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- 日本経済再生の鍵-女性、高齢者の労働参加拡大と賃金上昇が必須の条件
1―はじめに
2―女性、高齢者の労働参加拡大による潜在成長率への影響
日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに20年にわたって減少を続けており、労働力人口も1990年代後半から減少基調となっている。ただし、高年齢者雇用安定法の施行によって高齢者の継続雇用が進んだことや、女性の労働参加が進んでいることから、このところ労働力人口の減少ペースは緩やかとなっており、2013年、2014年は2年連続で増加した。
先行きについては、人口減少ペースの加速、さらなる高齢化の進展が見込まれるため、労働力人口の減少が続くことは避けられないが、女性、高齢者の労働力率を引き上げることにより、そのペースを緩やかにすることは可能である。当研究所の中期経済見通しでは、男性は60歳代の労働力率が現在よりも10ポイント程度上昇(60~64歳:77.6%(2014年)→87.5%(2025年)、65~69歳:52.5%(2014年)→61.4%(2025年))、女性は25~54歳の労働力率が70%台から80%前後まで上昇することを想定している(図表1、2)。
2014年時点の男女別・年齢階級別の労働力率が今後変わらないと仮定すると、高齢化の進展によって労働力率が相対的に低い高齢者の割合が高まるため、全体の労働力率は低下し続ける。男女別・年齢階級別の労働力率が2014年実績で一定とし、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計を用いて全体の労働力率を試算すると、2025年には56.5%となり2014年の59.4%から3ポイント程度低下する。すでに減少している15歳以上人口は今後減少ペースが加速するため、15歳以上人口に労働力率をかけあわせた労働力人口は2025年には6071万人となり、2014年よりも516万人減少する(年平均で▲0.7%の減少)。一方、高齢者、女性の労働力率上昇を見込んだ中期経済見通しのケースでは2025年の労働力率は59.1%となり、現在とほぼ変わらない。この場合でも15歳以上人口が大きく減少するため2025年の労働力人口は6352万人と2014年よりも235万人減少する(年平均で▲0.3%の減少)が、現状維持ケースと比べれば減少幅、減少ペースは大きく緩和される(図表3)。人口減少下では一人当たりGDPのほうがより重要だ。国全体のGDPが減少したとしても、一人当たりGDPが増加すれば国民一人ひとりの豊かさは保たれると考えられるからである。その意味では、労働力人口そのものよりも労働力率のほうがより重要といえるだろう。
近年、女性の労働力率は大幅に上昇しているが、注目されるのは、労働力率の上昇とともに潜在的労働力率も上昇している点である。このことは現時点の潜在的労働力率が天井ではなく、育児と労働の両立が可能となるような環境整備を進めることにより、女性の労働力率のさらなる引き上げが可能であることを示している。
潜在GDPは中長期的には労働、資本の投入量、技術進歩率によって決まるため、労働力人口の動向は先行きの潜在成長率を大きく左右する。日本の潜在成長率は1990年代初め頃から急速に低下しているが、その大きな原因は労働投入による寄与が一貫してマイナスとなっていることである。
中期経済見通しでは、先行きも労働投入量の減少は続くものの、女性、高齢者の労働力率上昇によってマイナス幅の急拡大が回避されること、資本投入によるプラス幅が拡大すること、技術進歩率が現在の0%台前半から0%台後半まで高まることを前提として、潜在成長率は足もとの0.5%程度から1%程度まで高まると想定している(図表5)。
なお、当研究所の中期経済見通しでは政府目標の名目GDP600兆円の達成は2025年と予想しているが、現状維持ケースでは2027年までずれこむことになる。
3―需要面からみた影響
このように、女性、高齢者の労働参加拡大によって供給力の低下に歯止めをかけることは可能と考えられるが、その一方で潜在成長率の上昇に実際の需要が追いつくのかという問題がある。
日本経済はバブル崩壊後、長期にわたり低迷が続いてきたが、その一因には需要不足の問題がある。実質雇用者報酬は1990年代半ばまでは増加を続けてきたが、その後はほとんど伸びておらず、このことが個人消費、実質GDPの低迷につながっている(図表7)。この結果、GDPギャップはバブル崩壊以降、ほぼ一貫してマイナスとなっており、日本経済は慢性的に需要不足の状態に陥っている(図表8)。日本経済再生の鍵は供給力の向上とともに、家計の所得増加を通じた個人消費の拡大を実現することにより、潜在成長率の上昇と需要不足の解消を両立させることである。
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- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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