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コラム
2008年02月21日
地域の振興には、その地域に根ざした事業を作り上げることが効果的である。地元住民に所得や雇用をもたらす形でビジネスモデルが組み立てられれば、地域経済への波及効果も大きい。
もちろん、ビジネスモデルを構想し、それを実際に機能させるには、地域振興に対する高い志とともに、高いビジネスのスキルやリーダーシップを持った有能な社会起業家の存在は欠かせない。
この点での成功例として有名なのは、徳島県上勝町の「いろどり事業」であろう。木の葉を地元のおばあちゃんが摘み取ってパックに詰めると、それが「ツマモノ」という高付加価値商品となり、高級料亭で料理に添えられて客に供され、季節感演出の立役者となっている。
上勝町は、人口約2000人、町の面積の約9割が山林であり、また、およそ住民の二人に一人が高齢者という土地柄である。重量が軽くて単価の高いツマモノは、非力な高齢者や女性が取り扱うには適した産品といえよう。このビジネスで、約3億円の売上がもたらされ、おばあちゃんが月に100万円近くを稼いだ、あるいは、「葉っぱ御殿」を建てたなどと報道されたこともあり、知名度も高まっている。
この「いろどり事業」のビジネスモデルを構築したのは、株式会社いろどり代表取締役副社長の横石氏である。現在のビジネスモデルは、地域特性に適合し、付加価値を生み出す仕掛けとして有効に機能しているように見えるが、これは一朝一夕に出来上がったわけではない。
季節に応じて変化するツマモノのニーズに対応するための品揃えや、市場の状況と出荷を結びつける情報システム構築などの地道な努力を積み重ねてきた結果である。このビジネスモデルは約20年の歴史を持っており、当初のアイデアをビジネスモデルとして機能するまで改善努力した横石氏のご苦労はいかばかりかということだ。
横石氏の功績は、事業ドメインをツマモノに定め、それに相応しいビジネスモデルを構築したことに加え、コミュニティーのなかにソーシャル・キャピタル、すなわち住民の間の信頼・規範・ネットワークといった部分を醸成したことも大きいと思われる。地域振興の意図をもったこのビジネスモデルが有効に機能するためには、横石氏と地域住民が構成するコミュニティーのソーシャル・キャピタルの醸成が不可欠であったといえよう。実は、横石氏と地元との関係は、前職の農協職員として上勝町に赴任してきたときにゼロからスタートしている。
営利だけを念頭に置いたビジネスであれば、最も成功確率の高い立地を選んで立ち上げることは当然の戦略であるが、地域振興を目指した場合では別の立地を選ぶことは難しい。地域の振興のためにビジネスを立ち上げるという場面では、地域におけるソーシャル・キャピタルを上手く作り上げることが成功のために必要であることを「いろどり事業」は教えてくれる。
地域の振興に必要な社会起業家人材を地元外から起用する例も少なくないが、ビジネスモデルの構築をこの社会起業家だけに「丸投げ」して地元が傍観者となるのは危険だ。社会起業家を取り巻く地元コミュニティーのソーシャル・キャピタル、すなわち、信頼・規範・ネットワークの構築によるバックアップこそがビジネスモデルが有効に機能するための処方箋となるはずだ。
もちろん、ビジネスモデルを構想し、それを実際に機能させるには、地域振興に対する高い志とともに、高いビジネスのスキルやリーダーシップを持った有能な社会起業家の存在は欠かせない。
この点での成功例として有名なのは、徳島県上勝町の「いろどり事業」であろう。木の葉を地元のおばあちゃんが摘み取ってパックに詰めると、それが「ツマモノ」という高付加価値商品となり、高級料亭で料理に添えられて客に供され、季節感演出の立役者となっている。
上勝町は、人口約2000人、町の面積の約9割が山林であり、また、およそ住民の二人に一人が高齢者という土地柄である。重量が軽くて単価の高いツマモノは、非力な高齢者や女性が取り扱うには適した産品といえよう。このビジネスで、約3億円の売上がもたらされ、おばあちゃんが月に100万円近くを稼いだ、あるいは、「葉っぱ御殿」を建てたなどと報道されたこともあり、知名度も高まっている。
この「いろどり事業」のビジネスモデルを構築したのは、株式会社いろどり代表取締役副社長の横石氏である。現在のビジネスモデルは、地域特性に適合し、付加価値を生み出す仕掛けとして有効に機能しているように見えるが、これは一朝一夕に出来上がったわけではない。
季節に応じて変化するツマモノのニーズに対応するための品揃えや、市場の状況と出荷を結びつける情報システム構築などの地道な努力を積み重ねてきた結果である。このビジネスモデルは約20年の歴史を持っており、当初のアイデアをビジネスモデルとして機能するまで改善努力した横石氏のご苦労はいかばかりかということだ。
横石氏の功績は、事業ドメインをツマモノに定め、それに相応しいビジネスモデルを構築したことに加え、コミュニティーのなかにソーシャル・キャピタル、すなわち住民の間の信頼・規範・ネットワークといった部分を醸成したことも大きいと思われる。地域振興の意図をもったこのビジネスモデルが有効に機能するためには、横石氏と地域住民が構成するコミュニティーのソーシャル・キャピタルの醸成が不可欠であったといえよう。実は、横石氏と地元との関係は、前職の農協職員として上勝町に赴任してきたときにゼロからスタートしている。
営利だけを念頭に置いたビジネスであれば、最も成功確率の高い立地を選んで立ち上げることは当然の戦略であるが、地域振興を目指した場合では別の立地を選ぶことは難しい。地域の振興のためにビジネスを立ち上げるという場面では、地域におけるソーシャル・キャピタルを上手く作り上げることが成功のために必要であることを「いろどり事業」は教えてくれる。
地域の振興に必要な社会起業家人材を地元外から起用する例も少なくないが、ビジネスモデルの構築をこの社会起業家だけに「丸投げ」して地元が傍観者となるのは危険だ。社会起業家を取り巻く地元コミュニティーのソーシャル・キャピタル、すなわち、信頼・規範・ネットワークの構築によるバックアップこそがビジネスモデルが有効に機能するための処方箋となるはずだ。
常務取締役理事
神座 保彦 (じんざ やすひこ)
研究・専門分野
ソーシャルベンチャー、ソーシャルアントレプレナー
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