2016年07月19日

日韓比較(15):非正規雇用-その5 韓国は多く、日本は少ない?非正規雇用の定義に見る、数字のワナ

生活研究部 准主任研究員   金 明中

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■要旨
  • 日本の非正規雇用労働者の代表的な基準になっている労働力調査の雇用形態による非正規雇用労働者の割合は80年代から上昇し始め、現在までも上昇傾向にある。
     
  • 日本では労働力調査以外にもいくつかの調査で非正規雇用労働者の規模を把握しているものの、調査により定義は異なる。他の調査では非正規雇用労働者大きく「労働時間」、「勤め先での呼称」、「従業上の地位(労働契約期間)」という三つの定義により区分している。
     
  • 韓国では、IMF経済危機以降非正規雇用労働者の概念や範囲を巡って議論が続いたため、労使政委員会は2002年7月「非正規特別委員会」を開き、雇用形態による分類基準に合意した。これによって非正規雇用労働者の範囲には、雇用の持続性を基準にした限時的労働者(contingent worker)や期間制労働者、労働時間を基準にしたパートタイマー、そして労働提供方法を基準にした非典型労働者(派遣、用役、特殊雇用職、在宅労働者等)が含まれることになった。
     
  • しかしながら「非正規特別委員会」の基準によって非正規雇用労働者に対する概念が統一されることになったものの、それ以降も政府や労働組合、そして研究者が発表する非正規雇用労働者の割合は相変わらず大きな差をみせている。
     
  • 労働組合の場合、公的社会保険制度が適用されず、勤務場所が頻繁に変わっている労働者を非正規雇用労働者として分類していることも、韓国において非正規雇用労働者の割合に差が発生している一つの理由である。
     
  • 日韓政府がそれぞれ実施している労働市場の柔軟化政策と非正規労働者に対する処遇改善対策が今後どのような成果を産むのか、また、非正規労働者の規模にはどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目したい。

■目次

1――はじめに
2――日本における非正規雇用労働者の定義
3――韓国における非正規雇用労働者の定義
4――おわりに

1――はじめに

1――はじめに

非正規雇用労働者の実態を国際比較する際に重要なのが非正規雇用労働者を区分する定義であるものの、その定義は国によって異なっており、必ずしも収斂していない。さらに一国の間でもその定義が纏まっていないケースが多く、日本と韓国の場合も複数の定義が存在する。
 

2――日本における非正規雇用労働者の定義

2――日本における非正規雇用労働者の定義

まず、日本の労働力調査では、非正規雇用労働者を「労働契約期間、以下、従業上の地位」と「勤め先での呼称、以下、雇用形態」により区分している。従業上の地位による分類では雇用者のうち、1か月以上1年以内の期間を定めて雇われている者である「臨時雇」と日々又は1か月未満の契約で雇われている者である「日雇」が非正規職として扱われている。一方、雇用形態による分類では、会社,団体等の役員を除く雇用者について勤め先での呼称により、「正規の職員・従業員」、「パ-ト」、「アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員」、「嘱託」、「その他」の7つに区分しており、このうち「正規の職員・従業員」以外の6区分をまとめて「非正規の職員・従業員」として表章している。

しかしながら、2つの定義による正規雇用労働者の割合は大きな差を見せている。2015年現在従業上の地位(労働契約期間)による非正規雇用労働者の割合は7.6%に過ぎず、雇用形態(勤め先での呼称)による非正規雇用労働者の割合37.5%を大きく下回っている。図表1を見ると、従事上の地位による非正規雇用労働者の割合は80年代から90年代半ばまでには大きな変化がなかったものの、その後14%弱まで上昇し、2013年から大きく低下していることが分かる。その理由は2013年1月から労働力調査の調査事項等が変更されたからである。つまり、労働力調査では「従業上の地位」について「常雇(無期の契約)」と「常雇(有期の契約)」の区分を新たに設けており、今までは「臨時雇」と回答していた者(同じ勤務先で1年以上働いていた臨時雇)が、新たな調査票では「常雇(有期の契約)」に回答したことにより、「臨時雇」の数は減り、「常雇」の数は増えることになったのである1
図表1 日本の労働力調査における二つの定義による非正規雇用労働者の推移/図表 2 日本における調査別非正規雇用労働者の概要と割合
一方、日本の非正規雇用労働者の代表的な基準になっている雇用形態による非正規雇用労働者の割合は80年代から上昇し始め、現在までも上昇傾向にある。神林(2013)は、このように非正規雇用労働者の増加の時系列的趨勢が異なる点に注目し、「非正規雇用労働者の定義の違いは、単なる統計的計測の問題や講学上の文などではなく、労働市場において非正規雇用労働者が担う役割と密接にかかわる重要な論点だと考える必要がある。」と主張している。

日本では労働力調査以外にもいくつかの調査で非正規雇用労働者の規模を把握しているものの、調査により定義は異なる。図表2は、日本における調査別非正規雇用労働者の定義と割合を整理したものであり、大きく「労働時間」、「勤め先での呼称」、「従業上の地位(労働契約期間)」という三つの定義により区分されていることが分かる。
 
 
1 労働力調査によると2013年における「臨時雇」と「日雇」の数は前年に比べてそれぞれ263万人と25万人が減少している。したがって、これまでの結果とは表章項目が同じであっても単純に比較することはできない。
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生活研究部   准主任研究員

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

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