コラム
2013年12月26日

デフレ脱却宣言はいつ出るのか

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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政府は12/24に発表した12月の月例経済報告で、物価の判断を「底堅く推移している」とし、4年2ヵ月ぶりに「デフレ」の文言を削除した。ただし、日本経済がデフレに再び逆戻りするリスクを完全には排除できないことから、デフレ脱却宣言は見送った。
   政府は2001年3月の月例経済報告でデフレの判断を行った後、2006年7月にはいったんデフレの文言を削除したが、「デフレ脱却宣言」を行う前にリーマン・ショックが発生し物価が大幅に下落したため、2009年11月以降は再びデフレという表現を使い続けてきた。
   今度こそ「デフレ脱却宣言」は行われるのだろうか。その場合、それはいつ頃になるのだろうか。

政府は「デフレ脱却」の定義を「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」としており、判断に当たっては、「消費者物価指数」に加えて、「GDPデフレーター」、「単位労働コスト」、「需給ギャップ」を重視するとしている。
   このうち、現時点ですでに上昇率がプラス圏に浮上しているのは消費者物価指数だけだが、前年比で大幅な下落が続いていたGDPデフレーターは2013年7-9月期にはマイナス幅が▲0.3%まで縮小しており、2013年度中にはプラスに転じる可能性が高い。また、「雇用者報酬/実質GDP」で表される単位労働コストは、賃金の伸び悩みを主因として2013年度中は下落が続きそうだが、2014年度に入ると企業業績の好調を受けた賃上げの実施が見込まれるため、上昇に転じることが予想される(図表1)。

GDPデフレーター、単位労働コストの予測


微妙なのは需給ギャップの動向だ。内閣府の試算によれば2013年7-9月期の需給ギャップ(=GDPギャップ)は▲1.6%となっている。依然としてマイナスだが、2013年に入り潜在成長率を上回る成長を続けたことで2012年後半の3%台からはマイナス幅が大きく縮小している。2013年度後半は消費税率引き上げ前の駆け込み需要が加わることで成長率が加速することが見込まれるため、2014年1-3月期の需給ギャップは約6年ぶりにプラス圏に浮上する可能性が高い。
   問題は2014年度に入ってからだろう。当研究所では2014年4-6月期は駆け込み需要の反動を主因として大幅なマイナス成長となった後、7-9月期にはプラス成長に復帰すると予想している。ただし、消費税率引き上げに伴う実質所得低下の影響は2014年度を通して下押し圧力となるため、2013年度中のような高い成長は期待できないだろう。この結果、2013年度末にいったんプラスとなった需給ギャップは、2014年度入り後は再びマイナスの推移が続く可能性が高いと考えている(図表2)。

一方、12/21に発表された政府経済見通しでは、2014年度の実質GDP成長率を1.4%としており、当研究所の見通しよりもかなり強い。それでは、実質GDPが政府見通しに沿った動きとなった場合、先行きの需給ギャップはどうなるだろうか。
   政府見通しは年度ベースの見通ししか示されていないため、日本経済センターの「ESPフォーキャスト調査」で集計されている民間エコノミストの平均的な予測値の四半期パターンを参考とし、2014年度の政府見通しを当研究所で四半期分割した上で2014年度末までの需給ギャップを試算した。
   政府見通しに基づく試算値でも、需給ギャップは2014年1-3月期にプラスとなった後、4-6月期にはマイナスとなる。しかし、政府は2014年4-6月期の反動による落ち込みが小さく、7-9月期以降は比較的高めのプラス成長を予想していることが想定されるため、2014年度末にかけて需給ギャップがプラスに転じる姿となる(図表2)。

需給ギャップ(GDP比)の推移


もちろん、これはあくまでも政府の年度見通しを当研究所で四半期分割した試算値であり、そもそも需給ギャップは定義や推計方法の違い等によってプラスマイナスの違いも含めて異なったものとなる。需給ギャップは相当の幅を持ってみるべき指標であるが、政府見通しが実現されれば、判断基準となる4指標の全てが2014年度中に「デフレ脱却」の条件を満たす可能性が高くなるということは言えるだろう。
   ただし、「GDPデフレーター」、「単位労働コスト」、「需給ギャップ」はいずれもGDP関連指標であるため、消費者物価指数などの月次指標に比べて実績値の発表が遅いという難点がある。たとえば、需給ギャップが2014年10-12月期にプラスに転じた場合、それが判明するのは2015年2月になる。4指標に基づいて判断するとすれば、「デフレ脱却宣言」は早くても1年以上先のことになりそうだ。

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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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