コラム
2015年04月15日

高齢社会エキスパートとは-未来の社会・生活を創造するリーダー

生活研究部 主任研究員   前田 展弘

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「高齢社会エキスパート」をご存知だろうか。これは一般社団法人 高齢社会検定協会が実施する「高齢社会検定」試験に合格された方が当協会から付与される民間資格(称号)である。当検定試験は2013年からスタートし、これまで2回実施され(年1回、東京会場にて実施)、のべ718名が高齢社会エキスパートの認定を受けている。高齢社会エキスパートが有する知識は、ジェロントロジー(Gerontology)、つまり高齢者及び高齢社会の実態と課題及び課題の解決視点に関する俯瞰的で総合的な知識である。具体的には、下記テキストの目次にもあるとおり、10-20年先の未来社会の姿を概観した上で、個人がより安心で豊かな長寿を実現するために必要な知識として、理想の生き方・老い方、高齢期の就労、住まい、お金、暮らしを支える社会資源、健康と老化、認知症、そして最期の迎え方について、また活力ある超高齢社会の創造に向けて、社会保障制度(医療、介護、年金制度)、住宅・まちづくり政策、交通・移動システム、ジェロンテクノロジー、高齢者の尊厳を守る法に関する知識が含まれる。なお、当テキストは、東京大学高齢社会総合研究機構他のジェロントロジーに精通した教授・研究者他が執筆し、ニッセイ基礎研究所が編集協力を行っている。

<高齢社会検定試験の公式テキスト>

 

どんな人が当検定を受験し合格したのか、高齢社会エキスパートの属性を紹介すると、男女の比率は男性6割、女性4割、年齢別には、20代8%、30代20%、40代28%、50代25%、60代12%、70代以上7%(最年少21~最高齢93歳、平均年齢48歳)と幅広く分かれる。職業別には、会社員が約7割を占め最も多い。

本稿をご覧いただいた方の多くは、こんな試験・資格があったのか、何の役に立つのかと思われるに違いない。その点について、ジェロントロジーを専攻し、高齢社会検定試験事業の創設と運営に携わる者として、筆者の私見を述べてみたい。

高齢社会エキスパートの資格は、職業資格、つまりこの資格をもっていないと業務(仕事)ができないような資格ではない。あくまで前述の知識(教養)を提供するものである。しかし、当試験を受験すること(資格を手にすること)は次のようなメリットがあると考える。まず(1)超高齢社会を迎える日本において必須の知識である「高齢者及び高齢化の問題に関わる幅広い領域をコンパクトに学習でき、それぞれの領域の基礎知識を横断的に身につけられる」ということである。老年医学にしても社会保障制度にしてもそれだけで一つの学問体系であったり、別の専門資格を設けることができるわけであるが、「高齢者及び高齢化(個人と社会のエイジング)」というテーマで、分野横断的に必要なエッセンスを修得できるのはこの試験だけである。次に(2)「高齢者及び高齢化に対する見方・考え方がより正しくなる」ということである。“年をとるとどうなるのか”という素朴な疑問に対して体系的な理解ができることで、高齢者に対する見方・考え方はブラッシュアップされるに違いない。一番身近な存在である老親をはじめ、高齢者により正しく接してあげられるようになると考える。最後に(3)「高齢者及び高齢化の問題に関するリーダーとなりうる」ということを挙げたい。当試験は日本を代表するジェロントロジーの研究教育機関である東京大学高齢社会総合研究機構が監修しており、その試験を合格したということは、高齢者及び高齢化(超高齢社会)のことを正しく理解した人である証が得られたことである。高齢者に対する偏見のない見方ができることで、高齢顧客への接客、高齢者向けの商品サービスの開発、まちづくり等の政策・施策を検討する場面に自信をもって参加することができる。だからこそ高齢社会エキスパートの方はその場の議論をリードいただきたいし、リードすべき立場と考える。今後もぜひ高齢社会エキスパートの方には、これからの未来社会・生活を創造するリーダーとして大いに活躍いただきたい。

2015年9月12日(土)には東京大学駒場キャンパスにて、「第3回高齢社会検定試験」が行われる。高齢社会エキスパートが一人でも多く増え、これからの社会をリードされることを大いに期待したい。

【第3回高齢社会検定試験申込専用HP】 https://www.kentei-uketsuke.com/gerontology/

第3回 「高齢社会検定試験」のご案内

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生活研究部   主任研究員

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

(2015年04月15日「研究員の眼」)

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