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日本の生命保険業績動向 ざっくり30年史(3) 保険料収入・保険金支払など 銀行窓販で、復調?

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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もちろん、その過程には複雑な仕組みが控えており、様々な問題がからまりあっているわけだが、今回は、そのうち入口にあたる保険料収入と出口の保険金などの支払い、事業費の推移を見てみる。
契約が獲得できてはじめて保険料収入があるので、保険料収入は業績そのものという側面があり、その意味では、保険事業としては保険料収入が増加すればするほど好ましい、と言えるだろう。
(だからこそ近年では保険金額とは別に、年換算保険料という業績指標も出てきている。また損害保険の場合は、従来から、事故のあと損害額の査定があって後に保険金額が決まるので、生命保険とは異なり通常は契約高というのは考えず、保険料収入そのものが重要な業績指標になっている。)
また、保険料収入の動向は、時に一時払契約などで一括収入される保険料や、あるいは貯蓄性商品が好調なとき(またはその反動)は、保険金ベースの業績の動向とは異なる様相を示すこともある。
ただし、保険料収入が増加することは、時に「高い予定利率を背負う厄介な資金が増加する」という面もあり、実際、現在に至るまで続く超低金利状況では、あとになってみれば「どの会社にとっても重荷、さらに一部の会社にとっては致命傷」になるような状況でもあった。
1980年代以降の動きをみると、従来個人保険が大きな割合を占めていたところに団体年金保険・個人年金保険の好調さが加わり、順調に増加してきていた。その後いくつかの生保が破綻した生保不信の時期には減少傾向をたどる。ここ数年は、景気が上向きとなったことや、銀行窓販による一時払契約が増えたことにもより、持ち直してきている。個人年金・団体年金といった年金の占める割合は、1980年度には1割程度だったが、最大で2005年度には4割以上にまでなり、現在は2割強で推移している。
保険料に占める一時払の動きは、全体の動向を大きく左右する。下図でその割合をみると、個人保険では1980年代には一時払養老(と推測される)、近年は一時払終身が増加しており、全体の3割程度である。一方、個人年金保険は、一時払が近年は5~8割を占め、大きく変動している。
保険料月払のような平準払契約の場合は、その後保険期間等に応じて例えば10~20年など、少しずつではあるが長期間安定して保険料が収入されるので、ある程度見通しがつく。一方、一時払契約の保険料は、金額は大きいが翌年は別途新たに獲得した契約からの収入なので、ブレが大きい。今後も銀行窓販による一時払契約が新契約の主流である傾向が続けば、保険料収入は年度毎に相当変動するだろう。(だからそんな性質をもつ保険料収入で、会社規模を競わせても意味が薄いと思うのだが・・・?)
その一方、満期保険金は、例えば一時払養老の満期保険金の支払であるが、1980年代の一時期、猛烈な勢いで販売されたのだが、5年後とか10年後とかに支払うことがわかっているし(1991年と1998年のピーク前後が一時払養老の満期が多かったのだろう。)、保険料(の一部)を準備金として積み立ててあるので、いくら突然支払いが増えても収支に直接は影響しない。ここが死亡保険金とは異なる。また、銀行や証券会社も含めた金融商品の中でも利回りが優れているなどと世に知れると、販売量(従ってその何年か後の満期保険金支払い)も大きく増減するという点でも、死亡保険金とは性質が異なる。
(2015年12月22日「基礎研レター」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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