コラム
2014年12月22日

N/Aの意味-「無回答」には、どのような本音が隠れているか?

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   篠原 拓也

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日頃、テレビ、新聞、雑誌などでは様々なアンケートの結果が公表され、それに解説が付けられてニュースとして扱われている。例えば、国会議員の選挙前には各政党の支持率についての世論調査が行われ、税制改正前には経済政策等についてのアンケート、ゴールデンウィークや正月休み前には連休の過ごし方についてのアンケートが行われるといった具合だ。アンケートは様々な形で行われるが、短期間で集中的に行うために、設問に対する選択肢をいくつか用意しておいて回答者にその中から選んでもらうという方法が一般的ではないだろうか。

ここで、注意すべきなのは、「無回答」とか「わからない」といったノット・アプリカブル(英語ではN/A)の選択肢だ。ノット・アプリカブルは、次のような場合に選ばれるものと考えられる。
   (1) 聞かれているテーマに関心が低く明確な意見がないため、「どちら(どれ)ともいえない」場合
   (2) 設問の意味や質問の背景が不明なため、「わからない」場合
   (3) 設問がセンシティブな内容であるなどの理由で、「答えたくない」場合
通常、ノット・アプリカブルの選択肢が多く選ばれてしまうことは好ましくない。そこで、それぞれの場合について、アンケート結果や設問の見直しなどについて考えてみよう。

(1) 「どちら(どれ)ともいえない」場合
   専門的な内容に関して、この意見に賛成ですか、反対ですかという二者択一を迫る設問の場合に発生しやすい。例えば、「あなたは、将来、地球に宇宙人が来る(もしくはすでに来ている)と思いますか?」といった質問がこれに当てはまる。SFや宇宙物理学などにあまり関心がない人の場合、どちらともいえないという答えが出てきやすいのではないだろうか。
   この場合、統計上の処理としては、ノット・アプリカブルの回答は除去して、賛成と反対の回答だけをもとにアンケート結果をまとめることが考えられる。ノット・アプリカブルの回答の量が多い場合には、アンケート結果が一部の人の意見に寄ってしまう。例えば、ノット・アプリカブルの半数を賛成、半数を反対と見なすような工夫をするなど、処理の方法について検討すべきと思われる。

(2) 「わからない」場合
   設問が複雑な仮定を含んでいるような場合に起こりやすい。例えば、「あなたがスイス生まれの5歳のオスのセント・バーナード犬だったと仮定して、飼い主の夏休みに、インドに連れていってもらえるとしたら、どこに行ってどんなものを見てみたいですか?」といった設問である。通常は、インドに連れていかれる大型犬の気持ちにはなかなかなれず、よくわからないというのが一般的な回答ではないだろうか。
   この場合、統計上、ノット・アプリカブルの回答は除外すべきと考えられるが、ノット・アプリカブルの回答が多発することも考えられる。設問文を、単文中心のシンプルなものに見直す検討が必要ではないかと考えられる。

(3) 「答えたくない」場合
   アンケートがセンシティブな内容で、回答者の感情・心情に立ち入るような場合に発生しやすい。例えば、「あなたは、高校や中学で体罰を受けたことはありますか? 受けたとしたら、それはどのような体罰ですか?」といった質問がこれに当てはまる。この設問は、体罰を受けたことがある場合、その内容まで聞いており、かなりプライベートに立ち入った問いになっている。回答者は、このアンケートの回答の秘匿性はどこまで堅牢なのだろうかなどと疑ってしまって、うかつには答えたくないということになるのではないだろうか。
   統計上、このようなアンケートでは、ノット・アプリカブルの回答の中に、体罰を受けた回答者の本音が埋もれてしまっている可能性がある。従って、単純にノット・アプリカブルの回答を除外することは避けるべきである。可能であれば、ノット・アプリカブルの回答者に個別にヒアリングをすることが考えられるが、そのためには時間や手間がかかる。アンケート実施の段階で、回答の秘匿性を明確にするとともに、設問文の表現・言葉遣いを、丁寧なものにしておくべきと考えられる。

これからも、様々なメディアを通じて、いろいろな形でアンケート結果を目にする機会があると思われる。その際に、ノット・アプリカブルの回答がどのくらいあったのか、なぜそれだけあったのか、などと考えてみてはどうだろうか。表面に現れたアンケート結果の奥にある、回答者の本音を考えてみることも有意義ではないかと思われるが、いかがだろうか。

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

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