2016年02月10日

企業物価指数(2016年1月)~急激な原油安で大幅なマイナス

岡 圭佑

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1.急激な原油安で大幅なマイナス

2月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2016年1月の国内企業物価は前年比▲3.1%(12月:同▲3.5%)と事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.8%)を下回る結果となった。前月比では▲0.9%(12月:同▲0.4%)と前月から下落幅が拡大した。
国内企業物価注1の前月比寄与度をみると、為替・海外市況連動型(前月比▲0.6%)、素材(その他)(同▲0.1%)、鉄鋼・建材関連(同▲0.1%)、電力・都市ガス・水道(同▲0.0%)、機械類(同▲0.0%)、その他(同▲0.1%)といずれも物価下落に寄与した。為替・海外市況連動型は、石油・石炭製品や非鉄金属の下落を反映して、大幅なマイナスを続けている。素材(その他)は、アジア需給の悪化を背景とした化学製品の弱さを反映して、下落幅を拡大している。鉄鋼・建材関連も、アジア需給の悪化に伴うスクラップ類や鉄鋼の下落を主因に、マイナスを続けている。電力・都市ガス・水道は、原油価格の下落を反映した電力・都市ガスの燃料調整から、ペースを鈍化させつつも下落を続けている。その他については、加工食品の上昇一服でプラス幅が幾分縮小している。
国内企業物価変化率の寄与度分解
 
注1 1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
   2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
   3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
   4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属 
   5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物

2.円安の一巡が輸入物価を下押し

1月の輸入物価(円ベース)は前年比▲17.8%(12月:同▲18.5%)と前月から下落幅が縮小した。契約ベースでは前年比▲16.6%(12月:同▲18.2%)と大幅なマイナスが続き、円ベースは▲17.8%(12月:同▲18.5%)と契約ベースでの下落幅を上回っている。
輸入物価(円ベース)注2の前年比寄与度をみてみると、石油・石炭・液化天然ガス(前年比▲12.6%)、金属・同製品(同▲2.5%)、食料品・飼料(同▲0.8%)、化学製品(同▲0.5%)、機械器具(同▲1.0%)、その他(同▲0.3%)といずれも輸入物価の押し下げに寄与した。
石油・石炭・液化天然ガスは、2015年12月以降の急激な原油安を反映して大幅なマイナスが続いている。原油価格(ドバイ、月中平均)は、2015年11月時点で1バレル=42ドル(前年比▲45%)であったが、12月(1バレル=35ドル、前年比▲42%)、1月(1バレル=28ドル、前年比▲40%)と大幅な下落が続いている。また、金属・同製品は需要の弱さから資源価格が低迷している鉄鉱石や非鉄金属を中心に大幅な下落が続いている。
輸入物価は、国際商品市況の悪化を受けて大きな下落圧力を受けているが、足元の円安一巡も輸入物価の下落圧力を高めている。上述のとおり、1月の輸入物価は円ベースで前年比▲17.8%と、契約通貨ベースの下落率(同▲16.6%)を上回った。契約通貨ベース、円ベースの輸入物価を比較すると、2015年に入ってから両者の下落率は大きく乖離していたが、円安の一巡もあり両者の乖離幅は縮小傾向にある。2015年以降のドル円レート(月中平均)の推移をみると、前年比で10~20%程度の上昇率を保っていたが、9月以降は緩やかに伸び率が鈍化傾向にあり1月時点では前年比▲0.1%と円安による物価押し上げ効果はほぼ剥落している。
足元では原油価格の下落に歯止めがかかっておらず、輸入物価を押し上げていた為替レートは逆に輸入物価を押し下げる方向に作用している。足元のドル円レートは、1ドル114円台と前年を下回る水準まで円高が進行している。原油価格(ドバイ)の下落や円高に歯止めがかからないようであれば、今後輸入物価は下落基調を強めるだろう。
輸入物価指数変化率の寄与度分解、輸入物価指数と為替レート
 
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
    2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品

3.最終財は下落が続く

1月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲30.6%(12月:同▲32.3%)、中間材が前年比▲5.7%(12月:同▲6.1%)、最終財が前年比▲1.0%(12月:同▲0.6%)となった。  
原油価格の下落を背景に素原材料、中間財がマイナス圏で推移しているが、下落圧力が最終財に徐々に波及している。最終財は価格転嫁の動きが強まったこともあり、2015年2月以降前年比でプラスとなっていたが、原油をはじめとした国際商品市況下落の影響から2016年に入ってから下落に転じている。2016年夏頃にかけて、前年比でみた原油価格の下落幅は緩やかに縮小することを予想しているが、一定のラグを伴って最終財が明確な上昇基調に転じるのはそれ以降となるだろう。最終財のうち、消費財は2016年夏頃にかけてゼロ近傍での推移が続くと予想するが、その後は緩やかな上昇に向かうとみている。
需要段階別指数、消費者物価

4.国内企業物価は下落幅を緩やかに拡大

中国の景気減速などを受けて下落基調を続けている国際商品市況や原油価格は、当面低調な推移が続くだろう。一方、為替については新興国経済の減速懸念を受けてリスク回避姿勢が高まっていることや米利上げ観測の後退などから、円安基調の再開には時間を要するとみている。価格転嫁の動きが一巡していることや原油価格の下落圧力が依然強いことを踏まえれば、国内企業物価は緩やかに下落幅を拡大するだろう。中国の景気減速や米利上げに伴う新興国の景気減速が一層鮮明となれば、需要低迷による国際商品市況の悪化を受け企業物価は下落基調を強める恐れがある。
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(2016年02月10日「経済・金融フラッシュ」)

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