2015年11月26日

【10月米個人所得・消費支出】所得の伸びは加速したものの、消費は予想を下回る伸びに留まる

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1.結果の概要:所得が予想を上回る一方、消費は予想を下回る

11月25日、米商務省の経済分析局(BEA)は10月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.4%(前月改定値:+0.2%)となり、前月から伸びが加速、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%には一致した。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.1%(前月:+0.1%)と市場予想の+0.3%を下回り、前月と同水準の伸びに留まった(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出も、前月比+0.1%(前月改定値:+0.1%)と前月と同水準に留まり、市場予想の+0.2%を下回った(図表5)。貯蓄率1は5.6%(前月改定値:5.3%)と前月から0.3%ポイント上昇した。これは12年11月の8.8%以来の水準である。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じたものの、市場予想(+0.2%)は下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比で横這い(前月改定値:+0.2%)となり、前月および市場予想(+0.1%)を下回った(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+0.2%(前月:+0.2%)、コア指数が+1.3%(前月:+1.3%)となった(図表7)。
 
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:貯蓄率は3年ぶりの水準、所得対比で消費は抑制

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 10月の個人消費支出(前月比)は、所得の伸びが加速したにもかかわらず、低調だった9月から加速がみられなかった。この結果、貯蓄率はおよそ3年ぶりの水準に上昇しており、所得対比で消費は抑制されている。

消費が抑制されている要因として、8-9月の雇用統計の結果が低調だったことが消費センチメントに影響している可能性がある。コンファレンスボード社の消費者信頼感指数は、10月の99.1から11月の90.4へ大幅に低下したが、同社は雇用に対する見方が慎重になっていることが低下の要因の一つとしている。もっとも、10月の雇用統計は良好な結果となっており、雇用不安からのセンチメント悪化や消費抑制には歯止めがかかるとみられる。

一方、価格指数は、総合指数、コア指数ともに前月比で伸びが抑制されているほか、前年同月比でも加速がみられておらず、FRBが目標とする2%を下回る状況が持続している。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが加速

個人所得の内訳をみると、利息・配当収入が前月比+0.2%(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化したものの、賃金・給与が+0.6%(前月:+0.0%)と大幅に加速し、所得の伸びを牽引した(図表2)。

一方、個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.4%(前月改定値:+0.2%)、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.4%(前月:+0.3%)と、いずれも前月から伸びが加速した(図表3)。
 
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車・自動車部品が5ヵ月ぶりに減少

次に、個人消費の内訳をみると、非耐久財が前月比+0.1%(前月:▲1.1%)と前月からプラスに転じたものの、耐久財が横這い(前月:+0.5%)となったほか、サービスも+0.1%(前月:+0.4%)と、前月から伸びが鈍化した。

耐久財では、家具・家電が+0.4%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したものの、自動車・自動車部品が▲0.8%(前月:+0.5%)と5ヵ月ぶりにマイナスに転じた。

サービスでは、住宅・公共料金支出が▲0.6%(前月:+0.4%)と前月からマイナスに転じたほか、外食・宿泊が+0.4%(前月:+1.0%)と伸びが鈍化した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前年同月比で2桁の下落が持続

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.2%(前月:▲4.9%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じたものの、伸びは小幅に留まっている(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.2%)と、こちらは前月と同水準となった。

最後に前年同月比では、エネルギー価格指数が▲18.4%(前月:▲19.7%)と、マイナス幅は縮小したものの2桁の下落が持続している(図表7)。一方、食料品価格指数は、+0.8%(前月:+0.7%)と、こちらはプラスとなっているものの、顕著な価格上昇圧力はみられない。
 
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2015年11月26日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【【10月米個人所得・消費支出】所得の伸びは加速したものの、消費は予想を下回る伸びに留まる】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

【10月米個人所得・消費支出】所得の伸びは加速したものの、消費は予想を下回る伸びに留まるのレポート Topへ