2016年03月07日

【2月米雇用統計】時間当たり賃金は予想外に減少も、雇用者数は予想を大幅に上回り、労働市場の回復は持続

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数は前月から大幅に増加、市場予想も上回る

3月4日、米国労働省(BLS)は2月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は前月対比で+24.2万人の増加1(前月改定値:+17.2万人)と、前月から伸びが大幅に加速、市場予想の+19.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も大幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.9%(前月:4.9%、市場予想:4.9%)と、こちらは前月、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.9%(前月:62.7%、市場予想:62.8%)と前月から上昇、市場予想も上回った(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:時間当たり賃金の伸びは予想外に鈍化も、労働市場の回復持続を確認

2月の雇用者数は、上方修正された1月からさらに市場予想を上回る増加を示した。この結果、16年に入ってからの月間平均増加数は20.7万人増と、昨年の22.9万人増や15年10-12月期の28.2万人増よりは低下したものの、20万人超の順調なペースで拡大していることが確認された。
また、失業率は前月と変わらずの4.9%となったものの、これまで回復がもたついていた労働参加率が3ヵ月連続で上昇するなど、改善基調が明確になっており、労働力人口が大幅に増加する中での失業率の横這いは、労働市場の需給タイト化が持続していると評価できる。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比▲0.1%(前月:+0.5%)と、大幅なプラスであった前月から一転、2ヵ月ぶりにマイナスとなったほか、市場予想(+0.2%)も下回った。さらに、前年同月比も+2.2%(前月:+2.5%)と、市場予想の+2.5%を下回り、明確に伸びが鈍化した(図表1)。賃金の伸び鈍化は、ネガティブであり、来月以降の数値を確認する必要はあるものの、雇用者数の増加や労働参加率の改善にみられるように、労働需給のタイト化は持続していることから、一時的な鈍化の可能性が高い。
このようにみると、2月の結果は賃金上昇率こそ期待外れだったものの、それ以外は労働市場の順調な回復持続を示唆する内容であり、最近一部で言及されている米国経済がリセッション入りするとの懸念を払拭するのに十分な結果と言えよう。もっとも、原油価格の下落により物価上昇圧力が後退する中で、賃金上昇圧力に加速がみられていないことも確認されたため、物価面から追加利上げを急ぐ必要はないため、3月のFOMCでは追加利上げが見送られるほか、FRBは今後の追加利上げ時期を慎重に見極めるとみられる。
 

3.事業所調査の詳細:教育サービスが大幅に増加

(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+24.5万人(前月:+15.3万人)となり、前月から大幅に伸びが加速した(図表2)。
サービス部門の中では、教育サービスが前月比+2.8万人(前月:▲2.0万人)と大幅なプラスに転じた。また、人材派遣が▲0.1万人(前月:▲2.2万人)と前月からマイナス幅が減少したこともあり、専門・ビジネスサービスも+2.3万人(前月:+1.5万人)と伸びが加速した。さらに、娯楽・宿泊+4.8万人(前月:+4.5万人)や小売業+5.5万人(前月:+6.2万人)でも順調な雇用増加が持続している。
一方、財生産部門は▲1.5万人(前月:+2.9万人)と、こちらは雇用が減少した。資源関連が▲1.9人(前月:▲0.9万人)と減少が続いているほか、製造業でも▲1.6万人(前月:+2.3万人)と減少に転じており、原油安やドル高が引き続き影響しているとみられる。一方、建設業は+1.9万人(前月:+1.5万人)と、好調な住宅市場を反映して雇用の拡大が続いている。
政府部門は+1.2万人(前月:▲1.0万人)とプラスに転じた。内訳をみると連邦政府が+0.5万人(前月:▲0.4万人)となったほか、州・地方政府が+0.7万人(前月:▲0.6万人)と、いずれもプラスに転じた。

 
前月(1月)と前々月(2月)の雇用増(改定値)は、前月が+17.2万人(改定前:+15.1万人)と+2.1万人上方修正されたほか、前々月も+27.1万人(改定前:+26.2万人)と+0.9万人上方修正された(図表3)。
 
なお、BLSの公表に先立って3月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+21.4万人(前月改定値:+19.3万人、市場予想:+19.0万人)と市場予想、前月改定値を上回った。この結果、ADPと雇用統計は前月から伸びが加速しており、両者は整合的な動きとなった。
 
2月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.35ドル(前月:25.38ドル)となり、前月から▲3セント減少した。また、週当たり労働時間も34.4時間(前月:34.6時間)と、こちらも前月から▲0.2時間減少した。その結果、週当たり賃金は872.04ドル(前月:878.15ドル)と、前月から減少した(図表4)。
 
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働参加率が3ヵ月連続で改善

家計調査のうち、2月の労働力人口は前月対比で+55.5万人(前月:+28.4万人)と、50万人超の大幅な増加となった。これで増加は5ヵ月連続となった。内訳を見ると、失業者数が+2.4万人(前月: ▲12.5万人)増加したほか、就業者数が+53.0万人(前月:+40.9万人)と5ヵ月連続の増加となった。非労働力人口は▲37.4万人(前月:▲8.8万人)と、こちらも減少が顕著であった。
この結果、労働参加率は就業者数の増加が寄与する形で3ヵ月連続の改善となった(図表5)。ここもと、労働力人口の増加基調が明確になってきており、労働参加率の改善に弾みがついてきている。もっとも、労働参加率は、人口動態変化を考慮しても金融危機前の水準を大幅に下回っており、さらなる改善の余地が残っていると言えよう。
失業率は小数第2位でみても2月は4.92%(前月:4.92%)と前月と同水準であった(図表6)。足元の失業率はFOMC参加者の長期目標水準と一致しているが、今月のFOMCでは見通し改定が予定されており、どのような見通しが示されるか注目される。
 
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
次に、2月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、216.5万人(前月:208.9万人)となり、前月対比では+7.6万人(前月:+0.4万人)と2ヵ月連続で増加した。この結果、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも、27.7%(前月:26.9%)と3ヵ月連続の増加となった(図表7)。さらに、平均失業期間は29.0週(前月:28.9週)と、2ヵ月連続の増加となった。長期失業者についてはここもと改善が滞っている。
最後に、周辺労働力人口(180.3万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(598.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4をみると、2月は9.7%(前月:9.9%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.8%ポイント(前月:5.0%ポイント)と、こちらも2ヵ月ぶりに前月から▲0.2%ポイント縮小した。
 
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2016年03月07日「経済・金融フラッシュ」)

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