2016年04月28日

2016年1-3月期の実質GDP~前期比0.1%(年率0.6%)を予測

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1-3月期は年率0.6%を予測~うるう年要因でかろうじてプラス成長

2016年1-3月期の実質GDPは、前期比0.1%(前期比年率0.6%)と2四半期ぶりのプラス成長になったと推計される。
設備投資(前期比▲1.4%)、住宅投資(前期比▲0.7%)、公的固定資本形成(前期比▲1.1%)がいずれも減少し、民間在庫(前期比・寄与度▲0.1%)も成長率の押し下げ要因となったが、民間消費が10-12月期の大幅減の反動やうるう年による日数増の影響から前期比0.3%の増加となったため、国内需要は前期比▲0.1%と小幅なマイナスで踏みとどまった。こうした中、国内需要低迷を背景とした輸入の弱さもあり外需が3四半期連続で成長率の押し上げ要因となったため、小幅ながらプラス成長を確保したとみられる。
実質GDP成長率への寄与度は、国内需要が▲0.1%(うち民需▲0.1%、公需0.0%)、外需が0.2%と予測する。
 
名目GDPは前期比0.5%(前期比年率1.9%)と2四半期ぶりの増加となり、実質の伸びを上回るだろう。GDPデフレーターは前年比1.2%(10-12月期:同1.5%)、前期比0.3%(10-12月期:同0.0%)と予測する。国内需要デフレーターは前期比▲0.2%の低下となったが、輸入デフレーターの低下幅(前期比▲6.7%)が輸出デフレーターの低下幅(同▲3.6%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
 
なお、5/18に内閣府から2016年1-3月期のGDP速報値が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2015年7-9月期(前期比年率1.4%→同1.2%)、10-12月期(前期比年率▲1.1%→同▲1.5%)ともに若干下方修正されると予測している。
この結果、2015年度の実質成長率は0.6%、名目成長率は2.1%になると見込まれる。
 
GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われていないため、2016年1-3月期の成長率は日数増によりかさ上げされている可能性がある。当研究所では1-3月期の成長率はうるう年の影響で前期比年率1%程度押し上げられた(民間消費は前期比0.4%程度)と試算しており、この影響を除けば小幅なマイナス成長と考えられる。
2015年度の日本経済を振り返ると、実質経済成長率は0.6%と2年ぶりのプラス成長が見込まれるが、年度内成長率(2015年1-3月期から2016年1-3月期までの伸び率)は▲0.3%と小幅なマイナスになると予想する。このことは日本経済が1年にわたって足踏み状態が続いたことを示している。
 

主な需要項目の動向

主な需要項目の動向

・民間消費~うるう年要因で2四半期ぶりの増加
 
民間消費は前期比0.3%と2四半期ぶりの増加を予測する。名目賃金の伸び悩みが続く中、雇用者数の伸びが加速し実質雇用者所得の伸びは大きく高まっているが、年明け以降の株価下落などを受けて消費者心理が大きく悪化したことが消費抑制の一因になったと考えられる。
足もとの消費関連指標の動きを確認すると、2016年1-3月期の小売業販売額指数(実質)は前期比▲1.8%、鉱工業指数の消費財出荷指数は前期比▲1.9%の大幅低下、家計調査の消費水準指数(除く住居等)は前期比▲0.2%の小幅低下となった。消費の内訳をみると、自動車販売台数は軽自動車を中心に大幅な減少が続いているが、外食産業売上高は客単価の上昇を主因として堅調な動きとなっている。
1-3月期の消費関連指標は総じて低調だったが、前述したようにGDP統計の民間消費はうるう年調整が行われていないため、2四半期ぶりの増加となることが予想される。ただし、個人消費は実態としては消費税率引き上げ直後に急速に落ち込んだ後、底這い圏の動きが続いていると判断される。
実質雇用者所得の伸びが高まる/消費関連指標の推移/新車販売台数(含む軽乗用車)の推移/外食産業売上高の推移
新設住宅着工戸数の推移 ・住宅投資~一部で駆け込み需要が顕在化

住宅投資は前期比▲0.7%と2四半期連続の減少を予測する。
新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2015年4-6月期の95.6万戸から7-9月期が91.7万戸、10-12月期が86.8万戸と減少傾向が続いていたが、2016年1-3月期は94.7万戸と水準を大きく切り上げた。
2017年4月に予定されている消費税率の再引き上げは延期されるとの観測が高まっているが、一部では増税を控えた駆け込み需要がすでに顕在化しているものと考えられる。GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで計上され着工の動きがやや遅れて反映されるため、2016年4-6月期は3四半期ぶりの増加となることが予想される。
設備投資関連指標の推移 ・民間設備投資~3四半期ぶりの減少

民間設備投資は前期比▲1.4%と3四半期ぶりの減少を予測する。
設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2015年10-12月期の前期比▲1.3%の後、2016年1-3月期は同▲2.2%と4四半期連続で減少した。一方、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2015年10-12月期に前期比2.6%と2四半期ぶりの増加となった後、2016年1、2月の平均は10-12月期を6.6%上回っている。
GDP統計の設備投資は2015年7-9月期の前期比0.7%から10-12月期には同1.5%へと伸びを高めた。高水準の企業収益を背景とした設備投資の回復基調は維持されているものの、2015年度後半の企業収益の悪化や年明け以降の円高の進展などを受けて、2016年1-3月期の設備投資は減少に転じた可能性が高い。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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