2016年07月12日

企業物価指数(2016年6月)~円高で大幅な下落が続く公算

経済研究部 研究員   岡 圭佑

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1.国内企業物価は大幅な下落が続く

7月12日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2016年6月の国内企業物価は前年比▲4.2%(5月:同▲4.2%)と事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲4.2%)通りの結果となった。前月比では▲0.1%(5月:同0.1%)と2ヵ月ぶりにマイナスとなった。
国内企業物価指数の要因分解 国内企業物価注1の前年比寄与度をみると、為替・海外市況連動型(5月:前年比▲1.91%→6月:同▲1.82%)、電力・都市ガス・水道(5月:前年比▲1.13%→6月:同▲0.96%)のマイナス寄与が縮小する一方で、機械類(5月:前年比▲0.22%→6月:同▲0.25%)、鉄鋼・建材関連(5月:前年比▲0.42%→6月:同▲0.50%)、素材(その他)(5月:前年比▲0.87%→6月:同▲0.88%)のマイナス寄与が拡大したため、下げ幅は前月と変わらなかった。

為替・海外市況連動型は、原油価格の上昇を反映して下落幅を幾分縮小している。電力・都市ガス・水道は、既往の原油安を反映した電力・都市ガスの燃料調整などから大幅な下落を続けている。機械類は、電子部品・デバイスや電気機器を中心に弱含んでいる。鉄鋼・建材関連は、スクラップ類の大幅な下落などから、下げ幅を拡大している。素材(その他)は、化学製品やプラスチック製品の下落を反映して下落幅を幾分拡大している。
 
注1  1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
   2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
   3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
   4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属 
   5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物

2.輸入物価は円高で下落幅を拡大

6月の輸入物価は円ベース(5月:前年比▲20.1%→6月:同▲23.2%)の下落幅が前月から拡大し、契約通貨ベース(5月:前年比▲13.2%→6月:同▲12.9%)は縮小した。円高の影響で円ベースでの下落幅は契約ベースを上回る状況が続いている。

輸入物価(円ベース)注2の前年比寄与度をみると、石油・石炭・液化天然ガス(5月:前年比▲10.7%→6月:同▲11.6%)、金属・同製品(5月:前年比▲2.7%→6月:同▲3.0%)、食料品・飼料(5月:前年比▲1.1%→6月:同▲1.3%)、化学製品(5月:前年比▲0.9%→6月:同▲1.2%)、機械器具(5月:前年比▲3.2%→6月:同▲4.0%)、その他(5月:前年比▲1.5%→6月:同▲2.1%)のいずれもマイナス寄与が拡大したため、輸入物価は前月から下落幅を大きく拡大した。

足もとの原油価格(ドバイ、6月月中平均)は前年比▲25.1%と昨年8月(同▲53%)をピークに下落幅が緩やかに縮小しているものの、石油・石炭・液化天然ガス(円ベース)は2015年9月以降、前年比▲40%程度の大幅なマイナスを続けている。これは、これまでの大幅な原油安の影響が6ヵ月程度遅れて液化天然ガスに波及していることに加え、足もとの円高による下押し圧力が拡大しているためと考えられる。一方、石油製品は原油価格の持ち直しを反映しマイナス寄与は縮小傾向にある。先行きは原油価格の上昇が石油製品、液化天然ガスの下落を抑制することから、石油・石炭・天然ガスの下落幅は引き続き緩やかに縮小することが見込まれる。
輸入物価指数変化率の寄与度分解/輸入物価(石油・石炭・天然ガス)の推移
金属・同製品は、国際商品市況の持ち直しを反映して、契約通貨ベースでの下落幅が縮小(5月:前年比▲18.5%→6月:同▲18.0%)する一方で、円高の進行を主因に円ベースでの下落幅は拡大(5月:前年比▲25.8%→6月:同▲29.0%)している。食料品・飼料(円ベース)は、農水産加工食品(5月:前年比▲11.9%→6月:同▲16.5%)や畜産物(5月:前年比▲8.5%→6月:同▲13.5%)などが前月から下落幅を大きく拡大している。化学製品(円ベース)は、有機化学工業製品(5月:前年比▲12.2%→6月:同16.6%)やプラスチック(5月:前年比▲21.5%→6月:同▲26.7%)などが大幅な下落を続けている。
輸入物価指数の変動要因 輸入物価(円ベース)の変化率を為替要因と契約通貨ベース要因に分解してみると、為替レートは年初来の急激な円高によって輸入物価の下押し要因となっている。英国のEU離脱決定などを受けて、6月の為替レート(月中平均)は1ドル=105.4円(5月:109.2円)と前年に比べ15%程度(5月:10%程度)の円高水準となった。しかし、7月に入ってから為替レート(月中平均)は1ドル=101.6円と、前年に比べ18%程度の円高水準にある。原油価格など国際商品市況の持ち直しによって輸入物価の下落圧力は緩和されているものの、英国のEU離脱決定をきっかけに一段と円高が進行したため、輸入物価の下落圧力は今後さらに高まることが予想される。
 
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
   2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品

3.最終財は下落基調を強める

6月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲29.0%(5 月:同▲26.8%)、中間材が前年比▲8.4%(5月:同▲8.1%)、最終財が前年比▲3.7%(5月:同▲3.1%)となった。 

既往の原油安や円高による物価押し下げ圧力が輸入物価を経由して、川下の最終財へ伝播している。最終財は価格転嫁の進捗などから堅調に推移していたが、2015年11月に下落に転じた後、下落幅を拡大している。原油価格(ドバイ)は1月の1バレル=20ドル台半ばから、足もとでは40ドル台前半まで持ち直しているが、既往の原油安の影響が遅れて反映されることに加え円高の影響が顕在化するため、最終財は当面下落を続ける可能性が高い。このため、最終財のうち消費者物価と関連性の高い消費財は、先行きもマイナス圏の推移が続くとみている。
需要段階別指数/最終財と消費者物価

4.国内企業物価は先行きも大幅な下落が続く公算 

輸入物価と国内企業物価の時差相関 上述のとおり、原油安と円高の影響は輸入物価を経由して国内企業物価に大きく影響している。足もとでは原油価格が持ち直しているものの、国内企業物価は当面大幅なマイナスを続ける可能性が高い。

輸入物価の変動は品目毎に異なるペースで国内企業物価に波及し、均してみると4ヵ月程度で連動性が最も高くなる。年初の原油安の影響が秋頃にかけガス代や電気代に波及するほか、円高進行による輸入物価の下落圧力が今後高まることから、前年比でみた国内企業物価は当面大幅なマイナスを続ける可能性が高い。
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経済研究部   研究員

岡 圭佑 (おか けいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2016年07月12日「経済・金融フラッシュ」)

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