2015年05月12日

米国経済の見通し-堅調な個人消費から成長の加速を予想

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1―GDPの動向

(経済概況)10-12月期の成長率は低下したものの、底堅い成長が持続

米国経済は、10-12月期の実質GDP成長率(以下、成長率)が前期比年率+2.2%となり、7-9月期の+5.0%から低下した。もっとも、7-9月期の成長率は、政府支出の急拡大や輸入の反動減などの特殊要因によって押し上げられているほか、10-12月期にはその反動もみられたことから、これらの変動要因を除いてみれば、10-12月期も底堅い成長が持続していたとみられる[図表1]。
   とくに、個人消費については、10-12月期の伸びが+4.4%と9年ぶりの高さとなっており、米国経済は、個人消費主導の非常に筋の良い景気回復となっていることが分かる。好調な個人消費の背景として、米国労働市場の力強い回復が挙げられる。労働市場の代表的な指標である非農業部門雇用者数は、14年の月間平均増加数が26.0万人増に上り、99年の26.5万人増以来のペースとなった[図表2]。さらに、原油価格の下落に伴うガソリン価格の下落なども個人消費にとって追い風となっている。実際、消費者センチメントは、08年のリーマン・ショック前の水準まで改善しており、個人の消費意欲は高まっているとみられる。
   その結果、14年通年の成長率は、前年比+2.4%となり、こちらは13年の+2.2%から小幅ながら伸びが加速した。



 

(経済見通し)15年の成長率は個人消費主導で2.9%に加速

15年の成長率は、前年比+2.9%と14年(同+2.4%)からの加速を見込んでいる。その主な要因は、労働市場の回復等を背景に、個人消費の伸びが加速するとみられることである。雇用者の時間当たり賃金は前年比で2%程度の伸びに留まっており、加速がみられないものの、雇用者数の増加に弾みがついていることから、雇用者数の増加と合わせた雇用者報酬の伸びは前年比で5%近くまで上昇しており、消費に使える原資は着実に増加している。
   一方、原油価格の下落等に伴い、エネルギー関連企業の設備投資の削減が見込まれるほか、ドル高が輸出企業の競争力に影響を与えることなどから、民間設備投資の伸びは鈍化が見込まれる。さらに、外需についてもドル高や相対的に米国経済が好調なこともあり、純輸出の成長率寄与度はマイナス幅が拡大するとみられる。
   しかしながら、このようなマイナス面を考慮しても、GDPの7割を占める個人消費が主導する形で15年の成長率が加速することは十分に可能だと考えている。
   上記見通しに対するリスク要因としては、海外経済回復のもたつき、および米国内政治の混乱が挙げられる。とくに、米国内政治は議会と大統領の政治的な対立が激化し、国内の政治混乱が好調な実体経済に与える可能性については注意が必要だ。

 

2―物価・金融政策・長期金利の動向

(物価)エネルギー価格の下落に伴い物価上昇圧力は後退

消費者物価指数(前年同月比)は15年に入ってから、ゼロ%近辺まで低下している。これは、主に原油価格等の下落に伴い、エネルギー価格が2桁の下落となっているためである。一方、食料とエネルギーを除くコアは1%台後半で安定している[図表3]。
   さらに、FRBが政策目標としているPCE価格指数(前年同月比)でみても同様の傾向を示しており、総合指数はゼロ%近辺まで低下している。コア指数は+1%台前半で総合指数に比べ安定しているものの、FRBが政策目標としている2%の水準を大幅に下回っている。
   物価見通しについては、エネルギー価格の動向が鍵を握っているとみられる。当研究所では、原油価格は15年1-3月期に底値をつけた後、16年にかけて緩やかに上昇すると予想している。このため、消費者物価指数は、4-6月期以降にはプラス幅が拡大すると見込んでいる。もっとも、原油価格の大幅な反発は見込めないほか、労働市場が回復しても賃金上昇率は抑制されると見込まれることから、15年の消費者物価指数(前年比)は+0.7%と14年の+1.6%から低下すると見込まれる。
   また、PCE価格指数についても、コア指数は景気回復を反映して幾分加速してくると見込まれるものの、エネルギー価格が低水準に留まることから、15年中にFRBが目標とする2%の達成は困難とみられる。



 

(金融政策)15年9月の利上げを予想

FRBは、米国経済の回復に自信を深めており、14年10月に量的緩和政策の第3弾(QE3)を終了させたほか、15年内の政策金利引上げに向けて着実に金融緩和政策からの転換を進めている。
   実際、15年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、6月以降はFOMC会合毎に政策金利の引上げ可否を判断することが決定された。このため、最短で6月の政策金利の引上げが可能となった。
   もっとも、6月に政策金利を引上げることは困難とみられる。3月の会合では、15年の成長率や物価見通しが下方修正されており、とくに物価水準は政策目標である2%に到達する時期が17年まで先送りされた。また、同会合では、政策金利を引上げる際の条件として、労働市場の更なる回復や物価が政策目標である2%に向かって着実に上昇する合理的な確信が得られた時であることが新たに示された。このため、物価が明確に上昇基調に転じる前のタイミングで政策金利を引上げることは困難だろう。
   さらに、米国以外の国で金融緩和政策が強化された結果、ドル高が進んでおり、物価について更なる下押し圧力となっているほか、ドル高が輸出部門を中心に米国経済にネガティブに影響することが懸念されている。
   これらのことを考慮すればFRBが政策金利の引上げを急ぐ可能性は低く、経済や物価の状況を慎重に見極めた上で、9月に政策金利を引上げると予想している。

 

(長期金利)緩やかな上昇を予想

長期金利は、物価上昇圧力が抑制されていることから、当面は2%台前半での推移が見込まれる。その後、年後半以降は物価が緩やかに上昇するほか、FRBが政策金利を引き上げることから、長期金利は緩やかに上昇すると見込んでいる。もっとも、水準としては、15年末時点で2%台半ばと14年年初を下回る水準に留まると予想する[図表4]。



 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2015年05月12日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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