2016年10月11日

欧州大手保険グループの2016年上期末のSCR比率の状況等について-SCR比率及び感応度の推移等-

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3|Generali
Generaliも、2016年上期末は市場環境の影響で、SCR比率を大きく低下させている。

なお、Generaliは完全な内部モデルの使用に向けて、引き続き監督当局と交渉中であり、ここでの数値はあくまでも、会社の経済ソルベンシー比率によるものである。

感応度については、UFR(終局フォワードレート)を変化させた場合の影響についても開示しており、「UFRを100bps引き下げた場合でもSCR比率は9ptsの低下に留まる」ということで、影響が一定程度の水準に収まることが示されている。
SCR比率推移の要因/感応度の推移
一般勘定資産の9割弱を占める固定利付資産のうちの債券のデュレーションは、生保について、2016年上期末には8.6年とさらに長期化している。
生命保険資産の債券のデュレーション
また、低金利環境への対応として、「ドイツでの最低保証付商品の販売を停止し、資産と負債のマッチングを進めている」としている。この結果、ユーロ圏での2016年上期の生命保険新契約の保証利率は0.44%とさらに低下している。さらに、引き続き、無保証等の低資本集約保証商品のウェイトを高めることで、資本負担の軽減を進めてきている。
ユーロ圏での生命保険新契約保証利率
4|Prudential
Prudentialも、劣後債務の発行により、自己資本の積み上げを行っている。なお、Prudentialは、ポンド建の業績表示ということもあり、上記3社に比べて、為替による影響を比較的大きく受けている。

また、上記3社に比べて、2014年末から2016年上期末に向けてのSCR比率の低下率が大きなものとなっている。これについて、会社は、欧州所在の会社とは異なり、「アジアの子会社のリスクマージンのボラティリティを軽減するための経過措置が使用できない」ことが大きな要因であると説明している。
SCR比率推移の要因
また、ソルベンシーII資本の対象から控除されている資本リソースとして、(1)不動産の株主持分、(2)有配当資本、(3)米国で認容されている資本、(4)アジアの認識中止分、(5)米国の分散化ベネフィット があり、これら全てを考慮した場合、SCR比率は最高215%になる、としている。

感応度については、着実に低下させてきている。なお、表以外に、「英国年金の15%の格下げが行われた場合には、SCR比率に▲5ptsの影響がある」としている。
感応度の推移
2016年上半期においては、資産と負債のデュレーション・マッチングを改善させ、長寿再保険によるリスク軽減を図ったことにより、ソルベンシーの向上を図っている、としている。

5|Aegon
2016年上期末においては、経営行動により、7ptsのSCR比率の改善が見られたとしているが、具体的には、「(1)オランダにおける、ボラティリティ調整のより完全な適用、(2)追加的な金利ヘッジ、(3)将来の事業費水準に関連したより低いリスクマージン」と説明している。また、金利低下による市場の影響は、一部、オランダにおけるスプレッドのタイトニングで相殺されたとしている。「その他」には、ティアリングの制限、分散化及びFXの影響が含まれている。
SCR比率推移の要因
感応度は、2015年末と2016年上期末で、(1)オランダにおけるALMとヘッジプログラムの変更、(2)英国の年金事業売却、(3)さらなる金利の低下、により、かなり大きく変化している。

AegonもUFRを変化させた場合の影響を開示しているが、2015年末では100bpsの引き下げで、6pts(オランダは18pts)の影響であったものが、2016年上期末には50bpsの引き下げで、7pts(オランダは19pts)と、影響度が大きく増加している。会社はこれを上半期における金利の急激な減少によるものと説明している。
感応度の推移
上半期の業績については、英国の年金事業からの撤退による損失もあるが、預託金事業での強固な実績や収益性にフォーカスした生命保険販売で、収益を挙げている、としている。

ただし、ROE(資本収益率)については、中東欧を除く各地域で、2015年に比べて低下している。
生命保険事業のROE(資本収益率)の状況
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中村 亮一

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