2015年12月07日

【11月米雇用統計】雇用者数は21.1万人増加。順調な労働市場の回復を確認。12月の政策金利引き上げは確定的。

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用増加数は市場予想を上回り、労働参加率も改善

12月4日、米国労働省(BLS)は11月の雇用統計を公表した。11月の非農業部門雇用者数は前月対比で+21.1万人の増加1(前月改定値:+29.8万人)となり、市場予想の+20.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を上回った(後掲図表2参照)。

失業率は5.0%(前月:5.0%、市場予想:5.0%)と、こちらは市場予想に一致した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.5%(前月:62.4%)と前月から改善した(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:労働市場の順調な回復を確認。12月の政策金利引き上げを決定づける内容

(図表1)時間当たり賃金の伸び率 11月の雇用増加数は、30万人近かった前月からは伸びが鈍化したものの、10-11月の平均が25.5万人となり、7-9月の17.4万人から増加ペースの加速が鮮明となった。また、年初からの増加ペースも21万人と、99年以来の高さとなった14年の26万人からは低下したものの、20万人超のペースを維持しており、15年も労働市場の順調な回復が持続していることを示している。

さらに、失業率は前月と同水準となったものの、懸念されていた労働参加率が3ヵ月ぶりに改善したことも評価できる。労働参加率の改善は、職探しを諦めて労働市場から退出した人が再び労働市場に参入していることを示すため、雇用者数などの労働市場の「量」に加え「質」も改善していることを示している。もっとも、労働参加率は依然として77年以来の低水準に留まっていることから、更に改善の余地は残っていると言えよう。

一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は前月比+0.2%(前月:+0.4%)、前年同月比+2.3%(前月:+2.5%)と、プラスを維持しているものの、前月比、前年同月比ともに伸びが鈍化した(図表1)。雇用者数が順調に増加する中でも、賃金上昇が加速し難い状況は持続している。

このように11月の雇用統計が、2ヵ月連続で良好な内容となったことから、FRBは労働市場の回復に自信を深めたとみられる。このため、12月15~16日のFOMCでの政策金利引き上げが確定的となった。
 

3.事業所調査の詳細:サービス業の伸びは鈍ったものの、建設業の伸びが加速

(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+16.3万人(前月:+27.4万人)となり、前月から伸びが鈍化、低調だった9月の+16.9万人に近い水準に留まった(図表2)。

サービス部門の中では、人材派遣が▲1.2万人(前月:+2.8万人)と前月からマイナスに転じたこともあり、専門・ビジネスサービスが+2.7万人(前月:+9.0万人)と前月から伸びが鈍化した。さらに、小売業も+3.1万人(前月:+4.0万人)と伸びが鈍化した。

一方、財生産部門は+3.4万人(前月:+3.0万人)と、こちらは前月から伸びが加速した。資源関連では▲1.1万人(前月:▲0.5万人)と減少が続いているほか、製造業も▲0.1万人(前月:+0.1万人)と小幅ながら前月から減少に転じたものの、建設業が+4.6万人(前月:+3.4万人)と大幅に伸び、増加を牽引した。

政府部門は+1.4万人(前月:▲0.6万人)と前月から増加に転じた。内訳をみると連邦政府が+0.6万人(前月:▲0.1万人)、州・地方政府も+0.8万人(前月:▲0.5万人)となった。
 
前月(10月)と前々月(9月)の雇用増(改定値)は、前月が+29.8万人(改定前:+27.1万人)と2.7万人上方修正されたほか、前々月も+14.5万人(改定前:+13.7万人)と0.8万人の上方修正となった(図表3)。
 
なお、BLSの公表に先立って12月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+21.7万人(前月改定値:+19.6万人、市場予想:+19.0万人)と、前月から伸びが加速したほか、市場予想も上回った。ADP統計では、8-9月に雇用増加ペースの大幅な鈍化がみられておらず、失業保険新規申請件数など他の労働関連統計も雇用の大幅な悪化を示していない。このため、8-9月の雇用統計が労働市場を過小評価していた可能性が高まった。
 
11月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.25ドル(前月:25.21ドル)となり、前月から4セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.5時間(前月:34.6時間)と、こちらは前月から▲0.1時間減少した。その結果、週当たり賃金は871.13ドル(前月:872.27ドル)と、労働時間の減少が響き前月から減少した(図表4)。
 
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働力人口は2ヵ月連続で増加

家計調査のうち、11月の労働力人口は前月対比で+27.3万人(前月:+31.3万人)と2ヵ月連続の増加となった。内訳を見ると、失業者数は+2.9万人(前月: ▲0.7万人)と増加に転じたほか、就業者数が+24.4万人(前月:+32.0万人)と2ヵ月連続で増加した。また、非労働力人口は▲6.7万人(前月:▲9.7万人)と、こちらも2ヵ月連続で減少した。

この結果、労働参加率は62.5%(前月:62.4%)と3ヵ月ぶりに増加した(図表5)。労働参加率は、小数第2位までとると前月から改善していたが、今月は小数第1位でも改善しており、改善がより明確となった。

一方、失業率については、労働参加率と対照的に小数第2位でみると、10月の5.03%から11月は5.04%と小幅に上昇した(図表6)。失業率はこれまで順調に低下してきたが、今後労働参加率の改善が持続する場合には、一時的に悪化する可能性もある。もっとも、これは労働市場の「質」が改善していることを示すことから、問題はないだろう。
 
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表1)失業率の変化(要因分解)
次に、11月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、205.0万人(前月:214.2万人)となり、前月対比では▲9.2万人(前月:+3.8万人)減少した。さらに、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも、11月は25.7%(前月:26.8%)と前月から低下した(図表7)。一方、平均失業期間は28.0週(前月:28.0週)と、こちらは前月と同水準となった。

最後に、周辺労働力人口(171.7万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(608.6万人)も考慮した広義の失業率(U-6)をみると、11月は9.9%(前月:9.8%)と前月から0.1%ポイント上昇した(図表8)。さらに、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.9%ポイント(前月:4.8%ポイント)と、こちらも前月から0.1%ポイント上昇した。広義の失業率は、15年1月以来の上昇となったものの、周辺労働力人口や経済的理由によるパートタイム労働者が増加したためであり、これらの増加は労働市場への再参入を示している可能性もあることから、それほど懸念する必要はないだろう。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2015年12月07日「経済・金融フラッシュ」)

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