2016年03月09日

景気ウォッチャー調査(16年2月)~1年3ヵ月ぶりに景気判断引き下げ

経済研究部 研究員   岡 圭佑

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景気ウォッチャー調査 景気の現状判断(方向性)/景気の先行き判断(方向性)

1.景気の現状判断DI:1年3ヵ月ぶりに景気判断引き下げ

3月9日に内閣府から公表された16年2月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DIは44.6と、前月を▲2.0ポイント下回り2ヵ月連続の悪化となった。参考系列として公表されている季節調整値は44.6と前月から▲3.9ポイント低下し、2ヵ月連続で好不況の分かれ目である50を下回った。この結果を受け、景気の基調判断は「緩やかな回復基調が続いている」から「弱さがみられる」へと1年3ヵ月ぶりに引き下げられた。
景況感は2015年夏場から年末にかけて足踏みが続いていたが、年明け以降悪化基調を強めている。2月調査では春節におけるインバウンド需要が景況感の改善要因となるものの、中国の景気減速懸念に端を発した株安・円高などによって景況感が一段と押し下げられた格好だ。株安・円高が消費を抑制したことが家計動向関連を押し下げたほか、企業動向関連では製造業のマインドを悪化させる要因となった。
コメントをみると、中国の景気減速関連や株安関連のものをはじめ、景況感の下押し材料が多く存在している(最終頁の図参照)。これまで原油安は消費の増加、企業収益の改善要因とされていたが、年明け以降の原油価格の急落を受けマイナス材料として認識され始めている。一方、景況感の悪化要因となっていた物価上昇への懸念は円高や原油安で和らぎつつあり、一服感がみられていたインバウンド需要は、春節の訪日客増に伴い景況感の押し上げに寄与したようだ。

2.株安・円高で企業や消費者のマインドは一段と悪化

現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差▲2.4ポイント)、企業動向関連(同▲0.1ポイント)、雇用関連(同▲3.2ポイント)といずれも2ヵ月連続で悪化した。家計動向関連では、飲食関連(前月差3.7ポイント)の悪化幅が最も大きく、次いでサービス関連(同▲2.6ポイント)、小売関連(同▲2.3ポイント)、住宅関連(同▲1.8ポイント)と続いている。
 
景気の現状判断DI/景気の現状判断DI(分野別、原数値)

コメントをみると、飲食関連では「株価低迷が消費者マインドに影響しているのか、来客数が若干減少している」(東北・一般レストラン)や「来客数は前年同期並みである。株価の低迷が、消費者の財布のひもを固くしている」(東海・高級レストラン)といったように、株安による消費の下押しを懸念するコメントが多く寄せられた。

小売関連は「厳しい寒さが続いており、株安の影響もあって客の動きが良くなる材料がない」(近畿・商店街)など株安を懸念するコメントのほか、「株安や円高に伴い、マイナス金利によって景気を回復させようとしているようであるが、逆に消費意欲がマイナスに動き、売上が厳しい商店がほとんどである」(中国・商店街)など、マイナス金利の効果を疑問視する声も多く寄せられた。

インバウンド関連のコメントについては、「大阪の百貨店は、2月は春節によるインバウンドの恩恵で売上は堅調である」(近畿・百貨店)といったように、春節による需要拡大を改善理由に挙げる一方で、「インバウンド客は買回り品に関しては、以前よりもかなり慎重になっており、購入が少なくなっている感がある」(沖縄・一般小売店)など、インバウンド需要に一服感がみられると懸念する声も聞かれた。

そのほか、プレミアム付商品券の駆け込み需要が一巡したこともあり、「プレミアム付商品券が12月末までの期限のため、1月は景気の上滑りが続いていたものの、2月に入ってからは消費の冷え込みが続いている」(東北・一般小売店)など、プレミアム付商品券の効果の反動が出ていることを指摘するコメントが多数寄せられた。

