2015年11月30日

超高齢社会を支援する福祉機器-国際福祉機器展の概況と今後の福祉機器開発・活用への期待-

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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はじめに

福祉機器1というと健常な人には馴染みが薄いかも知れないが、代表的な機器としては車いすや介護現場で使われるリフトなどが思い起されよう。近年、電車や街中で電動車いすなどを使って活動する人々の姿を見掛ける機会が増えている。

福祉用具を中心とする福祉機器には多種多様の製品群があり、その全体像は捉え難い。多種多様の製品具を一同に集めて、それらを試用することもできる場が、毎年開催される「国際福祉機器展H.C.R.」である。10月7~9日の3日間に亘って、第42回目の開催となる「国際福祉機器展H.C.R.」が東京ビッグサイトで開催され、例年並みの11.9万人が来場し、盛況を博した。

少子高齢社会を突き進む日本においては、多種多様な福祉機器を高齢者や障がい者がより一層活用し、その家族や介護職員、行政関係者などにも福祉機器への認知が拡大することが今以上に必要となっている。本レポートでは、前半で展示会全体の概況と展示された介護ロボット等の機器に触れ、後半で福祉機器のさらなる活用に向けた普及・啓発の必要性について述べる。
 
1 本稿では福祉用具(福祉用具法(1993年)による定義)を含む各種福祉機器や介護ロボット等を含む用語として福祉機器と表記する。

1――第42回となる国際福祉機器展 H.C.R.(Home Care & Rehabilitation Exhibition)の概況

図表-1 会場入り口の風景 1「国際福祉機器展H.C.R.2015」とは

この展示会は C:\Users\60032\AppData\Local\Temp\msohtmlclip1\01\clip_image001.jpg 福祉関係者や介護事業者にはよく知られた、毎年恒例の展示会である。また、アジアで開催される福祉機器の展示会としては最大2である。

2015年は14か国・1地域から522社(国内461社、海外61社)が出展し、来場者数も11.9万人にのぼった(図表-2)。
この国際福祉機器展の最大の開催目的は、多種多様な製品群を一同に集めた展示会を通じて福祉機器の普及・啓発を行うことである。さらにこの展示会の大きな特徴として、福祉機器の単なる展示・説明だけでなく、来場者が自ら多数の機器を試用できることが挙げられる。また、出展企業にとってもユーザーの意見に直接接することができる貴重な機会ともなっている。
図表-2 国際福祉機器展H.C.R.2015への来場者数の推移
図表-3 国際福祉機器展2015の来場者属性 2来場者属性と会場の様子、今後への期待

2015年の来場者の属性を見ると「福祉・介護」と「病院・リハビリテーション」の関係者が計36%、「製造業」と「販売業」が計27%、「一般」が30%となっている。毎年開催されているこの展示会では、既存の福祉機器の展示・説明だけでなく、新製品の発表なども行われる。このこともあり、関連する業界関係者だけでなく、「一般」のユーザーや高齢者が日常生活をよりよくする福祉機器を探しに来場する他、福祉系の学生が授業の一環として集団で見学に訪れている。

展示される様々な福祉用具や機器群は、例えば特殊な形状のスプーン類(自助具)から福祉車両に至るまで極めて幅が広く、毎回、約2万点とも言われる製品群が広い会場に展示される。会場ではこの他にも、介護における福祉用具の活用方法に関するセミナーや最先端の介護ロボットのデモと解説などが行われ、会場の至る所で来場者と企業の説明員が意見交換する姿が見られた。

筆者の印象として、今回は昨年と比較して海外からの来訪者が若干増え、重い障がいを持つ人が介助の家族と共にフルリクライニング型の電動車いすで見学する姿が増えたように思われる。近年、日本の超高齢社会を乗り切る方策や手段に対して、海外諸国からの期待感や注目度が高まっているように思われる。今後とも、この国際福祉機器展において、先進性の高い、卓抜した福祉機器群が展示され、今以上に海外からの来訪者が増えることを期待したい。また、来場する一般の高齢者や福祉機器のユーザーとその介護者等と開発企業との直接の意見や情報の交換を通じて、ユーザー等の日常生活のQOLを大きく高められる新製品が続々と登場することを強く期待したい。


 
2 米国のMedtrade、ドイツのREHACAREの開催規模に次ぐ、アジアを代表する福祉機器の国際展示会(保健福祉広報協会のホームページ内容より)。

2――技術革新が進展する「福祉機器開発最前線」

過去より特別企画として開催されている「福祉機器開発最前線」では、2013年より経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」で進められている「重点分野」の各種開発機器の展示説明やデモンストレーションが行なわれてきている。今回はそれらに加え、技術革新が進む義肢・装具や一般家庭向けのコミュニケーションロボットなども展示された(図表-4)。
 
1特設会場での「福祉機器開発最前線」展示とデモ

上記の展示ブースでは、下記の12機種の展示説明が行われた。
図表-4 「福祉機器開発最前線」における展示・デモンストレーション実施の機器一覧
昨年までは「重点分野」のロボット介護機器(「重点分野」の開発中の機器)の展示が中心であったが、今回はそれらの一部に先端技術を駆使した義肢・装具やコミュニケーションロボットなどの展示が加わった。

表の5、10、12番及び「7 外出支援アシスト歩行車」は、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入支援」事業の「重点分野」における開発機器であり、2014年度で開発支援が終了したものである。なお、5、10、12番については、過去のレポート3で取り上げており、そちらを参照して欲しい。このほか、「重点分野」の開発支援中の機器としては、2015年度で開発補助が終了する予定である、「4 移乗サポートロボットT1」「11 独居高齢者の見守り・転倒検知システム」が展示説明されていた。

「9 ニンニンPepper」は、ソフトバンクロボティクス社の「Pepper」を活用したコミュニケーションや見守り、服薬支援等のソフトウェアである。また、先端技術を駆使した障がい者用の義肢装具(「3 ロボット技術を用いた義肢装具」及び「6 改良型筋電義手」)やコミュニケーション機能に特化した一般家庭向けのロボット玩具(「8 OHaNAS(オハナス)」)の機器展示が新たな動きとして多くの人の注目を集めていた。これらは技術革新の広がりと応用が実感される新たな機器群であった。
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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

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