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2016年07月11日
ギリシャのユーロ離脱シナリオを用意して開催される12日EU首脳会議
ギリシャとユーロ圏の双方が望んでいなかったデフォルトと事実上のユーロ離脱という最悪のシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。
15年7月7日のユーロサミットでは、ギリシャ政府に新たな支援の見返りに実行する改革案を9日までに提出するよう求め、12日にEU首脳会議を召集することを決めた。前日11日のユーログループの結果が芳しくなければ、12日の首脳会議は、ギリシャに改革案での合意か、ユーロ離脱かの選択を迫ることも考えられる。
チプラス首相が、ユーロ離脱を回避すべく、首脳会議で支援への暫定合意に漕ぎ着けようとすれば、「有利な条件」を期待してNOに票を投じた有権者を裏切ることになる。
首脳会議で「離脱」、「除名」を決議することはないが、支援要請を却下すれば、ECBのELA打ち切りにつながる。ギリシャ政府は、政府借用証書(IOU)などを発行するなどの対処を迫られ、事実上のユーロ離脱の様相を呈することになろう。その後の社会の混乱は避けられず、やはり有権者は裏切られたと感じるのではないか。
その後のギリシャには、法定通貨のユーロからドラクマへの切り替えという選択と、信頼に足る改革案を提示し直し、ユーロ参加国としての権利を回復する選択が残されるかもしれない。
ギリシャ情勢は、支援協議の決裂(6月26日)、銀行の一時休業、預金引き出し制限など資本規制導入(6月29日~)、国民投票の改革案否決多数(7月5日)と、支援合意への期待を裏切る展開が続いた。
ギリシャとユーロ圏の双方が望んでいなかったデフォルトと事実上のユーロ離脱という最悪のシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。
( ギリシャ政府は7日の段階では新たな支援の見返りに実行する改革案を提示せず )
7月5日のギリシャの国民投票が、支援機関の改革の最終案への反対が61.31%と賛成の38.69%を大きく上回ったことを受けて、7日にユーロ圏財務大臣会合(ユーログループ)、ユーロ圏首脳会議(ユーロサミット)が開催された。7日のユーログループには、辞任したバルファキス氏の後任となったチャカロトス財務大臣が参加したが、支援の見返りに実行する改革案が提示されなかったため、具体的な協議は行われなかった。
7日にユーログループに続いて開催されたユーロサミットでは、ギリシャ政府に遅くとも9日までに改革案を提示するよう求め、12日にユーロ未導入のEU加盟国も参加するEU28カ国での首脳会議を開催することで合意した(図表1)。
( 8日の支援要請の段階では国民投票結果を受けた譲歩を迫る姿勢は見られず )
ギリシャ政府は、8日に欧州安定メカニズム(ESM)に正式に期間3年の支援を要請、9日に包括的改革案の詳細を提出する方針を示した。
英フィナンシャル・タイムス紙がホームページ上に掲載したギリシャ政府の支援要請書によれば、緊急に協議を要請する理由として、金融システムの脆弱性、流動性の不足、債務の返済期限、国内の支払い遅延、IMFへの延滞の解消を挙げている。税制改正と年金改革は、来週早々にも実行に移すとし、IMFの延滞の早期解消や、今月20日に迫るECBが保有する35億ユーロの国債の償還資金などの確保のため「つなぎ融資」を求める意図が伺われる。
債務減免についても、「広範な議論の中で、公的債務が長期的に持続可能なものとなるような潜在的な方法について機会を歓迎する」というごく控えめな表現が盛り込まれているだけだ。
少なくともギリシャ政府の支援要請書を見る限り、国民投票の大差のNOを後ろ盾に、支援機関側に譲歩を迫ろうという強硬姿勢は感じられない。
しかしながら、9日に提出される包括的改革案を見なければ、支援合意に至るかどうか判断はできない。
15年7月7日のユーロサミットでは、ギリシャ政府に新たな支援の見返りに実行する改革案を9日までに提出するよう求め、12日にEU首脳会議を召集することを決めた。前日11日のユーログループの結果が芳しくなければ、12日の首脳会議は、ギリシャに改革案での合意か、ユーロ離脱かの選択を迫ることも考えられる。
チプラス首相が、ユーロ離脱を回避すべく、首脳会議で支援への暫定合意に漕ぎ着けようとすれば、「有利な条件」を期待してNOに票を投じた有権者を裏切ることになる。
