2016年09月20日

ドイツの生命保険会社の状況(1)-BaFinの2015年Annual Reportより(低金利環境下における状況、内部モデルの適用等)-

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3|保険監督における内部モデル
なお、今回のAnnual Reportでは、「保険監督における内部モデル」というテーマで、内部モデルにフォーカスを当てて、詳細な説明を行っている。

この中で、(1)内部モデルの承認に向けては、保険業界と監督当局の間で、かなりの準備期間が費やされてきたこと、(2)引き続き、いくつかの課題も抱えて、欧州レベルでの調和の深化を含めて、今後とも継続的な取組みが不可欠であること、等が示されている。

こうした記述により、ソルベンシーIIにおいては、内部モデルが極めて重要な位置付けを有していることを改めて表明した形になっている。

ここでは、概ね以下の内容が記述されている。

(1)内部モデルの適用会社
「2016年の初めから、5つの保険グループ、7つの生命保険会社、4つの健康保険会社、16の損害保険会社、5つの再保険会社が、SCRを算出するために内部モデルを使用する承認を受けた。」と記述されている。執筆時期の差異等から、1|での記述を上回る会社数となっているものと思われるが、今後ともこれらの会社数が増加していくことが想定されている。

(2)内部モデル事前申請段階での取り組み
ソルベンシーIIの当初の実施スケジュール想定である2012年に向けて、2008年にモデル申請のレビューと承認のための準備をスタートさせたが、その後、長期保証措置の導入を含む2度の延期により、内部モデルの調整等も行われて、2015年中の上記に述べられた会社の承認に至っている、としている。

このように、実際の内部モデルの承認に至るまでに、かなりの長期間が費やされた形になったが、これらは、この間の保険業界と監督当局の間の建設的な対話等を通じて、両者に対して恩恵を与えるものになったと評価している。

(3)内部モデルに関しての主要な問題
事前の申請段階及び準備段階を通じて、BaFinと会社の間の建設的な対話を支配した問題として、以下の3点が挙げられており、これらの問題が今後とも重要になってくると認識されている。

1.確率論的キャッシュフロー予測モデル(その位置付けの重要性と監督当局による検証の必要性)
2.国債からのリスク(スプレッドとデフォールトのリスクを考慮する必要性)
3.モデル検証(その重要性と検証プロセスの改善の必要性)

(4)次のステップ
2016年中には、現在保留中の申請プロセスの最終化に加えて、最初のモデルの拡張や変更のための申請を想定している。

(5)欧州レベルでのさらなる調和
2|や上記の(3)2で述べた「一般的な市場リスクモデルのキャリブレーションあるいは、特に国債からのリスクを考慮することについてのベンチマーク調査の実施」について触れられている。

さらには、監督当局が、使用されるモデルの性能をテストし、異常を検出することを可能にするためのEIOPAによる「内部モデル継続的妥当性指標(Internal Model On-Going Appropriateness Indicators:IMOGAPI)」の開発に協力していくことを述べている。なお、この成果は2017年以降が想定されている。

(6)BaFinによる継続的な監督
内部モデルの潜在的な乱用を防止するために、BaFinは独自の調査を行い、定期的にチェックを行っていくとしている。

保険監督における内部モデル

ソルベンシーIIが最終的に2016年1月に実施された時に、保険業界や監督当局は10年以上の準備期間を注いでいた。新たな欧州のソルベンシー制度の重要な要素は、保険会社が今や自らのソルベンシー資本要件(SCR)をリスクに基づいて計算しなければならない、ということにある。そうするために、標準的な式または監督当局の事前承認を必要とする(部分)内部モデルを使用することができる。

内部モデルは、企業に対して、個々のリスク・プロファイルを、標準式よりもより適当な手法で、リスクに関する内部的観点とそれらがどのように管理されているのかに従って、モデル化する機会を提供している。さらには、保険会社は、SCRを計算するために、会社自身のリスク管理プロセスの重要な要素であるリスク測定を使用することができる。

事前申請段階
ソルベンシーIIは、すでに2012年に実施されることを想定して、BaFinは、関係する保険グループと一緒に、2008年にモデル申請のレビューと承認のための準備をスタートさせた。アイデアは、BaFinが、保険会社が内部モデルのためのソルベンシーⅡ要件を満たしているかどうかを評価することができるようにするために、それぞれの内部モデルに関してできるだけ多くの知識を獲得すべく、早期に開始することにあった。会社もまた、これらの準備から恩恵を受けた。彼らは、非公式ではあるが、その内部モデルについてのフィードバックや要件の実施に関しての進捗状況についての情報を与えられることになった。

ソルベンシーIIの実施は、その後、フレームワークに対する基本的な追加-特に長期保証を有するビジネスモデルの取扱に関連して-を行うために、2度延期された。会社は、変更された要件を反映するために、いくつかの機会において、その内部モデルを調整することで対応した。

2015年には、全てが最終的に設定された。4月初め以降、BaFinは、内部モデルを使用するためのいくつかの申請を受け入れ、承認した。2016年の開始以来、5つの再保険会社、16の損害保険会社、4つの健康保険会社と7つの生命保険会社が、BaFinの監督の下でSCRを計算するために内部モデルを使用することが許可されている。また、5つのドイツの保険グループは、グループのソルベンシーを計算するために内部モデルを使用する。 BaFinは、2016年にさらなる申請に関する決定を行う。

主要な問題
以下の3つの問題は、実際の申請段階だけでなく、準備中において、会社とBaFinの間の建設的な対話を支配した。

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中村 亮一

研究・専門分野

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