2016年01月14日

日韓比較(13):医療保険制度-その6 医療費はなぜ増加しているのか? ―高齢化の進展や医療の進歩、所得水準の向上などが主な原因、医師の養成及び確保のための対策の徹底を―

生活研究部 准主任研究員   金 明中

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1――はじめに

世界各国の医療費が増加していると同様に日本と韓国における医療費も毎年増加の傾向にある。例えば、日本の一人当たり医療費は1990年の1,117ドル(151,521円)1から2013年には3,429ドル(391,016円)2に3.3倍(ドル基準)も増加した。一方、同期間における韓国の一人当たり医療費も310ドルから2,275ドルに7.3倍も増加しており、日本の増加率を大きく上回っている。

このように医療費が増加している原因はどこにあるのだろうか。一般的に医療費が増加する原因としては、人口の増加、人口構造の変化による人口の高齢化、所得水準の向上、公的医療保険の適用対象や給付日数の拡大、診療報酬の引き上げ、物価上昇及び医療人材の人件費上昇、医療技術の進歩、医療機関や医師などの増加によるサービス量の増加、などがあげられている。これらの要因は医療費の増加にどの程度の影響を与えているのだろうか。本稿では、利用できるデータを用いて日韓における医療費増加の決定要因に対する分析を行ってみた。
 
1 為替レート 1ドル=135.65円(1990 年12月31日現在)
2 為替レート 1ドル=105.31円(2013 年12月31日現在)

2――増え続ける日韓の医療費

図表1は日本と韓国における医療費総額の推移を示しており、両国ともに医療費が継続的に増加していることが分かる。1970年における医療費総額は日本が148億ドル、韓国が5.4億ドルであり、日本の医療費総額の対韓国医療費総額比はおよそ27.4倍にも達していた。しかしながら、その後韓国政府が公的医療保険を導入し適用対象を段階的に拡大したことなどにより医療サービスに対する需要が顕在化し、それにつれて供給が増加したことが原因で韓国の医療費総額は急増することになり、2013年にはその差が4.1倍まで縮まった3。図表2は日本と韓国の経済や人口規模が異なることを考慮し、医療費の動向を一人当たりで見たものである。1970年における日本の一人当たり医療費は142ドルで韓国の16.7ドルに比べて8.5倍も高い水準であったものの、その後その差はだんだん縮まり、2013年における日本の一人当たり医療費は韓国の1.6倍水準になっている。
図表1日本と韓国における国民医療費の推移/図表2日本と韓国における一人当たり医療費の推移
では、日本と韓国の医療費は国際的に見てどのぐらいの水準であるだろうか。図表3は先進7カ国と韓国における医療費総額の対GDP比を示しており、医療費総額の対GDP比はアメリカが17.9%で最も高く、次がドイツ(11.3%)、カナダ(10.9%)、日本(10.1%)の順になっている。一方、韓国における国民医療費の対GDP比は先進国とはまだ差を見せている。しかしながら今後韓国では少子高齢化が急速に進むことにより医療費も急増することが予想されており、これに対する対策を急ぐ必要があるとされている。
図表3 先進7カ国と韓国における医療費総額の対GDP比
 
3 1970年から2013年の間の日本の医療費総額が32倍増加したことに比べて、同期間における韓国の医療費総額は212倍も増加した。
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生活研究部   准主任研究員

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

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