首脳会議で「離脱」、「除名」を決議することはないが、支援要請を却下すれば、ECBのELA打ち切りにつながる。ギリシャ政府は、政府借用証書(IOU)などを発行するなどの対処を迫られ、事実上のユーロ離脱の様相を呈することになろう。その後の社会の混乱は避けられず、やはり有権者は裏切られたと感じるのではないか。
その後のギリシャには、法定通貨のユーロからドラクマへの切り替えという選択と、信頼に足る改革案を提示し直し、ユーロ参加国としての権利を回復する選択が残されるかもしれない。
ギリシャ情勢は、支援協議の決裂(6月26日)、銀行の一時休業、預金引き出し制限など資本規制導入(6月29日~)、国民投票の改革案否決多数(7月5日)と、支援合意への期待を裏切る展開が続いた。
ギリシャとユーロ圏の双方が望んでいなかったデフォルトと事実上のユーロ離脱という最悪のシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。
( ギリシャ政府は7日の段階では新たな支援の見返りに実行する改革案を提示せず )
7月5日のギリシャの国民投票が、支援機関の改革の最終案への反対が61.31%と賛成の38.69%を大きく上回ったことを受けて、7日にユーロ圏財務大臣会合(ユーログループ)、ユーロ圏首脳会議(ユーロサミット)が開催された。7日のユーログループには、辞任したバルファキス氏の後任となったチャカロトス財務大臣が参加したが、支援の見返りに実行する改革案が提示されなかったため、具体的な協議は行われなかった。
7日にユーログループに続いて開催されたユーロサミットでは、ギリシャ政府に遅くとも9日までに改革案を提示するよう求め、12日にユーロ未導入のEU加盟国も参加するEU28カ国での首脳会議を開催することで合意した(図表1)。
( 8日の支援要請の段階では国民投票結果を受けた譲歩を迫る姿勢は見られず )
ギリシャ政府は、8日に欧州安定メカニズム(ESM)に正式に期間3年の支援を要請、9日に包括的改革案の詳細を提出する方針を示した。
英フィナンシャル・タイムス紙がホームページ上に掲載したギリシャ政府の支援要請書によれば、緊急に協議を要請する理由として、金融システムの脆弱性、流動性の不足、債務の返済期限、国内の支払い遅延、IMFへの延滞の解消を挙げている。税制改正と年金改革は、来週早々にも実行に移すとし、IMFの延滞の早期解消や、今月20日に迫るECBが保有する35億ユーロの国債の償還資金などの確保のため「つなぎ融資」を求める意図が伺われる。
債務減免についても、「広範な議論の中で、公的債務が長期的に持続可能なものとなるような潜在的な方法について機会を歓迎する」というごく控えめな表現が盛り込まれているだけだ。
少なくともギリシャ政府の支援要請書を見る限り、国民投票の大差のNOを後ろ盾に、支援機関側に譲歩を迫ろうという強硬姿勢は感じられない。
しかしながら、9日に提出される包括的改革案を見なければ、支援合意に至るかどうか判断はできない。
( 12日のEU首脳会議で、ギリシャ政府に改革案での合意か、ユーロ離脱かの選択を迫る可能性 )
本稿執筆時点(日本時間9日13時)では、9日に提出されたギリシャの改革案を検討した上で、首脳会議前日の11日にユーログループが、ESM支援の対象とするかどうかを協議する予定となっている。
7日にはEU法を立案する機関である欧州委員会のユンケル委員長は「ギリシャ離脱の詳細なシナリオを準備している」ことを明かしている。ユーログループの結果が芳しくなければ、12日のEU首脳会議は、ギリシャ政府に「改革案での合意」か「ユーロ離脱」かの選択を迫ることも考えられる。
本稿執筆時点(日本時間9日13時)では、9日に提出されたギリシャの改革案を検討した上で、首脳会議前日の11日にユーログループが、ESM支援の対象とするかどうかを協議する予定となっている。
7日にはEU法を立案する機関である欧州委員会のユンケル委員長は「ギリシャ離脱の詳細なシナリオを準備している」ことを明かしている。ユーログループの結果が芳しくなければ、12日のEU首脳会議は、ギリシャ政府に「改革案での合意」か「ユーロ離脱」かの選択を迫ることも考えられる。
03-3512-1832
経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
公式SNSアカウント
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