2016年03月03日

平成28年度税制改正について

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   安井 義浩

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平成28年度の税制改正は、昨年12月16日に与党税制改正大綱が了承・公表されて大枠が決定した。例年と異なり今回は2段階での決定で、最初12月10日に自民党・税制調査会でおおむね全体が了承された後、消費税増税とセットの軽減税率の導入の部分の議論について、自民・公明両党で調整があり、16日に全体がまとまるという動きとなった。そして12月24日に、政府がこの内容を了承して、政府税制改正大綱も閣議決定された。
 
個人や企業、業界によって、注目する税制は当然異なるのだが、全体としてみれば、今回の大きなポイントは、消費税10%への増税に伴う軽減税率の対象をどうするか、法人税減税とその代替財源の確保、といったところだったというのが共通した感想のようだ。また2016年夏に参議院議員選挙が予定されているので、それまでは、国民に不評な増税論議は控えられているのではないか、という、内容よりも政治的な動きに着目する向きもある。
 
同時に、この改正による税収を前提とした平成28年度予算案についても、閣議決定されている。総額は96.7兆円で、うち最も多額にのぼるのが、年金も含む社会保障関係経費であり、31.9兆円、対前年度予算比では1.4%増加である。
 
(1) 確定給付企業年金等の拠出金の損金算入枠の拡大
さて、税制に関して具体的な改正内容を見ると、確定給付企業年金に係る項目として、以下のような記載がなされた。
所得税・個人住民税
それぞれについては、以下のような概要である。
〔1〕現在の確定給付年金制度では、企業が収益を恣意的に操作することを防ぐため、定められた方法による債務対応分しか掛金拠出が認められておらず、当然、税制上損金算入できない。しかし、景気の悪化や企業業績の低迷による財政悪化の際には、掛金の追加拠出が必要となるものの、そんな状況下では企業も財政上苦しく拠出は困難である。そこで、「あらかじめ」掛金を多く拠出できるようにして、損金算入を認め、将来、積立金が不足しないような準備を可能とする、というのが目的である。
〔2〕いわゆる「ハイブリッド型年金」に対する掛金拠出についても、〔1〕と同様の取扱とする。つまり、〔1〕のようにあらかじめ多くの掛金を拠出しても、なお積立金が不足した場合に、加入者への給付を減らす仕組みに対しても、損金算入を認めるというものである。
〔3〕確定拠出年金法の改正は国会審議中であるが、その中に、「総合型確定拠出年金における実施事業所を脱退させる場合の特例」がある。現在、確定拠出年金制度を継続することが困難な事業所の脱退については、事業主と労働組合等の同意が必要であるが、特例では同意なしに厚生労働大臣の承認により脱退させることができる。その際拠出が必要な掛金についても損金算入を認めるものである。
 
(2) マイナンバー記載書類の見直し
また、これらとは別に、納税環境整備という目的で、国税・地方税とも、一定の条件の下で、マイナンバー記載対象書類の見直し(すなわち省略可)が上げられ、実務負荷の軽減が図られることとなっている。
 
(3)年金課税は今後の主要検討事項
さて、税制改正大綱では「検討事項」と称して、具体的改正はないものの、今後重点的に検討する予定の項目をいくつか挙げるのだが、そこでは真っ先に「年金課税」が挙げられている。
第三 検討事項
これは、ここのところ毎年挙げられているもので、年金制度は、制度の進展・変更にあわせて、税制としても柔軟に対応する予定の分野とみなされている、ということであろう。
 
ただし、年金制度と一口に言っても、公的年金制度、企業年金制度のほか、民間生命保険会社の個人年金保険もあるし、税制として整合性を求められる分野としては、銀行・証券会社などの金融商品など、老後保障に関係する制度や商品は幅広く存在している。おそらく年金分野は、税制優遇が進む方向にあると思われるものの、国全体の予算・財源に限りがある中では、年金の中でもどの分野に注力されるかは、今後の年金制度改革や民間会社の販売政策などにも左右されることになる。また税制優遇の範囲が拡大して、税収が減少するのを補うべく、全く別の分野で増税となることもあり、そうした関連業界間の綱引きのような動きも起こってくる。
 
ともあれ、平成28年度に向けての改正は、本稿の出る頃には、具体的な法案の国会審議が順調に進められている、はずであるが、どうなっているだろうか。
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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

(2016年03月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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