企業動向関連は、製造業(前月差▲0.1ポイント)、非製造業(同▲0.2ポイント)ともに前月から小幅ながら悪化した。コメントをみると、「年初来の株安や円安による影響が富裕層の財布のひもを締めている」(北海道・家具製造業)や「円高、株価の乱高下という今般の状況の中で物流の動きが悪く、特に工作機械など輸出関連の荷動きが悪くなっている」(北陸・輸送業)など、株安・円高を懸念する声が多く寄せられた。日銀が導入したマイナス金利については、「突然のマイナス金利と、消費税率10%への引上げ前の駆け込み需要が重なり、若い世代の顧客の動きが非常に良い」(東北・住宅販売会社)
と前向きな意見が寄せられる一方で、「日銀の金融政策の動向が不透明で、企業の間では不安が増幅している」(近畿・その他非製造業)と、効果を疑問視するコメントがみられるなど評価が分かれた。
 
雇用関連は2ヵ月連続の悪化となり、改善の動きにやや一服感がみられる。「円高基調、原油価格の下落、株価の低迷など、メーカーにとって複数のマイナス要因が一気に訪れた感がある。企業活動の縮小や収益の悪化が懸念されている」(中国・新聞社)など企業収益に陰りが見え、これまで好調を維持してきた雇用情勢にも不透明感が高まっているようだ。

3.先行きは2ヵ月ぶりに悪化、停滞局面が続く

先行き判断DIは48.2(前月差▲1.3ポイント)と2ヵ月ぶりに悪化した。参考系列として公表されている季節調整値は45.7と前月から▲3.7ポイントと大幅な悪化となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連が前月差▲0.3ポイント、企業動向関連が同▲2.4ポイント、雇用関連が同▲4.7ポイントとなった。これまで高水準を維持していた雇用関連(49.7)が節目の50を下回り、雇用情勢の改善基調に陰りもみられる。
景気の先行き判断DI

家計動向関連は、「春は歓送迎会や入学等もあり、陽気も良くなって、人通りや商店街の人の動きも大分出てくるため、景気は良くなる」(南関東・一般レストラン)いったように、春商戦への期待を寄せる声も多く寄せられたほか、「消費税率引き上げ前の駆け込み需要が本格化してくるので良くなる」(住宅販売会社・中国)など駆け込み需要による消費押し上げを期待するコメントが見受けられた。一方、「マイナス金利や株安、年金問題など、先行きの不透明な報道が多すぎることで、消費者の倹約志向がますます高くなっており、当分は現状のままで推移する」(北海道・スーパー)など、消費の先行きを不安視するコメントも多くみられた。また、「春闘での賃上げも期待できず、個人消費が持ち直すような要素が見当たらない」(東海・百貨店)など、春闘の賃上げが消費回復につながると期待する声は多くない。

企業動向関連は、「世界情勢が不安定であり、特にこれからは中国経済の落ち込みが不安である」(近畿・電気機械器具製造業)とのコメントのように海外景気へ警戒感が高まっているほか、金融市場の不安定な動きもあり「円高、株安で景気の先行きが悪くなりそうだ」(九州・建設業)といった声が多く寄せられた。

雇用関連は、「世界経済の景気後退のため、売上や利益が減少すると同時に、経済活動も縮小に向かう。結果として、採用活動も伸び悩むのではないかと予想される」(近畿・民間職業紹介機関)や「消費税率が再度引上げの予定であり、消費は落ち込み、景気は下向きで推移すると考えられる」(南関東・職業安定所)など、景気の先行き不安から雇用環境が厳しくなるとの懸念も高まっているようだ。

中国経済の動向など海外情勢の不透明感が高まるなか、円高や株安など金融市場の不安定な動きが続いていることや、これまで好調を維持してきたインバウンド需要に一服感が見え始めていることも、景況感を一段と悪化させている。こうした状況が続くようであれば企業や消費者心理のマインドを一段と冷やしかねないだろう。新たな押し上げ材料が不在のなか、景況感は当面停滞局面が続く公算が大きい。


 
各種コメント数の推移 プレミアム付商品券関連/インバウンド関連/中国の景気減速関連/株安関連/物価上昇関連/原油安関連
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経済研究部   研究員

岡 圭佑 (おか けいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2016年03月09日「経済・金融フラッシュ」)

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