる。

実際、11月は、選挙後に株価が上昇する中で、消費者センチメントは軒並み改善していた。このため、11月の消費が冴えなかったのは、所得の伸び鈍化が原因であった可能性が高いとみられる。労働市場では雇用者数など回復基調が持続しているため、今後所得の回復に伴い消費の伸びは再び加速しよう。

物価(前年同月比)は、エネルギー価格下落に伴う下押し圧力は解消されているものの、コア指数が16年3月以来の低下となったほか、総合指数も小数第2位までみると+1.37%と前月(+1.44%)と前月から低下しており、物価上昇圧力の高まりはみられない。これは、消費者物価の総合指数が、11月に+1.7%(前月:+1.6%)と前月から加速していたのと対照的な動きとなった。

3.所得動向:賃金・給与が16年2月以来の減少

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比▲0.2%(前月:+0.5%)と、16年2月(▲0.6%)以来のマイナスとなった(図表2)。11月の雇用統計でも、時間当たり賃金(前月比)が15年12月以来のマイナスとなっていたことから、マイナス自体は雇用統計と整合的な動きと言える。もっとも、雇用増加が持続する中では、賃金の落ち込みは一時的であろう。一方、利息・配当収入は+0.2%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化したものの、5ヵ月連続のプラスとなった。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が▲0.0%(前月:+0.5%)と、16年2月以来のマイナスに転じたほか、価格変動の影響を除いた実質ベースも前月比▲0.1%(前月:+0.2)と、こちらも15年3月以来のマイナスとなった(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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