2016年10月31日

2016年7-9月期の実質GDP~前期比0.3%(年率1.1%)を予測

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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7-9月期は年率1.1%を予測~外需主導のプラス成長

2016年7-9月期の実質GDPは、前期比0.3%(前期比年率1.1%)と3四半期連続のプラス成長になったと推計される。

輸出が前期比2.0%の高い伸びとなり、外需寄与度が前期比0.4%(年率1.5%)と成長率を大きく押し上げたことがプラス成長の主因である。

一方、住宅投資は前期比2.0%と2四半期連続で増加したものの、天候不順による下押しなどから民間消費が前期比▲0.0%と小幅ながら3四半期ぶりに減少し、企業収益の悪化を背景に設備投資が前期比▲0.1%と3四半期連続で減少した。また、期待されていた公的固定資本形成が工事進捗の遅れから前期比▲0.1%の減少となり、在庫調整の進展から民間在庫が前期比・寄与度▲0.2%のマイナスとなったため、国内需要は前期比▲0.1%と3四半期ぶりに減少した。

実質GDP成長率への寄与度は、国内需要が▲0.1%(うち民需▲0.1%、公需0.0%)、外需が0.4%と予測する。
 
名目GDPは前期比0.1%(前期比年率0.3%)と3四半期連続の増加となるが、実質の伸びは下回るだろう。GDPデフレーターは前年比0.3%(4-6月期:同0.7%)、前期比▲0.2%(4-6月期:同0.2%)と予測する。円高の影響などから国内需要デフレーターが前期比▲0.1%(4-6月期:同▲0.3%)と5四半期連続で低下したことに加え、輸出デフレーターの低下幅(前期比▲2.3%)が輸入デフレーターの低下幅(前期比▲2.0%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し下げた。
 
なお、11/14に内閣府から2016年7-9月期のGDP速報値が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2016年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率0.7%から同0.8%へと若干上方修正されると予測している。
 
7-9月期は外需主導のプラス成長となったが、海外経済の減速が続く中、2016年初からの大幅な円高による下押し圧力が残るため、10-12月期以降は輸出が景気の牽引役となることは期待できない。一方、7-9月期の民間消費は前期比ほぼ横ばいにとどまったが、台風の相次ぐ上陸など天候要因で押し下げられた面もある。雇用所得環境の改善を背景とした消費の回復基調は維持されており、10-12月期は民間消費が増加に転じ、内需中心のプラス成長になると予想する。
 

主な需要項目の動向

主な需要項目の動向

・民間消費~天候要因で弱めの動き
 
民間消費は前期比▲0.0%と小幅ながら3四半期ぶりの減少を予測する。

雇用所得環境は改善を続けているが、8月、9月と台風上陸が相次ぎ外出が控えられたこと、9月の高温によって秋冬物衣料が不振だったことなど、7-9月期は天候要因が消費を大きく下押しした。7-9月期の消費関連指標を確認すると、「商業動態統計」の小売業販売額指数(実質)は前期比1.1%、「鉱工業指数」の消費財出荷指数は前期比0.6%、「家計調査」の消費水準指数(除く住居等)は前期比▲0.5%となっており、総じてみればほぼ横ばい圏の動きとなった。

7-9月期の個人消費は期待外れに終わったが、消費を取り巻く環境は改善している。名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数の高い伸びが雇用者所得の増加に大きく寄与している。さらに、年明け以降の円高、原油安の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者所得を押し上げている。実質雇用者所得(一人当たり実質賃金×雇用者数)は2016年入り後、前年比で2%台の高い伸びを続けている。労働市場改善の恩恵が受けられない年金生活者を中心とした節約志向の強さが消費を下押しする構図は続くものの、10-12月期の民間消費は実質雇用者所得の高い伸びを背景に増加に転じることが予想される。
消費関連指標の推移/実質雇用者所得は高い伸び
・住宅投資~2四半期連続の増加も、着工戸数はピークアウト
新設住宅着工戸数の推移 住宅投資は前期比2.0%と2四半期連続の増加を予測する。

新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2015年10-12月期の86.8万戸から2016年1-3月期が94.7万戸、4-6月期が100.5万戸と大幅な増加が続いたが、7-9月期は98.2万戸と3四半期ぶりに減少した。日銀のマイナス金利導入後の住宅ローン金利の大幅低下が引き続き下支えしているものの、2017年4月に予定されていた消費税率引き上げの延期が決まり、税率引き上げを見越した駆け込み需要が剥落したことが住宅着工を下押ししているとみられる。

GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで計上され着工の動きがやや遅れて反映されるため、10-12月期は3四半期ぶりの減少となることが予想される。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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