2016年01月29日

2015年10-12月期の実質GDP~前期比▲0.6%(年率▲2.2%)を予測

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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10-12月期は年率▲2.2%を予測~内需総崩れで大幅マイナス成長

2015年10-12月期の実質GDPは、前期比▲0.6%(前期比年率▲2.2%)と2四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される。

外需は小幅ながら成長率を押し上げたが、国内民需の柱である民間消費(前期比▲0.8%)、設備投資(前期比▲0.2%)がいずれも2四半期ぶりに減少したことに加え、これまで堅調だった住宅投資も前期比▲1.2%と4四半期ぶりに減少した。さらに、2014年度補正予算の効果一巡から公的固定資本形成も前期比▲2.4%の大幅減少となったため、内需総崩れの状況となった。在庫調整圧力の高さから、民間在庫が前期比・寄与度▲0.2%と7-9月期(同▲0.2%)に続き成長率を押し下げたことも成長率のマイナス幅を拡大させた。

実質GDP成長率への寄与度は、国内需要が▲0.7%(うち民需▲0.7%、公需▲0.0%)、外需が0.1%と予測する。
 

名目GDPは前期比▲0.5%(前期比年率▲1.9%)と5四半期ぶりの減少となるが、実質の伸びは上回るだろう。GDPデフレーターは前年比1.7%(7-9月期:同1.8%)、前期比0.1%(7-9月期:同0.1%)と予測する。国内需要デフレーターが前期比0.0%の横ばいとなる中、輸入デフレーターの低下幅(前期比▲4.0%)が輸出デフレーターの低下幅(同▲3.3%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
 

なお、2/15に内閣府から2015年10-12月期のGDP速報値が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2015年4-6月期(前期比年率▲0.5%→同▲0.8%)、7-9月期(前期比年率1.0%→同0.8%)ともに若干下方修正されると予測している。
 

日本経済は消費税率引き上げの影響が和らぐ中、2014年度末にかけて持ち直していたが、2015年度に入ってからは一進一退となっており、2015年10-12月期の実質GDPは2014年度末(2015年1-3月期)を下回ることが予想される。日本経済は消費増税から2年近く経っても底離れできずにいる。
 

主な需要項目の動向

・民間消費~消費増税直後の水準を下回る
 
民間消費は前期比▲0.8%と2四半期ぶりの減少を予測する。名目賃金の伸び悩みに加え、気温が高めに推移し冬物衣料が落ち込んだことが響いた。

消費者物価上昇率の低下に伴い物価高による実質所得の押し下げ圧力は緩和されているが、所定内給与、所定外給与ともに増加ペースが鈍いため、実質賃金上昇率が安定的にプラスとなるまでには至っていない。実質賃金(一人当たり)は2015年7月に2年3ヵ月ぶりに前年比で増加に転じ、10月まではプラスの伸びを維持したが、11月には特別給与の減少を主因として名目賃金(現金給与総額)が前年比で横ばいとなったことから5ヵ月ぶりの減少となった。

民間消費は、2014年4-6月期に前期比▲4.8%と急速に落ち込んだ後、2014年度末にかけていったん持ち直したが、2015年度に入ってからは弱い動きとなっている。2015年10-12月期の民間消費は消費税率引き上げ直後の2014年4-6月期をさらに下回ることが予想される。天候不順などによって一時的に押し下げられたこともあるが、均してみれば個人消費と実質雇用者所得は同様の動きとなっており、消費増税後の消費停滞の主因は実質雇用者所得の低迷にあると考えられる。
百貨店売上高の推移/賃金上昇率の推移/消費税前後の実質民間最終消費支出の動き/個人消費と実質所得の関係
新設住宅着工数の推移 ・住宅投資~政策効果一巡から弱い動き

住宅投資は前期比▲1.2%と4四半期ぶりの減少を予測する。住宅投資は、雇用・所得環境の改善、住宅ローン減税の拡充、住まい給付金、低金利などに支えられ、持ち直しの動きが続いてきたが、ここにきて弱い動きとなっている。

新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2014年7-9月期の86.2万戸から2015年4-6月期には95.6万戸まで持ち直したが、7-9月期が91.7万戸、10-12月期が86.8万戸と徐々に水準を切り下げている。利用関係別には、相続税対策に伴う需要拡大から堅調に推移してきた貸家が息切れ気味となっている。
 
設備投資関連指標の推移 ・民間設備投資~2四半期ぶりの減少

民間設備投資は前期比▲0.2%と小幅ながら2四半期ぶりの減少を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2015年7-9月期の前期比▲1.5%の後、10-12月期は同▲1.4%と3四半期連続で減少した。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2015年7-9月期に前期比▲10.0%と5四半期ぶりの減少となった後、10、11月の平均は7-9月期を5.7%上回っている。

日銀短観などの設備投資計画の強さからすれば好調な企業業績を背景とした設備投資の回復基調は維持されていると判断されるが、景気の先行き不透明感などから投資計画が一部先送りされている可能性がある。
 
公共工事請負金額、出来高の推移 ・公的固定資本形成~2014年度補正予算の効果一巡から2四半期連続の減少

公的固定資本形成は前期比▲2.4%と2四半期連続の減少を予測する。

公共工事の進捗を反映する公共工事出来高は2013年7-9月期の前年比25.7%をピークに鈍化傾向が続き、2015年10-12月期には4年ぶりの減少となることがほぼ確実となっている(10、11月の平均は前年比▲3.4%)。また、公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2014年7-9月期から6四半期連続で減少し、2015年10-12月期は前年比▲4.0%となった。

2014年度補正予算の効果が一巡する中、公共事業関係費が2015年度予算(当初+補正)、2016年度当初予算案ともに前年度とほぼ同水準にとどまっていることから、公的固定資本形成は当面減少傾向が続くことが予想される。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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