コラム
2015年08月28日

年内に売却するべきか?~債券税制改革の影響~

金融研究部 チーフ債券ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任   千田 英明

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2016年1月から債券の税制が大幅に改正されるのをご存知だろうか。これまで債券の投資家は収益が発生する度に税負担していた。代表的なものは利息で、受取の際には20.315%の税金が源泉徴収されている。これが、他の金融所得(株式の売却損益など)と合算して同じ税率の20.315%で課税されることになる。損益が通算されて投資家が有利になる面がある一方、不利になる面もあるので注意したい。

債券に投資すると、3つの収益を得られる可能性がある。1つ目は利息で、受取の際は事前に税金を天引きされ、税引後利息を受け取る(源泉分離課税)。2つ目は債券を満期まで保有した際に発生する償還損益で、これは総合課税(他の給与所得などと合算して課税、所得の多い人ほど税率が高くなる累進税率が適用)されている。3つ目は債券を売却した際に発生する売却損益であるが、これについては非課税である。今回の改正では、これら3つの損益全てを合算し、更に他の金融所得(株式の配当、売却損益等)も合算して課税する(申告分離課税)

1つ目の利息については、改正前後で税率は変わらない。しかし、株式の売却損などが発生している場合には損益を合算して利益を少なくできるため、投資家に有利な改正となる。

2つ目の償還損益については、他の所得水準によりこれまでの税率が異なるため、有利になる人と不利になる人が発生する。この場合、いわゆる「課税される所得の金額(扶養控除、保険料控除等の所得控除後の金額)」が330万円以下の人は税率が上がることになるため不利、それ以上の人は有利になる。ただし、税率が上がる人も他の金融所得と合算することができるようになるため、株式売却損などが発生している場合には有利になる可能性がある。

3つ目の売却損益については、これまで非課税だったものが課税となるため、一方的に不利になるように見えるかもしれない。しかし、債券の売却損が発生した場合、これまで他の金融所得と合算することができなかったものができるようになるため有利になる。今後、金利が上昇していく過程で含み損が発生しても、他の金融所得と合算することができるため、安心して売却できるようになる。一方で、既に保有されている債券の多くは金利低下の影響を受けて含み益を抱えていると思われる。この場合、今年中に売却すれば非課税であるが、来年以降に売却すると課税されるということになる。更に外貨建債券(外貨MMF等の公社債投資信託も含む)については、最近の円安傾向も加わりより大きな含み益が発生していると考えられる。これらについても来年売却すると課税されることになるため注意が必要だ。ただし、課税を逃れるために一旦売却して再び同様の債券を購入することは得策とは限らない。債券の売買をすると多くの手数料(価格に含まれることもある)を差し引かれるためだ。売却資金を株式等のリスク資産に振り向けることも考えられるが、ある程度の金額は債券を保有する方が収益は安定する。売却する際は、売却後の運用も含めて慎重に検討したい。

尚、今回の税制改正は、個人投資家が保有している債券の中で最も多い個人向け国債(10年変動)にはほとんど影響しない。変動利付債は売却損益や償還損益が発生せず、利息にしか課税されないためだ。ただし、株式売却損などと損益を通算できるメリットは享受できる。また、税制改正に備えた債券売却の流れがマーケット金利上昇に結び付く可能性は低いと考えられる。マーケット占率の大きい金融機関には税制改正の影響がないためだ。一方で、売却された資金が再び債券に戻る可能性は低く(手数料等で不利になるため)、その資金が今後どこに向かうかなどは注目される。

このように、今回の税制改正では各自の状況に応じて有利不利が発生することになる。債券を保有している人は、内容を充分に理解し対策を考えてはどうか。


 
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金融研究部   チーフ債券ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任

千田 英明 (ちだ ひであき)

研究・専門分野
運用手法開発(国内債券)、証券化商品

(2015年08月28日「研究員の眼」)

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