コラム
2014年09月30日

住宅ローン金利は「変動」と「固定」のどちらが有利か?

千田 英明

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「今は史上最低金利で、住宅ローンを組むにはとても良いタイミングです!」「現在の金利は、ほとんど0%だから今後の金利は上昇するしかない。だから、固定金利の住宅ローンを組めば今後金利が上昇しても長期間安心です。」といった話しをよく聞かないだろうか。どちらも正しいことを言っているように聞こえるがどうだろうか。

現在の金利水準は、短期金利(無担保コール翌日物金利)が0.05~0.10%、長期金利(10年長期国債金利)が0.50~0.55%で推移している。これらは、確かに史上最低金利に近い水準だが、史上最低金利とは過去との比較であり、将来その水準を下回らないということではない。これまでも金利は史上最低金利を何度も更新しているが、その都度ここが金利低下の限界で、今後は金利が上昇すると何度も言われてきている。実際に短期国債(3ヶ月、6ヶ月など)はマイナス金利でも取引されており、金利は0%より下がらないという常識も通用しなくなるかもしれない。ただ、さすがに金利が0.1%などでは、仮にそれより低下したとしてもわずかだろうから、金利の更なる低下よりも金利上昇に備えた方が良いのではないか、と考える人も多いだろう。しかし、現在の低金利状態が長期間(横ばいで)続くことも考慮しなければならない。

前述の通り、短期金利は長期金利よりも相対的に低いことが多い。住宅ローン金利は主に変動と固定があり、変動は無担保コール翌日物金利(日銀の政策金利)、固定は5年スワップ金利に連動していると考えられている。各銀行によって金利決定方法は異なるが、変動金利は短期プライムレート(無担保コール翌日物金利を基準に設定)を基準に、固定金利は長期プライムレート(各銀行の5年普通社債、又は5年スワップレートを基準に設定)を基準にしているからだ。つまり、変動金利は短期金利に連動し、固定金利は長期金利に連動している要素が強いと考えられる。そのため、住宅ローン金利も変動金利の方が固定金利よりも低くなるケースが多い。

例えば、住宅ローンの変動金利が1.0%、固定金利が1.5%であった場合、現在は史上最低金利で今後金利は上昇するかもしれないから、固定金利を選択することがあるだろう。しかし、ここでは現在の低金利状態が長期間続くことも考えておかなければならない。将来、想定通りに金利が上昇すれば良いが、上昇しなかった場合、上記のケースでは0.5%(1.5%-1.0%)分の金利を毎年多く払い続けなければならない。

現在の金利水準が低いからと言って、今後金利が更に低下しない、または、金利が上昇するとは限らない。金利は現在の水準よりも、今後の方向性が重要である。今後金利が上昇するのであれば、住宅ローン金利は固定が有利になる可能性が高い。逆に、今後金利が上昇しなければ(金利低下、又は横ばいであれば)、住宅ローン金利は変動が有利になる。住宅ローン金利は目先の水準に惑わされず、今後の動きにも注意して、慎重に判断したい。

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